1. 挨拶
重い足を引きずり前に進む、村に向かって走る。
吐く息は途切れそうになり、心臓は張り裂けそうになる。
幾度も見た夢、これは夢だと自覚している
そして、この先にある現実とゆう名の悲劇
わかっているのだ、わかっていても私は目指してしまう。
救う事の出来なっかたみんなの顔、
父も兄も義姉も、村の人たちも、
わかっている、これは夢だ、そう・・・ 悪夢だ
「ウガッ!」
夢か、最近見なくなっていたのだがな。
寝汗もひどい、もう少し寝ていたい気持ちもあるが
二度寝する感じでもない。
「起きるか」
口に出してベットから出る覚悟をする。
春も過ぎようとしているが、朝はまだ冷える
それでも水浴びくらいは出来るだろう。
部屋を出て調理場に顔を出す。
「おはようございます」
「あら、おはよう。今朝は早いのねぇ」
朝食の準備をしている義母に声をかける。
「目が覚めてしまいました。
汗をかいたので井戸で流してこようと思います」
「なら、井戸のそばにある野菜も取ってきてちょうだい」
義母の声に手をあげて答え、水浴びに向かう。
水浴びを終え、野菜をもって調理場の義母の所へ向かう
「かあさん、野菜とって来たけど何所に置く?」
「食卓に置いてちょうだい。朝食はどうするの」
「食べます。すぐに着替えてきます」
急ぎ部屋へ着替に戻り、食堂に行く。
義母は食堂で朝食の朝食を並べ終えていた。
「さあ、食べますよ」
「あれ、義父は?」
「昨晩遅くまであなたの革鎧の手入れをしてたので、まだ寝ていますよ」
そうか、義父が・・・礼を言わなきゃな
「起きたぞ。」
眠そうな顔をした義父が食卓の席に着く。
「おやじ、ありがとな」
「ふん!好きでやっている事だから気にするな」
義父の朝食も並べ終わり、義母が声をかける。
「さあ!食べましょう、冷めますよ」
「「「精霊からの恵みに感謝を」」」
いつもの祈りの言葉から食事を始める。
「ラグ、今日はどうするんだ」
義父が食べながら私に聞いてくる。
「準備はだいたい終わっているから、街の人に挨拶して
あと、弓が出来ているはずだから取りに行ってくるよ」
「ああ、お姉さんの所でパンを買ってきてくれない?」
義母の言葉に頷き、何時もの食事は進んでゆく。
日も昇り、街の空気もだいぶん温かくなた。
すれ違う人たちと朝の挨拶を交わしながら、
自分用の弓を引き取りに職人街のある地区に向かう事にする。
職人街の大通りから少し脇道に入った所にある顔馴染みの武具屋に入る。
店の中は、見知った店主の他に客等はいないようだ。
「すまない、頼んでおいた弓一式引き取りに来た」
「おう!”槍”の騎士に見合う物が出来ているぞ」
暑苦しい返事をよこすドワーフ族のオヤジが此方に手を上げる。
店の真ん中にある作業机に並べなられてゆく一式を確認する。
「しかし、長弓は理解るがこの狩用の短弓は必要か?」
オヤジから受け取った弓を確認しながら答える。
「ん、辺境の森はかなり鬱蒼としているからな、ここらで使うやつじゃあ取り回しが悪い。
頼んでおいた長さくらいがちょうど良い。それに、昔使っていた弓がこんな感じだった。」
「ホウ、辺境の森で狩りをした事が有るのか。あそこの魔獣はかなり強いと聞いていたが」
昔を少し思い出しながら。
「・・・まだ子供の時に森の浅い所で練習したぐらいだが。
父親や兄貴は深い所で狩っていたはずだ」
「それは、なかなかの腕じゃったようだな」
軽く頷いて答えながら、弓の撓りを確かめる。
流石だな、予想よりかなり良い質の物を揃えてくれた様だ。
「前金で渡した分で足りたのか?」
「なに、旅立つ馴染み客にサービスじゃ。つぎ来る時に、
またうちの品を買いに来てくれればいい。ただ、家内には内緒じゃ」
ドワーフらしいゴツイ手で、頭を掻き笑いながら話す。
「そうじゃ!辺境の森で武具に使えそうな珍しい素材が手に入れば送ってくれんか。
買取の金もきちっと払う。どうじゃ」
森の獲物の事を思い出しながら少し考える。
「森の獲物を狩れるように成るまで時間は掛かりそうだが、それでいいか?」
「かまわん!待ってやる。その代り、いい品質のものを頼むぞ」
「了解した。必ず期待に添う素材を送るようにしよう」
長弓と短弓の一式を専用に誂えてくれたらしい革製の弓バックに仕舞い、
オヤジに挨拶して店を後にする。
