13.弟子
二話投稿の二話目になります。
ヒナは、夫の遠縁の子供だった。その存在を知ったのは、もう十年以上前の事になる。ヒナの父親が夫を頼り、私に相談を持ちかけたことが初めてだった。
当時、夫も騎士職を息子に引き継ぎ、引退する事を考えており。私は子育ても終わり、魔術の研究を本腰を入れて再開することを考えていた。
「ようこそ来て下さいました。先触れも頂いていたのに、あの人はまだ帰って来ていないんですよ。お茶でもお飲みになって待ってもらえますか?」
「すいません。急に相談を持ちかけたのはこちらですから。それと、相談については奥様にも聞いて頂きたいと思っています」
「私もですか?」
「はい。娘の事で・・・」
「そうですか。では夫が帰って来てからお伺いしましょうかしら?」
「よろしくお願いします」
遠縁の男はまだ若く、騎士の家である我が家に緊張気味に椅子に腰掛けている。この後は、夫が帰って来るまで当たり障りのない話をして時間を過ごしていた。
話をする中で少し緊張が解れて来た時に、夫が急いで帰って来た。
「すまなかったな。急ぎの仕事が入ってしまって時間を過ぎてしまった」
「あなた、服を着替えて来て下さい。そのままでは、堅苦しくなってしまします。ほら、私も手伝いますから、申し訳ありませんがもう少し待っていて下さい。直ぐに戻ってきますから」
そう言って、夫を連れて着替えの部屋に行く。
「どうだ、何か言ってたか?」
「私にも、相談に乗って欲しいようでしたけど」
「そうか。済まんが一緒に相談に乗ってくれるか。あれは、大伯父の息子なんでなー。悪い様には出来ん」
「ええ、その心算ですよ」
「頼む」
夫を交えて相談を聞いた。それは、自分の娘がどうも魔法を使える様だと。しかし、一族に魔術師や魔法に関係している人間がいないので、如何していいか分からない。そこで、大伯父が実家の男爵家に相談したら私達を紹介されたそうだ。
娘の名前は、”ヒナ”。まだ。十歳にもなっていなかったが、いつの間にか魔法を使える様になっていた。両親も兄弟達も気付かなかったらしい。
その後、”ヒナ”についての話を私の方からも質問をした。結果、我が家で一度預かり私が魔法についての適正と魔力量を調べて、そのまま私の元で弟子となるか、王国の魔法学校に入学するかを決める事にした。
後にヒナと会い、ヒナの要望もあって私の弟子として正式に預かる事になった。育てているうちに、魔力量が多く魔法適正が高い事がわかってきた。これなら、誰から教えられずとも独自に魔法を使えるようになったのは当然かもしてない。しかし、私には引っ掛かるところがあった。それは、言葉には出来ないが魔術を研究する者の勘の様なものだ。
「・・・そう。あなたも気になる事はあれど、それが何なのかまでは把握できていないのね?」
「はい。とは言え、今回の開拓村への移住の話は彼女にっとっては、魔術師として一人立ちする為の良い機会かと思い、カルミア様の要請を受けようと私は思ったのです。それに、辺境の地のさらに奥ですから、彼女を目立たない様にするなら丁度よいかなと」
「それで、あなたから見て魔術師としてどうなのかしら?」
「所持している魔力は、出会った時より増えいます。それに、制御する能力も十分備えていると思います。出会った頃は、光魔法のみでしたが、今は全ての魔法を使えるようになっています」
「そう、自慢の弟子ね。・・・ちょっと待ってちょうだい。今、光魔法と言ったわね。それは、独自に使えるようになった魔法が光魔法だったという事?」
「ええ。そうです」
「魔力が豊富で、光魔法を最初から使える。そんな事が・・・」
「先生、やはり何か問題があるのでしょうか?」
「ああ。あなたは、旦那の講義は受けた事ないのよね」
「はい。確か、聖獣と魔獣についての研究だったと思いますが?自分の研究に関係なかったですから」
「そうね。普通に魔術師は自分の研究に関する事以外関心を示さないものね」
「・・・それで、旦那様の研究とヒナに何か関係が有るのでしようか?」
「それじゃあ、久しぶりにあなたに講義してあげましょう。とは言うものの、私も簡単な事しか言えないのだけれど。でも、その前にあなたの事だからヒナの親族や祖先で魔法が使える者についての調べは付いているのよね」
「はい。最初に確認しました。私が調べた限り、居ませんでした。夫の実家も確認しましたが、元より魔力を持つ者じたいが確認できませんでした」
