456 柳ケ瀬の戦い
「殿!朝倉軍が敗走して参ります!」
「分かった。では手筈通りに」
三雲三郎左衛門の報告に、予定通り敵を一旦やり過ごし、背後から追い立てる様に越前へ追い払うよう命じる。
街道を北へ進んでも越前へ抜けられるのだが、敵は追撃を避ける為にも途中西へ逸れて刀根坂、疋壇を通って敦賀へ逃げるだろう。
史実で、そうやって逃げているしな。
街道を北へ逃げてくれた方が追撃はしやすいんだけど。
近江に居座られて、野盗になられると困る…いや、俺は困らないけど、この後に此処を治める人に迷惑が掛かる。
史実通り藤吉郎が治めるなら放置でも良いんだけど。
今の藤吉郎が江北を治める事はない…いや、江北3郡全てはなくても、一部所領を与えられる事はあるか。
まあ、誰が治めるにせよ、来年越前へ攻め込むそうだから、雑事は少ない方が良いでしょ。
俺は絶対に越前には行かないけどね。
敗走というからには、隊列など何もなくがむしゃらに逃げているのかと思いきや、多少は纏まって逃げている。
何だろう?
戦わずに逃げだしたのかな?
まあ、脱落者が少ないのは良い事だよね。
取り敢えず先頭はスルーして、最後尾付近を叩く。
「そろそろ頃合いかと」
「よし。愚鈍な朝倉軍の尻を叩き、さっさと国許へ帰っていただく。才蔵(可児長吉)!新助(加治田繁政)!権之進(野中良平)!新八郎(仙石久勝)!先陣を命じる!存分に暴れて参れ!敵は尻尾を巻いて逃げる途上とはいえ、油断無きよう」
林助蔵(能勝)が襲撃のタイミングを教えてくれたので、脳筋ばかりの家臣達の中でも特に脳筋な奴等の部隊に特攻を命じる。
「御任せくだされ!」
命じた途端、才蔵が突っ込んでいく。
早ええよ…
慌てた他の3人が才蔵の後を追う。
「三右衛門(奥田政次、後の堀直政)!お主は久太郎(堀秀政)を補佐せよ!手柄を立てさせてやれ!」
久太郎には出世して欲しいからな。
幾つか首を取らせてやりたい。
史実でもコンビ(?)を組んでいた従兄弟の2人なら息もぴったり合うだろうし。
「他の者は、朝倉家の者共が道を逸れぬ様に手助けしてやれ」
「「応!」」
ちゃんとお家へ帰れそうにない人は、然るべき場所へ送ってさしあげてください。
注意事項は以上かな?
家臣を突撃させた後、俺もノロノロと敵を攻撃する。
これ以上活躍するなという殿の無言のプレッシャーをかけられた(推測)ので、そこまでやる気も出ないしなぁ。
「堀久太郎が、河合安芸守(吉統)を討ち取ったり!」
「北庄土佐守(朝倉景行)が首、本多三弥左衛門が取った!」
次々に朝倉軍の将が討ち取られていく。
うむうむ、ボーナスステージみたいなものだから頑張れ!
俺は雑魚狩りで十分だから。
獲物はいないかと辺りを見回すと、偶々見知った顔を見つけた。
朝倉景紀…まだ、こんな所に居たのか。
放っておいても構わないんだが、折角離反を唆したんだから逃がしてやった方が良いよな。
誰かに先導させるか…
「殿!後方より柴田修理亮様、明智十兵衛殿の軍勢が!」
げっ!
三雲三郎左衛門の報告に驚く。
おいおい、小谷城を攻めてろよ。
って、不味い。
さっさと景紀を逃がさないと!
周りの者達に露払いをさせつつ、急ぎ景紀の許へ駆け寄り、そのまま軽く大太刀を振るう。
慌てて槍で俺の大太刀を受ける景紀に、小声で「刀根坂に向かわず、街道を北へ」と囁く。
ハッとした顔で此方を見る景紀に微かに頷き返すと、大太刀を引いて少し距離を取る。
よし、これで大丈夫だな。
「九郎左衛門尉殿!御無事か!」
無事に景紀を逃がす事が出来そうで安堵している所に、突然大声が響き渡る。
ハッとして声のした方を見ると、景紀を救おうと猛然と突っ込んでくる1人の武将。
あれは、真柄直隆…
いや、来なくていいし!
景紀はピンチじゃないよ?
寧ろ助けようとしたんだよ?
ある意味、味方と言っても過言ではないんじゃないでしょうか?
まあ、そんな事言えないんだけどさ。