さて、次は騎士団に挨拶に行くか。
街の南側にある辺境伯邸に隣接している騎士団の建物に向かう。
見知った騎士と騎士見習二名が門の警護の為に立っている。
騎士の方に話しかける。
「御苦労さま。すまないが、中に入る為の手続きをお願いしたいのだが」
「”槍”殿なら、手続きなしで入って頂いてかまいませんが」
「退団している身としては、さすがに不味いだろう」
「団長・副長からは、『”槍”は、手続き不要』と言われてましたが」
「それで警備的に大丈夫なのか?」
「さあ?」
警備の騎士は、軽く肩をすくめて答える。
「そうか、じゃあ入らせてもらうよ」
そう言って騎士見習が開けてくれた門から中に入る。すると騎士にすれ違いざまに声をかけられる。
「ああ、団長は訓練場にいると思うのでそちらに向かって下さい。どうせ、挨拶だけ終わらんでしょ」
「挨拶だけのつもりだったんだが・・・、無理かな?」
「無理でしょう、結構楽しみにしてるみたいですよ」
「・・・そうか、無理か」
騎士の軽口に気が滅入りそうになりながら、訓練場に向かう事にする。
建物内の訓練場からは練習に励んでいる騎士や騎士見習の声が聞こえてくる。
入口から遠目に様子を窺っていると、団長にすぐに見つかってしまう。
「待っていたぞ、挨拶は後でいい」
そう言うと刃を潰した訓練用の両手剣を渡される。団長の手には同じく訓練用の長剣が握られていた。
「久しぶりですね、団長と手合せするのも」
「うむ、しばらくは此方には顔を出せんのだろう。なら、貴様の実力の確認をしておきたくてな」
「今まで散々して来たでしょうに」
両手剣の握りを確認しながら答える。団長は木製のカイトシールドを左手に持ち軽く振っている。
「始めるか!!」
団長の掛け声とともに手合せが始まる。シールドに半身を隠しつつ、
突っ込んでくる団長を両手剣で受け流し間合いを取る。
さらに長剣の薙ぎを両手剣で弾き一気に両手剣を上段から振り下ろす。
シールドごと砕く心算で団長に叩きつける。
受ける団長はこちらの一撃で姿勢が整っていない状態での牽制の突きを入れてくる。
突きを体をひねってかわし、さらに半歩前に進み圧力を掛けながら横薙ぎを入れる。
さらに追撃を入れようとすると、「そこまで!!」と止める声がかかる。
声の方を見ると明らかに危険の悪い顔をした副長が立ってる。
「防具も付けずに何をしているのですか。」
「いや、軽く一当てしただけでわないか・・・」
バツが悪そうに眼を逸らしながら団長が答える。
「まったく、部下を指導する側が規律を破って如何するのですか。
あと、”槍”も止めていただかなくては困ります」
こちらも注意をうける。退団してから少し気が抜けていたかもしれない。
「あと、”槍”は領主様からの呼び出しがありました。すぐ執務室に行きなさい。
挨拶はこれで十分でしょう。」
「わかりました、すぐに向かいます」
「でわ、私も事務仕事に向かおう」
こそこそと逃げようとする団長を副長が呼び止める。
「団長にはまだ話があります。あと、領主様の所へ行く前に汗ぐらいは拭いていきなさい」
副長と捕まって座らされている団長に会釈して辺境伯邸に向かう事にする。
さて、領主様を待たせるのは不味いだろうからすぐに会いに行こう。
「団長、普通に挨拶は出来ないものですか?」
副長が冷たい目でこちらを見ている。いろいろ言い訳を考えてみるが良い案が思いつかない。
こういう場合は当たって砕ければよいのだ。自分の経験上何とかなるだろう。
「彼の実力を把握しておくことは、カルミア様の事を託すのだ大切な事だと思うのだが?」
「今までどれだけ実力の見極めをして来たと思っているのですか。彼は武術だけでなく
実務も団長より真面目にこなしていますよ。という訳で優秀な元部下の分も
団長には溜まった仕事をこなして貰います。」
あれ、藪蛇だったか・・・
「いや、他の部下の訓練も見なくては」
「安心して下さい、優秀な部下達は団長が見ていなくても訓練も仕事もこなしてくれています。
なので、団長は自分の溜まった仕事してもらいます。では、執務室に行きますよ」
結局、副長に腕を極められながら引きずられていく。
自分の経験はあまり役に立たなかったようだ。事務仕事苦手なんだがな・・・、仕方がないか。
まあ、「”槍”のラグ」ならカルミア様の事も任せられるだろう。




