422 取り敢えずは間に合った!
丹波を通り抜けて漸く京へと辿り着く。
丹波衆が三好家側に寝返っている可能性も考えてはいたが、どうやら杞憂だったようだ。
問題は志賀の陣に間に合ったかどうかだが、織田家の兵が摂津へ向かったという知らせを聞いて直ぐに赤穂を出たので、恐らくは大丈夫だとは思う。
京屋敷に入ると、平野右京進に今の状況を尋ねる。
「朝倉の兵が京を目指し湖西側を南進しております。佐々木越中守殿は既に降伏、小松城の中川八郎右衛門様は城を捨てられ、大殿をはじめ、近隣の諸将は蜂屋兵庫頭殿の守る和邇城に兵を送っております」
うわ!戦に間に合いはしたが、ギリギリやんけ!
「園城寺に知らせは?」
「既に次郎兵衛(稲田隆元)が。本当に延暦寺が朝倉家に呼応し兵を出せば、坂本へ兵を出すと」
よし、約束通り園城寺は坂本を攻めてくれそうだな。
これで比叡山の僧兵共は本拠を焼かれてパニックになってくれるだろう。
「座主は大原か?」
「はっ!」
天台座主の応胤親王は、今は大原の政所に居られるらしい。
天台座主は殆ど天台三門跡との兼任なので、特に用事がない場合は延暦寺には居られない。
応胤親王も梶井宮門跡(今の三千院)との兼任なので、普段は大原の政所に居られる。
本来ならば梶井宮門に居られるはずだが、応仁の乱で焼けてしまったので、以来門跡は政所に居られる。
今回も政所に居られる様なので、身の危険はないだろう。
「その他、金蓮院准后も山に登られてはおられぬな?」
「はっ!」
金蓮院准后こと覚恕は次の天台座主で、史実の比叡山焼き討ちの時に座主になっていた人物だ。
まあ、天台座主になる人は、だいたい親王が出家したか、出家してから親王となった人ばかりだから、万が一にも殺してしまうと…海外逃亡出来るか?
兎に角、親王達が比叡山に居ない事を確認するのは大事!
「よし!右京進、お主は今から大急ぎで政所に居られる座主の所へ赴き、儂の兵を山へ入れる許しを得て参れ!」
「座主の許しに御座いますか?!流石にそれは無茶に御座います!」
まあ、ウチの兵を比叡山に入れろと言っても、「オッケー」とか絶対に言わないだろうな。
「園城寺が延暦寺を焼き討ちしようとしておる故、一刻の猶予もない。大師(伝教大師最澄)より脈々と受けつがれた宝が灰となるのを黙って見ておる事など出来ようか。とでも言って当家の信心深さでも語っておけ」
後で必ず怒られるだろうから、あくまでも延暦寺にある数々の宝物を守る為には仕方なかったと言って、罪を少しでも軽くしておく為の工作だ。
「はっ!しかし、公家の方々にも話を通しておいた方が良いのでは?」
要るかな?要るか…
「久蔵…いや、今は外記か。外記は京に居るか。居れば奴から殿下に託けを頼もう」
「はっ、そうですな!外記殿は京に居られます故、公家衆にはそちらから手を回していただきましょう」
俺の元家臣である加木屋久蔵は、父親の姓である斎藤を名乗り、斎藤外記として織田家と公家との折衝に当たっている。
斎藤外記を名乗っているのは、加木屋久蔵のままの名乗りでは色々と不味い事があったのだろう。
格とか面子とか見栄とか。
近衞家と繋がりのある高貴な外記様なら、旧主の為に骨の一本や二本、足の骨だろうが首の骨だろうが折ってくれるよね?
さて、根回しはこのくらいにして、比叡山へ攻め込む準備だな。
本当は親父の援軍に向かいたいところだけど、俺の兵力が加わったところで焼け石に水だしな。
先ずは延暦寺の裏切り者(?)共に目にもの見せてやろう。
「修理大夫!洛北四家に比叡山へ登り、延暦寺の宝物を保護する様に命じよ!」
「はっ!」
護衛役の山本修理大夫を呼び、洛北四家に延暦寺の空き巣…じゃなくて、宝物の保護を命じる。
修理大夫は元々洛北四家の一つ、山本家の出だからな。
奴等を説得させるには丁度良い人材だ。
「仏典、仏像、仏具等種類は問わぬ!保護出来た宝物に対して相応の褒美を与える。但し!隠匿しようとした者は身分を問わず首を刎ねる!」
大義名分大事!
宝物保護は本気でやりますよ!
有言実行、本気で首も刎ねますよ!(要相談あり)
ちゃんと保護してこそ赦される!
俺が勝手に比叡山を攻めると死罪だろうしな。
それに延暦寺と縁の深い洛北四家を比叡山に入れるには、宝物保護の名分くらいないとキツイだろう。




