463 掌の上?
明智光秀視点です。
越前国敦賀郡利根村 織田家家臣 明智十兵衛光秀
敦賀疋壇へと逃げる朝倉軍を追って越前国へと入る。
朝倉軍は這う這うの体で近江国より逃げ出し、既に軍と呼べる形を成してはいない。
しかし、まだ朝倉式部大輔(景鏡)や九郎左衛門(景紀)といった大将首が残っているので、この機に何としても討ち取っておきたい。
「前方に敵!追いつきましたぞ!」
弥平次(三宅秀満)が敵に追いついたと歓喜の声を上げる。
「いや!追いついたというよりは、敵は此方へ向かって来ておりますな!」
庄兵衛(溝尾茂朝)の言う通り敵は此方へ向かって来ている。
儂等から逃げ切れぬと反撃に出たか?
「自ら手柄首となりにやって来るとは有難い。逃げ散られては追うのも苦労致しますからな」
弥平次の言う通りではあるが腑に落ちぬ。
何故、儂等を迎え撃つという判断に至ったか。
儂等が少数と侮ったか?
敗走する兵で儂等に勝てるとでも思ったか?
いや、曲がりなりにも朝倉家の大将が、その様な判断を下す訳はあるまい。
「朝倉軍の更に後方より敵に御座る!」
庄兵衛の言葉にそちらを見ると、確かに向こうから敵の兵がやって来ているのが見える。
もう敵の後詰めがやって来たか…
「いや、どうやら敵の後詰めではない様に御座る」
腹心の明智治右衛門(光忠)が後詰めらしき部隊の様子がおかしいと首を捻る。
確かに後詰めに来たというよりは、追撃しておる様にも見える。
いや、追撃しておるな。
「何処の兵か?」
「何処の者かは分かりませぬが、どうやら疋壇家の兵も混じっておりますな」
兵部少輔殿に付けられた大谷伊賀守(吉房)殿が儂の問いに答える。
「疋壇家?」
「疋壇は敦賀の途上にあります故、当主の六郎三郎(久保)殿には幾度か会うた事があり申す」
「成る程、金ヶ崎の戦で六郎三郎は兵部少輔殿と会うておった筈。その時に何か取り交わしがあったやもしれませぬ」
庄兵衛が伊賀守の言葉に得心いったと頷く。
然も有りなん。
兵部少輔殿ならば、それくらいはやりかねんと納得する。
「しかし、疋壇家のみでは御座いますまい。兵の数からしても明らかに多う御座います」
確かに。
総数は分からぬが見えておるだけでも三百は居ろう。
まだ他にも居る事を考えると、先の戦で相当痛手を負った疋壇家の出せる数ではない。
「敦賀郡司家の兵ではありますまいか?兵部少輔様は朝倉九郎左衛門(景紀)殿を調略し、敦賀へ戻るのに手を貸しておられました。既に手を組んでおられたならば、此処で織田家に味方するという事も有り得るかと」
伊賀守は疋壇家の事とは違い、朝倉九郎左衛門の内通は知っておった様だ。
ならばこの機に九郎左衛門が敦賀を土産に織田家へ寝返ろうとする事は十分に考えられる。
やれやれ、流石は幼い頃より麒麟児と呼ばれておられた方だ。
此度の事も兵部少輔殿の掌の上か…
「柴田家の後詰めが到着!」
藤田伝五(行政)が後詰めの到着を知らせる。
本来であれば敦賀へ追い落とすだけの筈であったのだが、こうなれば此処で方を付けてしまうとしようか。
「遅れを執るな!手柄を横取りされる訳にはいかぬぞ!」
皆に号令を掛けると、朝倉軍目掛けて駆け出した。
柴田軍に同行しているのを大谷吉房から真野助宗に、大谷吉房は光秀に同行している事に変更しました。




