461 やっと休憩
さて、取り敢えず軟禁を命じた万福丸の処遇をどうするか。
殺してしまうのが後腐れないのだが、万が一にも浅井長政が降伏した場合、恨みを買うのは避けたい。
まあ、史実でも浅井長政は降伏を断っているし助かる気はないだろうから、考える必要はないかもしれないが、万が一があるかもしれないし。
それに茶々は兎も角、於市にも恨まれるよなぁ。
戦力は削れたとはいえ、これから明智光秀や藤吉郎が出世して、本能寺の変が起こらないとも限らない。
それに別の人物が本能寺の変っぽいものを起こすかもしれない。
そうなった時に、於市が権六殿の嫁になる可能性もある?
多分親父は権六殿に味方するだろうから、なるべくなら於市の恨みは買いたくない。
まあ、そこまで考える必要はないのかもしれないけど。
東野左馬助(政行)が大声で知らせてくれたお陰で、その事が周りにも聞かれたせいで、こっそり逃がす事は出来ない。
逃げられたと言って、今回の功績から減点されるくらいなら構わないんだけど…
殿に使いを遣るのは当然として、やっぱり小谷城での戦に決着が着くまで軟禁して様子を見るしかないな。
おっと、その前に本当に万福丸か確認しておかなくちゃ。
「で、その者は万福丸に間違いないのだな?」
偽者の可能性も…
「某も改めましたが、間違い御座いませぬ!」
「左様か」
間違いないか左馬助に問うと、確りと頷かれる。
チッ、人違いでもないか。
「備前守(浅井長政)の近習を務めておった木村喜内之介が、子を連れ敦賀へ抜けようとしておった為に捕らえました。その喜内之介が連れておった子が万福丸に御座いました。喜内之介も万福丸を敦賀へ逃がす積もりであったと白状しております」
左馬助も何回か万福丸に会った事があるそうだから、その子が万福丸に間違いないのだろう。
上手く逃げろや、喜内之介!
左馬助も旧主への忠誠心とか憐憫の情だとかを見せて逃がしてやれよ!
薄情な!
まあ、言っても仕方ないけど。
「新右衛門」
「はっ!」
側近の岸新右衛門を手招きし、他の者共に聞こえぬ様に耳打ちする。
「万福丸と似た童の亡骸を手に入れよ。誰にも気取られるな」
念の為に生き延びさせる方策も用意しておかないとな。
殺す事なら、いつでも出来る。
義昭の陰湿さが勝つか、殿の情け深さが勝つか…まあ、殿が浅井長政の事を憎んでいたら知らんけど。
「それは…」
「念の為だ。無駄骨となるやも知れぬがな。殺す事は何時でも出来るが、生かすとなれば相応の用意をせねばならぬ」
「承知致しました」
人に話せぬ様な仕事でも、新右衛門なら間違いなく熟してくれる。
直ぐに事を大きくして俺に迷惑を掛ける脳筋が多い家臣団だが、新右衛門は命じた事を命じられた範囲の中で行える適度な脳筋だ。
過不足なく期待に答えてくれるだろう。
「勝之助(祖父江政秀)。お主は殿の許へ向かい、万福丸を捕らえたと知らせて参れ」
「はっ!」
勝之助に殿への報告を命じる。
勝之助の兄は、奉行衆として殿に仕えているので話を通しやすいだろう。
養父の方は、放逐された後に伊勢での戦で討ち死にしてるけど。
さて、もう要らん仕事はないよね?
もう休んでも良いよね?
今度こそ休むから、小谷城の戦が終わるまで面倒事を持ってくるなよ!!




