426 殿原衆を味方に
「此度の戦で当家に御味方いただけなんだ事は誠に残念に御座る」
堅田の居初又次郎を始めとする殿原衆の代表達を恨めし気に睨め付ける。
「…」
俺の詰る様な言葉に殿原衆は黙って俯いている。
「以前儂の申した通り、延暦寺の僧兵共が敵方に味方し堅田近くに攻め寄せたというのに…」
「…」
ネチネチと言葉で殿原衆を責める。
俺もそんな陰湿な事はしたくないけど、交渉を有利にする為には仕方ないね。
「まあ、朝倉家の大軍を前に少勢の織田家では、とてもではないが支えきれぬとの考えも分からぬ話ではないがな」
まあ、あまり責め立てて、逆ギレされても嫌だしな。
少し殿原衆に歩み寄る態度を示す事によって、織田家と完全に敵対してしまう事を防ぐ。
「申し訳御座らぬ。しかし、とてもではないが織田家が朝倉家の猛攻に耐えきれるとは思えず、堅田の町を守る為にも手出し出来ませなんだ」
うん、俺も親父が此処に居なければ見捨ててるだろうしな。
「しかし今は延暦寺が焼かれ、邪魔な僧兵共は坂本で園城寺と争っておるし、朝倉家も一旦動きを止めておる。摂津に居る織田兵も二、三日中にはやって来よう。そうなれば…果たして堅田の町は無事であろうかな?」
此処で親父等が退けば、後々堅田は戦場になるだろうさ。
実際史実で戦場になってるし。
だから堅田を戦場にしない為には、親父達がこれ以上後退しない様に支援しなければならない。
「兵部少輔様は真宗と昵懇と聞き及びますが、全人衆には声を掛けぬので」
全人衆は、殆どが一向衆の門徒だからかな?
俺、別に一向衆と親しくはないけどなぁ。
寧ろ敵だし。
「某は、僧籍にある者が戦場に立ったり、戦に口を出すべきではないと考えておる。武家同士の戦の事で頼るつもりはない」
僧侶は仏の教えの事だけ考えていれば良い。
戦や政治に口出しする必要は…いや、この時代なら僧のアドバイスは欲しいか。
「正直意外ですな。兵部少輔様は我等と全人衆ならば、全人衆の方を頼るかと思うたのですが」
「それは誤解に御座る。戦で頼るは、やはり武家に御座ろう」
いや、全人衆と付き合うと俺が宗教側の人間だと誤解されちゃうだろ?
出来れば宗教とは距離を置いておきたいなぁ…出来たらな。
「分かり申した。殿原衆は織田家に御味方し、和邇城へ後詰めを送りましょう」
よしよし、これでもう少しの間、和邇城で粘れるな。
後は様子見している真野城の真野十郎左衛門の説得か。
「ところで、真野城の十郎左衛門殿の事に御座るが…」
「兵部少輔は居るか!!」
こいつ等に真野城の事を聞き出そうと話しかけた時、突然俺の事を尋ねる声が響く。
「何者か!」
突然の乱入者に居初又次郎も声を荒げる。
「儂だ、兵部少輔!お主に助力しに参ったぞ。真野城の調略も儂に任せておけ」
「右衛門督様!」
乱入者の正体は何しに来たのか六角義治だった。
…微妙。




