455 朝倉軍からの内通のお知らせ
明智光秀視点です。
近江国浅井郡山脇村 明智十兵衛光秀
とうとう浅井家討伐が始まった。
織田家は、周辺の小城を落としながら、小谷城の西にある虎御前山に本陣を敷き、浅井家と対峙している。
そして当家は、直前に降伏した河毛家の兵を加え、虎御前山の北にある匚の字に連なる山の南側、山脇の地に陣を築き、敵の動きを見張っている。
匚の字の北側に浅井家の中島城、北西の角に朝倉軍の篭る丁野山城と対峙する形になっている。
我が軍の後方には柴田修理亮殿の大軍が控えておるし、近く山本山城を治める阿閉家も既に織田家に臣従している。
朝倉軍相手でも十分勝機はある。
「十兵衛様!」
「如何した、庄兵衛」
丁野山城の朝倉軍との戦の事で頭を悩ませていると、家人の溝尾庄兵衛(茂朝)が駆け込んでくる。
「朝倉家の前波九郎兵衛尉(吉継)殿の嫡男、新七郎を名乗る者が…」
前波九郎兵衛尉の嫡男だと?
「何?取り敢えず話を聞こう。通せ」
前波九郎兵衛尉といえば、年寄衆筆頭である前波藤右衛門尉(景当)の弟であったな。
その藤右衛門尉の甥御が如何なる用かな?
「前波新七郎に御座る。これは、父、九郎兵衛尉の書状に御座る」
新七郎より書状を受け取り、中を読む。
書状には九郎兵衛尉を始め数人が織田家に降伏すると書かれている。
「書状には丁野山城を攻めた際に城門を開くとあるが?」
「はっ、南門を開け織田軍を引き入れまする」
それは有難いのだが…
「この事は藤右衛門尉殿は御存知か?」
果たして前波家の総意か、九郎兵衛尉の独断か。
「いえ、飽く迄父の考えに御座る」
成る程、九郎兵衛尉の独断か。
我等を誘き寄せる策ならば、一門の総意と謀ってこようが、九郎兵衛尉の独断とあらば真の事やもしれぬ。
しかし、兄弟の仲は良くないのやもしれぬな。
「良かろう。九郎兵衛殿尉の臣従を認めよう」
「忝ない。必ずや父と共に御役に立って見せましょう」
さて、我が兵だけでは心許ないな。
修理亮殿に後詰めを頼まねば。
新七郎との話が終わろかという時、俄に陣外が騒がしくなる。
「何事か!」
家臣の三宅弥平次(秀満)が慌てて駆け込んでくる
「殿!朝倉家の富田弥六郎(長繁)殿が一党を引き連れ、降伏を願い出ております!」
「何だと!」
弥平次の報告に、新七郎が驚きの声を上げる。
新七郎の驚きに嘘は無さそうに見える。
共謀しておる訳ではないのか…
「新七郎殿、状況が変わった。急ぎ丁野山城へ戻り、戦に備えられよ。城門の事、頼みましたぞ」
本当に富田弥六郎が一党を率いて寝返ったとあらば、今丁野山城は混乱の只中にある筈。
今が攻め時。
新七郎を城へ帰して、直ぐにでも丁野山城へ攻め込まねば!
「庄兵衛!急ぎ修理亮殿に後詰めを送ってくださるよう頼んで参れ!西より攻め入り敵の目を引き付けるように御願い致せ!」
「承知いたしました!」
「弥平次!富田弥六郎の降伏を認めると伝えよ!そのまま参陣し、修理亮殿を先導する様に命じよ。その間に我等は南より丁野山城へ攻め入る!」
「はっ!」
混乱に乗じて丁野山城より朝倉軍を追い出し北へ追い立てれば、森兵部少輔殿が待ち構えておられる。
上手く行けば挟み撃ちにする事も、更に追い討ちを掛ける事も出来よう。
外様としては手柄を立て続けねば。
藤吉郎殿にも負けてはおれぬ。
兵部少輔殿とも差が随分と開いてしまったが、まだまだ此れからよ!




