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■最終章⑤最終話「抱えたまま、生きる」
……静寂。
世界は、壊れていない。
鬼は、消えていない。
だが――
暴れてもいない。
副校長は、立っている。
息をしながら。
「……終わりか」
先輩が、隣に立つ。
「ええ」
「終わりです」
老婆の姿は、もうない。
ただ――
“均衡”だけが残っている。
「どうするんですか」
先輩が問う。
「どうもしません」
「抱えて、生きるだけ」
少しだけ、笑う。
「面倒くせぇですけど」
先輩も、笑う。
「それが一番ですね」
光が差す。
止まっていた時間が、動き出す。
――そして。
……北山学園。
何も変わらない日常。
「副校長先生ー!」
子どもたちの声。
「先生、怒ることあるの?」
少し考えて。
「あるよ」
「めちゃくちゃな」
笑いが広がる。
その中で、静かに思う。
……抱えたまま、生きる。
それでいい。
それが――
人間だ。
⸻
……完。




