437 親父と合流
真柄直隆は逃したが、所右衛門が弟の真柄直澄を、俺が山崎吉家を討ち取り、手柄を立てる事が出来たので、無理に朝倉軍へ斬り込む必要は無くなった。
もう親父が討たれる様な事態になる事はないだろうし、危険を犯す必要はない。
後の事は大将の親父か、後詰めにやって来た権六殿に任せれば良い。
という事で、俺は敵を追う振りをしながら安全な位置で楽をしよう。
あっ、一応親父が討ち死にしない様に側で見張ってた方が良いか。
しかし、このまま親父と合流する為に本陣へ向かってしまうと、ウチの家臣共が不満に思うだろうし…家臣共には、このまま敵の本陣に攻め込ませるか。
俺は親父と合流だな。
「八郎右衛門(山田宗重)!伊賀守(石川光重)!七郎左衛門(楠木正具)!柴田修理亮殿が着くまでの間、各々の兵を率いて敵本陣で暴れてこい!くれぐれも修理亮殿のじゃまはせぬ様にな」
「「応!!」」
伊勢衆を率いる八郎右衛門、田上衆と近江に出張中の播磨衆を率いる伊賀守、備前衆を率いる七郎左衛門に、家臣達のガス抜きに向かう様に命じる。
「悪いが将監(名取長信)は、儂と父上の所だ。この後如何するか相談せねばならぬ」
「はっ、承知致しました」
伊勢水沢城の名取将監は、本陣へ向かう俺の護衛な。
近江で色々動き過ぎたからな。
戦の後、殿やお偉いさんに色々聞かれるのは目に見えている。
殿に問い詰められる前に、親父と話して問題になりそうな部分を潰しておかないとな。
「九郎様!父上!御無事で!」
親父の居る本陣に着くと、親父だけでなく殿の弟である九郎(織田信治)様が軍を指揮していた。
「傳兵衛!お主…」「兵部少輔、助かったぞ!」
親父と九郎様が、後詰めにやって来た俺を温かく迎えてくれる(?)
「しかし、よくも播磨から間に合ったものよ。御陰で助かったぞ、兵部少輔」
九郎様が労ってくださる。
元服前から、事あるごとに贈り物等を送って好感度を稼いだ甲斐があったな。
いや、殿の兄弟には全員送ってるんだけどね。
特に九郎様と三十郎(信包)様がメインターゲットだが。
「御無事で何よりに御座います。朝倉家が攻めて参ったと聞いた時は、血の気が引きましたぞ」
志賀の陣の対策を用意していたとはいえ、実際に事が起こるとなれば不安になるし焦りもする。
親父が無事で良かった…ついでに九郎様他も。
「しかし傳兵衛よ、お主は何を仕出かした?」
ん?
「何がに御座いますか?」
「延暦寺に火を掛けたのは、お主だとの噂だが?」
「なんと!誓って某、延暦寺に火を放ったりなどしてはおりませぬ。根も葉もない噂に御座る。延暦寺に火を掛けたのは園城寺に御座る」
俺の言葉に親父はまだ疑わしそうな目を向けているが、本当に延暦寺を燃やしたりなんかしてないからね。
全くの冤罪だし。
俺が親父に相談したいのは、延暦寺が燃えた事じゃなくて、延暦寺の宝物を確保した事だからな。
勿論、宝物の焼失を防ぐ為だけど、事後承諾の様な形になってしまったから、責任を問われる可能性があるからね。
擁護してくれる人を増やさないと。
「それよりも今は朝倉家との戦に集中せねば!既に死に体に御座るが、まだまだ数も多く油断は出来ませぬ」
権六殿が後詰めに来てくれた御陰で敗走寸前の朝倉家だが、まだまだ数は多い。
どこかで立て直しを図られると面倒だし、全滅は無理でも壊滅はさせておきたい。
まあ、睨み合いをしていれば、摂津からこちらに向かっている兵がやってきて、もっと数は増えるんだけどね。
とは言え、混乱している敵を態々立ち直らせてやる義理もないしな。




