425 聖衆来迎寺
園城寺に坂本での放火を打診した時に、燃やさない様に進言した寺が2つある。
1つは山門派でも寺門派でもない第三勢力の真盛派の寺である西教寺…燃えてるが。
もう1つが、聖衆来迎寺だ。
この寺を燃やさない様に進言した理由は、史実で俺の親父である森可成を弔ってくれたからだな。
俺の中でこの聖衆来迎寺は、ある意味本願寺よりも大切な寺だ。
それに住持の真雄は敵だった親父を弔うくらいに情け深い聖人!
今後の天台宗との関係修復を考えても縁を結んでおいて損はない。
情けではなく打算で弔ったとしても、それはそれで…
「織田家の方々が当山へ如何な御用に御座いましょうか」
聖衆来迎寺に着くと、俺達を警戒して門前に出てきた坊主に話し掛ける。
幸い聖衆来迎寺は焼けてはいなかったが、天台宗が織田家と敵対関係になっているからな。
警戒されて当然だ。
「某は織田家家臣森兵部少輔。大事な話がある故、住職を御呼びいただきたい。兵には一歩たりとも貴山へは立ち入らせぬ事を御約束致す」
「拙が当山の住持、真雄に御座います。此処で御話しするのも何ですので、どうぞ中へ」
おお、真雄自ら出迎えてくれてるとは。
「忝ない」
斎藤五郎左衛門からバレない様に進言した衣に包まれた秘仏を受け取ると、真雄に招かれて堂内へと入る。
堂内で真雄と2人、差し向かい話し合う。
「さて、織田家の方が当山に如何なる御用に御座いましょう」
「先ずは此れを」
早速本題の秘仏を真雄に渡す。
その方が話が早いだろうしな。
「此れは!」
「真雄殿の思われた通り、根本中堂にあった薬師如来に御座る」
真雄は秘仏を受け取ると、一心に拝み始めた。
あの~、後にしてくれます?
「兵部少輔様は何故この像を?」
あっ、終わりました?
「園城寺が坂本へ火を放ったと知り、万が一があっては一大事と、延暦寺の宝物を保護すべく洛北へ移しておりました」
「それは…」
「政所に居られる座主も御存じに御座る」
「座主の御許しが…」
いや、知ってるだけで、許してもらった訳ではないけどね。
「法灯等は延暦寺に残られておられた詮舜殿等に洛北へ移す事を御頼み致しました。しかし同じ場所にあると、万が一があった場合に共に紛失する恐れがあるかと思い、秘仏は西教寺へと思い運んで参ったのです。ですが、下山した時には既に西教寺は焼かれておりましたので、貴山で秘仏を預かっていただこうと罷り越した次第に御座います」
「それは有り難い事に御座います、兵部少輔様。皆に代わり感謝申し上げます」
いえいえ、いいって事よ。
仏像ちょろまかして来ただけで感謝されるなんて…チョロいな。
「延暦寺は織田家を敵としたやも知れませぬが、織田家の方は延暦寺と敵対したい訳ではありませぬ。出来れば朝倉家と縁を切っていただき、ひたすらに仏の道を邁進していただきたいものです」
「耳の痛い事に御座いますな」
真雄も僧兵の事は苦々しく思ってるのかな?
「さて、真雄殿。某は先程京に着いたばかりで、近江の詳しい状況が分かりませぬ。秘仏の礼という訳では御座らぬが、今の状況を詳しく御教えて願いませぬか?」
「…これは断れませぬな。宜しいでしょう」
「忝ない」
でも兵力を増やそうと思えば、未だ様子見している堅田衆か朽木家を味方に付けるくらいしかないよなぁ。
降伏した佐々木越中守を再び寝返らせる時間はないしな。
園城寺も朝倉家の相手まではしてくれないだろうしな。
まあ、親父もまだ宇佐山城までは退けるから突撃なんてしないとは思うけど。
周りの家臣達も止めてくれるよね?
「そういえば、堅田に程近い真野城の真野十郎左衛門(元貞)殿は、まだどちらにも後詰めを送っておられぬとか」
よし、堅田衆を説得するついでに、そいつのケツを叩きに行こう!




