458 対真柄直隆
止むに止まれぬ事情で真柄直隆との戦闘に引き擦り出されたが、 さてどうやって切り抜ければ良いのか。
勝算が全くないとは言わないが、普通に相手の方が格上...ちょっぴり苦労しそう。
やっぱり安全に勝つには、家臣に後ろから襲わせるのが確実か。
「皆の者、分かっておろうな?!」
「「はっ!」」
周りの家臣達に呼び掛けると、小気味良い返事が返ってくる。
隙を見て真柄直隆に斬り掛かってくれよう。
まあ、その前に折角の格上なのだから、色々試させてもらおうかな。
二合三合と大太刀を合わせる。
くそう、まともに打ち合ったら消耗が激しいなぁ。
体力も大太刀も。
特に真柄直隆の太郎太刀は、出来るだけ傷付けたくない。
出来るだけ躱しや受け流しを主体に戦う事を心掛けよう。
大振りは躱した方が敵の体力を奪う事にもなるしね。
「ほう、流石は音に聞く森兵部少輔殿。大太刀の扱いも中々!」
朝倉家にまで俺の名が届いているとは。
どうせ、悪評なんだろうけど。
「北国無双の大力に誉められるとは望外の喜び!」と真柄直隆に礼を言いながら袈裟懸けに斬りかかるが、簡単に受けられる。
だから、太郎太刀が傷付くから受けるなっつうに!
力比べとばかりの鍔迫り合いから力を抜いて崩しに掛かると、僅かに泳いだ相手の左手に回り込むように駆けながら脇腹を斬り付ける。
しかし、その攻撃は掠める程度で躱され、反対に袈裟斬りが返ってくる。
辛うじて大太刀で受けるが、先程のお返しとばかりに真柄直隆が力を緩めると、大太刀を防いでいた力が行き場を失った事で俺の体が泳ぐ。
やべぇ!追撃が来たら躱せねぇ!
咄嗟に大太刀から右手を離し、懐に忍ばせてある小刀を真柄直隆の顔面目掛けて投げつける。
真柄直隆は、俺が小刀を投げてくるとは思ってもみなかったのであろう。
反射的に大太刀で飛んできた小刀を払ってしまった為に、追撃の手が止まる。
この隙に距離を取って一息入れる。
ふう、助かった。
「驚いたぞ!兵部少輔殿は一筋縄ではいかぬな」
苦し紛れ以外の何物でもないよ。
しかしこれで、予定してた位置までこれた。
俺は打ち合いながら、真柄直隆の周りを反時計回りに半周した位置までやって来ていた。
これで、俺と対峙する真柄直隆の背後に、俺の家臣達が位置する事になる。
これで準備完了、家臣達に背後から襲わせられる。
家臣達にも含ませてあるしな。
「さて、十郎左衛門殿。名残惜しいが此処までと致そう」
大太刀の柄の前の方を左手で、後ろの方を右手で握る左太刀で、突きの体勢に入る。
大太刀で一番自信のある構えだな。
「良かろう」
真柄直隆も俺の言葉に答えて大太刀を構える。
「最後に今一度聞こう。織田家に降る気はないか?」
ここで降伏してくれたら楽なんだけど。
「折角の誘いだが、降る気はないな」
ですよね~。
ここまで来て降伏するなんてしないよね。
「では、参ろうか」
真柄直隆に声を掛け、開始を宣言する。
さあ今だ!後ろから真柄直隆に斬り掛かれ!
一瞬真柄直隆から目を逸らして、背後に居る家臣達に目をやると、あれ?誰も襲いかかろうとしていない。
おい!何の為に裏に回ったと思ってるんだよ!
戦いを始める前に匂わせたよな?
家臣達の反応に愕然とする。
動揺が顔に出ている自覚もあるぞ。
あっ、やべぇ!真柄直隆に対して隙を作ってしまった。
何とか逃げねば!と真柄直隆を見ると、何故か背後を振り返ろうと隙を晒している。
理由は分からんが、ここしかねぇ!
隙を晒している真柄直隆の脇に渾身の右片手突きをお見舞いする。
大太刀は脇から深々と突き刺さり、感触から致命傷を与えた事を確信する。
なおも真柄直隆は俺に斬り掛かろうとするが、既に力はない。
真柄直隆の胴に足を掛け、胴を蹴り飛ばす様にして、脇に刺さったままの大太刀を引き抜く。
真柄直隆は後ろによろけるが倒れはせず、大太刀を杖のようにして持ち堪えている。
流石は真柄直隆、見事な矜持だな。
「み、見事…」
「介錯致す」
絞り出す様な声で褒め称える真柄直隆に、長く苦しませるのは忍びないと介錯を申し出る。
「忝ない」
膝を突き頭を垂れた真柄直隆の首に、刀を振るい首を落とす。
終わったー!!




