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深緑の森 -開拓村の再開拓物語-  作者: 済


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18/26

16.先行

読んでいただきありがとう御座います。作者の”済”です。

二話投稿の一話目になります。

今回の話の中で、夜番(夜の警戒)の交代について説明を挿入出来なかった為、

先に補足しておきます。


主人公達は、荷馬車と徒歩での移動を目的地の開拓村まで、30人程度で行なっています。

夜番は三か所にわかれて行われており、各場所に二名を配置しています。

約4時間で交代になり、2時間ごとに一名が入れ替わります。

三か所 X 二名 X 3時間(3回) = 十八名が一晩で夜番を担当する人数になり、

残った人は、異常が起きない限りその晩は休みとなります。

(3時間 X 3回 = 9時間) 

最初に変わった1名は、一時間半で交代になる為、最後にもう一度夜番を交代することになると考えています。


また、年齢や経験が僅かに上のラグが指揮官で無いのは、騎士ザクの方が全体を見て指揮を執る事に長けている事と、ラグは騎士を止めているからである。ただ、ラグに指揮能力が無い訳でなく、その為に作中では先行する警戒部隊の長として小部隊のを率いています。

 丘の中腹からは、第一陣の車列を見渡す事が出来る。周辺の闇に、そこだけ篝火と所々にある焚き火の熾き火で明るく浮き上がって見える中を何人かの人が活動しているのが目に入る。魔獣が出る北の森に近づいて来ているので、気が緩んでいる様子は伺えない。

 自分と老猟師は、焚き火を挟んで倒木に腰を下ろし、夜番の任についていた。


「槍殿。昼間は魔獣が出た様だが、何匹いた?」


「10匹ぐらいの狼型の群れでした。この辺りだと、それ程珍しくないと思います」


「・・・そうか、この辺では珍しくないか。わしの居た村の周辺では、魔獣を見る機会は余り無かった。砦を出立してから、数は少ないが既に幾匹も出会っておる。つくづく、ここがわしの居た場所とは違うのだと思ったものだ」


「そうですか。私はこの地で生きて来たので、これが普通だと思って来ました。同じ王国内で違うものですね」


「そうじゃな。そう言えば、槍殿は開拓村の生まれじゃったな。この丘を越えれば、村まで残り僅かだと聞いたが、やはり強い魔獣は増えてくるのか?」


「私も若い頃に村が無くなり出なければいけませんでした。なので、自信を持っては言えませんが・・・。村の周辺全てに魔獣が出る訳ではなく、村の北にある森から魔獣が多く姿を見せてました。騎士になってからも何回か村の跡に来た事も有りますが、それは変わらなかったはずです」


「地図で確認したが、北の森と川を挟んで森が広がっていたと思うが、そちらは魔獣は少ないのじゃな」


「ええ。騎士団の探索でも原因は探れませんでしたが。川を挟むだけで、明らかに魔獣の数や強さが変わるのです。ただ、稀にはぐれモノが出るので警戒は同じようにしないといけませんが」


「北の森の中には、どれ程奥まで入っておったか覚えておるか?」


「確か、腕の立つ猟師なら其れなりに入って行けてたはずですが。只、魔獣を狩るのは森の浅い所でおこなっていたはずです。奥まで行くと何かあった時に対応が取れなくなりますから」


「なるほどのう。しかし、面白いものじゃ。この歳で新たな狩り場で新たな獲物を狩る事になるとはの。息子達がおれば、悔しがったかも知れん」


「息子さんは?」


「村を取り返す為に来た騎士団に、案内役として雇われて戦場にいったわ。止めたんじゃがな、それから一年以上経つが・・・生きているのか?」


「それで、お孫さんを育てる為に連れてこられたのですか」


「ああ。長男の子だが、わしが動ける内に独り立ちしてもらわんと、と思ってな」


「今は?」


「先に番をして、今は休んでおる」


「この旅の中で何度か話しましたが、前向きな良い少年ですね」


「そうであろう、自慢の孫だ。父親の跡を継ごうと、ここまで多くの事を吸収し努力もしておる。残りは経験をどれだけ積めるか・・・。そう言う意味では、若くして魔獣を狩れるというのは、わしや息子達でも体験できなかった事じゃ。良い猟師になる為の糧になるじゃろうて。それに、この旅には、わし以外にもリヨウという良い模範がおる」


「リヨウですか。昔からの知り合いで?」


「いや。じゃがの、噂ぐらいは耳にしておった。近所の村に、若いが腕のいい猟師がいるというのはの」


「ほぉう。猟師の間で噂になる位には有名だったのですね」


「昔、畑を荒らす害獣の鹿が大量に出た事があってな、その際に、幾つかの村が合同で駆除した時に、あやつの父親と共に狩りをした。父親もいい腕じゃったが、道中に実際の狩りの様子を見ていたが、息子のリヨウの方が一段と上じゃ。おそらく魔獣の狩りも直ぐになれよう。狩りについては、あやつの言を信じてよいじゃろう」