「エルフの血が混じった事も無いのでしょうね」
「そんな事があれば、それこそ何処かに形跡が残るはずです」
「そうよね。さて、光魔法の話からしましょうか。恐らく、あなたが引っ掛かった事の一つがそこでしょうね。本来、生まれて初めてで使える魔法じゃないのよ、光魔法は。いくら魔力が多くても、人族の子供では制御できるほど簡単じゃないの。精霊の力を借りて力を使うエルフでも難しいのよ」
「でも、ヒナが使っているのは確認しています」
「そうね。あなたの勘違いだったら問題にならないのだけれど。あなたがそんな失態をするとも思えない。そうなると、あの子には今迄の常識が使えないの。」
「私はヒナに私達が普通に習う事を教えて来ました。確かに制御能力の高さと魔力量の多さが普通の者と違いがあるのかも知れませんが、先生のご指摘にあるエルフを超える等という事が有るものでしょうか?」
「少し違うわね。まだ、エルフを超えるとは言えないわ。ただ、エルフ以外で光魔法を幼い頃から使えるだけ能力をもった子供の存在が確認されていないのよ。だから、魔術師達の常識として光魔法はエルフ以外で幼いうちから使う事、違うわね、制御できないとされているのよ」
「確かに、今の先生が言われた事で私の中での引っ掛かりが少し見えた気がしますが・・・。そう・・ですね、・・・では、ヒナには何が起こっているのでしょうか?私が調べた限り、あの子に異常は見られなかった。何か調べ方が悪かったのか?」
「私は、あなたの能力を疑っていない。恐らく私の生徒の中でも優秀だったあなただから間違いは無いと思うの。そこでね、旦那の研究が関係しているんじゃないかと私は想定しているのよ」
「聖獣と魔獣の研究・・・ですか」
「そう、魔獣は神話にあるドラゴンが残した物から生まれているとされている。では、聖獣と呼ばれるモノは何から生まれるのかしら?旦那は、そこを研究し、そして一つの仮説を唱えていたわ」
「・・・仮説?」
「ええ。聖獣と魔獣について、どこまで知っているかしら?」
「魔獣は同じ様な動物よりも体が大きく獰猛で個体によっては魔力を使う事ができる。そして、体色が黒、または黒に近い色をしている。聖獣は魔獣よりも小柄だけど、身体能力が高く魔法が使えるモノがほとんどで、何より知性を持ち人との意思の疎通ができる。そんなところでしょうか」
「それで概ねあっているわ。そして、知られていないのだけれど、聖獣は光魔法を生まれながらに使えるモノが大半なのよ」
「・・・それは」
「そう。あの子と似ているわよね。ただ、情報が少なすぎてこれ以上は何とも言えないけれど」
「旦那様の研究には、他に何か?」
「知っている事も有るけれど・・・。あの子に接して見ないと、まだ何とも言えないわね」
「・・・そうですか。何か危険な事が有るという事は?」
「難しいわね。今、確証を持って言えないから。研究については、魔法学院の息子が引き継いだけれど・・・。いきなりそれを見せろとも言えないでしょ。変に勘繰られて、違う意味でヒナを危険な目に合わせるかもしれないから」
「・・・そうですね。研究者ですから・・・魔術の新しい研究対象など見つけたらどうなることか」
「自分が働いていた所について言うのもなんだけど、魔術学校の研究者が知れば周りを見えなくなって、大騒動になるのが落ちね。・・・それで今後の事だけど、しばらくヒナの事は信用できる人以外には隠しておくべきね。まあ、あなたも言っていたけれど、開拓村まで行けばあの子を目立たなくすることも出来るでしょう。それと、何が起こるか分からないから、今後も魔術を制御する力を高める為の修練は必要になるわね。それは、私が受け持ちましょう。あなたとヒナさえ良ければだけど」
「お願いします。こうなると、先生に頼るしかありませんし・・・。ヒナには、先生の事はどのように紹介しましょうか?」
「今のままでいいわ。少し魔術に詳しくで魔法が使えたお婆さんで」
「私の先生だった方と教えなくても?」
「ええ。そのほうが、お互い気負わずに話せるでしょう。魔力が無くなって分かる事あったから、まだまだ教えることはあるわ。次にあなたが会う時に、どのように成長しているか楽しみね」
「そうですね。その時のことを楽しみに待つ事にしましょう」
読んで下さり本当にありがとう御座います。作者の済と申します。
誤字脱字等が有りましたらご指摘していただくと助かります。
これからもよろしくお願いします。
= 済 =




