427 後方撹乱は
兵が増えた事を喜ぶべきか、六角義治が現れた事を嘆くべきか。
この人、曲がりなりにも戦国の世を泳ぎ切ったんだから、ある意味有能なのは間違いないよなぁ。
ダメダメエピソードのお陰で悪評の方が上回ってるんだけど。
「右衛門督様、御久しゅう御座います。心配はしておりませなんだが、やはり御壮健な様で」
姉川の戦いで敗走したと聞いたから、まあ生きてはいるのだろうなとは思っていたが…チッ。
「久しいな、兵部少輔。お主の活躍は、遠く近江にまで聞こえてきよるわ」
近江と播磨…そんなに遠いかな?
まあ、義治にとっては遠いのかもな。
「右衛門督様は、やはり和邇城へ?」
「うむ。和邇城には、お主の父である左衛門佐が居ろう?左衛門佐とは横山城や野村にて、共に肩を並べ勇名を馳せた仲。左衛門佐の危機とあらば、助けに向かわねばなるまい?」
親父の救援に来てくれた事は嬉しいが、親父と肩を並べて戦った?
ホンマかよ?
いや、俺は戦いの詳しい情報は知らんから、意外と何かの間違いで活躍したのかもしれん…
「おお!横山城で共に戦った右衛門督様が駆けつけたと知れば、父も大いに喜びましょう」
多分、親父は義治が来ても喜ばんだろうけど。
「であろう?だが、兵部少輔が此処に居ると聞きつけて、罷り越したという訳だ」
義治が得意気に頷いているのが、何となくムカつく。
早う和邇城へ後詰めに向かえや!
「では、このまま和邇城へ?」
「それも良いが、兵部少輔が此処へ参ったのは何ぞ策でもあるのだろう?儂に聞かせてみよ」
いや、何で?
「はぁ。いや、策と言う程のものでは御座いませぬ。堅田の船を使い敵の背後に回り込んで嫌がらせをしようかと…」
「ほう。確かにこのまま後詰めに加わったとて大事な働きは出来まい。しかし、それでも兵部少輔の兵の数では大した働きは見込めまい?如何するつもりであった?」
まあ、今俺が率いている兵は50人にも満たない。
洛北の兵も園城寺の僧もいないからな。
三国志じゃあるまいに、この数で敵と戦うのは勘弁だな。
堅田の兵は連れて行けるが、敵が強大過ぎるんだよなぁ。
「幾度か船を往復させる事で、敵に味方の兵を多く居るかの様に見せようかと思うておりました」
何かの小説か何かで見た作戦だな。
まあ、効果があるかは知らんけど。
敵が少しでも多くの兵を背後に差し向けてくれれば親父が楽になるし。
「良かろう。儂がその役を買って出てやろう」
は?
「右衛門督様がに御座いますか?」
「うむ。兵の数から見ても、お主がやるより儂がやった方が良かろう」
いや、後方で嫌がらせするだけなんで、兵数が多いなら親父の後詰めに向かって欲しいんですけど。
いや、待てよ…
義治に後詰めを頼むのは…何か嫌だな。
何の根拠がある訳ではないけど、足を引っ張りそうな気がする。
「右衛門督様ならば、某も安心して御任せする事が出来ましょう」
「おう、儂に任せておけ!朝倉家に目にもの見せてやろうぞ!」
離れた場所で勝手に動いて潰れて欲しい。
よし、後方撹乱は義治に任せよう。
本人がやりたがってるし仕方ないね。
俺は素直に親父と合流するか。
摂津の織田兵が戻って来るのを待つだけだし。
まだ堅田を捨てて、宇佐山城まで退けるしな。
親父が敵に突撃してしまわない様に見張ってないといけないしな。
「ところで真野城の十郎左衛門殿の事に御座いますが」
「おお、そうであったな。儂が十郎左衛門に織田家に味方する様に書状を書こう」
よし、よし。
手紙で味方するには役立つ御仁だからな。