「幾人か猟師がいますが。やはり、リヨウが上ですか」


「そうじゃ。じゃから、孫にはリヨウを越えてほしいと思っておる。まっ、難しいだろうかな。しかし、越える目標が目の前にあるのだから、目指して欲しいものじゃよ。・・・そういえば、槍殿の父上はこの地で猟師をしておったそうだな。北の猟師の話など、わしらの村まで流れてこんからの。どんな猟師だったんじゃ?」


「良い猟師だったと思います。北の地では、一二を争う程の力があったと育ての親からは、後に話をききました。私にとって普段は優しいですが、猟の時は厳しかったですね」


「まあ、親として師としてなんら間違ってはおらんな。わしも息子達を厳しく鍛え上げたもんじゃ。そんな父上なら、槍殿も猟の指導で森に入った事があったじゃろう」


「そうですね。亡くなった父は、私と兄をよく森の浅い所に連れて狩りを教えようとしていました。懐かしい話ですが」


「そうか。・・・懐かしい話か。ちょうどいい、夜番の間に森について聞かせてくれ。狩りをする為の助けになるかも知れんからの」


「そういうことなら、私の浅い記憶と知識でよければ」


「なに、難しく考えんで良い。覚えている事をそのまま話してくれれば、後はわしの経験で捕捉すればいいだけじゃ」


 そう言ったナダ老の焚き火に照らされた横顔は、新たな獲物を見つけほくそ笑む獣の様に見えた。




 私と猟師を含む警戒部隊が村の跡地に先行する。丘を越え半日が過ぎており、後続の馬車列も離れた距離を追ってきている。

 ここまで、大きな問題に遭遇する事も無く今に至っているが、北の森に近づくこの先が最大限注意しないといけない。そのことを皆に徹底していると、村まで偵察していたリヨウが帰って来た。

 リヨウは、警戒部隊の皆に姿勢を低くするよう指示を出す。皆、沿道に茂る腰より上まで伸びた草に隠れるようしゃがむ。


「どうした、何か問題か?」


 自然と小声で聞く私に、同じく小声で答える。


「槍殿、村の手前に鹿型の魔獣が三頭確認できました」


「・・・鹿型は群れを成すと聞いた事があるが、少ないんじゃないか?」


「普通の鹿と同じなら、少ない様に思うが・・・。やはり、魔獣だからというのがあるのでは?」


 集まって来ていた兵達も、意見を述べて来る。それを受けて、リヨウが答える。


「私もそう思いますが、もしかすると私が確認できない所に隠れている事も。・・・例えば、村の跡地に入り込んでいるとか?」


「あり得るだろうか?村の壁は、調査の際に必ず修復している。当然、門の修繕も行っている。いくら魔獣でも簡単に破壊して侵入できると思えない。それに、魔獣の食い物も無い無人の村をわざわざ無理おして入ってくるか?」


 私が述べると、何人かの兵が同調し頷き何人かは困惑している。


「私に、そこは判りませんが・・・。当面は、三頭への対応を如何するかという事です。何処かに潜んでいるとしても、現状は対処出来ませんから」


 そう言って、リヨウが私を見る


「そうだな。では、まず三頭への攻撃をしよう。何時もどおり一斉に弓を射てから、私と兵達が接近する。猟師の皆は、隠れながら他からも魔獣が現れないか探って欲しい。それと、一人後方に知らせに行って欲しい。村の前で三頭魔獣を確認し攻撃をすると」


「槍殿。それなら、何処か別に隠れている可能性がある事も報告して下さい」


「そうだな。では、誰か連絡に行ってくれ」


 了解した兵が、馬車列に向け背を屈めながら走って行く。


「よし、今迄通りに始めよう。私達は先行するぞ」




 一人の兵士がこちらに向かって走って来る。目的地の村の跡地まで一本の道しかない為、先行する部隊に何か有ったのであろう事が察せられる。それを見て、私も先頭に向かって走って行く。

 兵士の知らせで、警戒部隊が村の手前で魔獣を確認した事。他にも隠れている可能性がある事。そして、ラグを指揮して攻撃を開始する事が告げられた。

 ナダ老が少し遅れて横まで来た。頭の中で状況を整理しながら、隣の老人に猟師としての意見を求める。


「鹿型か!魔獣の性質に関してはリヨウと猟師達が心得ておろう。騎士ザク殿、先行する者だけでは荷が重いかも知れん」


 ナダ老の意見を取り、警戒部隊への増援を考え、足の速い兵を中心に編成を整えていく。

 

「準備が出来たら出発してくれ。馬車もより周囲の警戒を厳としてくれ」


 兵士達も手慣れており、直ぐに編成が完了して出発する。


「本来なら、私が指揮を執りたいが・・・」


「騎士ザク殿が居らねば、誰が全体の指揮をするんじゃ。ここは我慢のしどころじゃよ」


 老人の言葉に納得はするが、ここまでの数日であれ、苦楽を共にした仲間達を思うと心配になる。


「ラグ、上手くやれよ」


 先頭で戦っているであろう、友の無事を願うしかなかった。

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