表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
322/554

311 可哀そうな伊賀守

 京へ戻ると、寄り道せず定宿にしている妙覚寺に入った途端、留守を任せていた平野右京進が直ぐ様駆け寄ってくる。


「殿、尾張守様より戻り次第、本能寺へ来るようにとの仰せに御座います」


 おおう、休む暇も与えられぬとは、ここはブラック企業かよ…うん、ブラック企業だったわ。


「承知した。留守中何か変わった事はなかったか?」


「はっ、伊勢の前野将右衛門殿より書状が届いております」


 それは北畠家攻めの報告だろうな。


「それは本能寺より戻ってから読むとしよう」


「はっ、後は…」


 と、ここで右京進は声を潜める。

 何かヤバい話なのか?


「摂津の和田伊賀守(惟政)殿が、甲賀と新たに備前で得る筈であった所領を没収の上、芥川城にて謹慎を言い渡されました」


「それは真の話か?何故か?」


 俺は驚愕の表情を浮かべ、右京進に聞き返す。


「詳しくは存じませぬが、何やら殿の御不興を被ったとか。他に朝山日乗殿と公家の万里小路(までのこうじ)亜相殿が共謀し、伊賀守殿を陥れたとの噂も御座います」


 万里小路亜相?万里小路惟房だったっけ?

 何で公家が絡んでるんだろ?


「右京進、この話は此処までだ。今は伊賀守殿を擁護して厄介事に巻き込まれたくはない」


 右京進も無言で頷く。

 和田伊賀守殿には悪いが、備前三石の領地も没収されたらしいから、教会建設の話も流れただろう。

 ただ、このまま謹慎されたままだと摂津の守りが弱くなるので、謹慎を解く為に口添えした方が良いかもな。

 史実でも和田伊賀守殿は、領地を没収された後に赦されているから、放っておいても大丈夫なはずだけど、恩を売れるなら売った方が良い…はず?


「兎も角、先ずは殿の仰せに従い本能寺へ向かう」


 深入りしたくない話題から話を逸らし、殿が呼んでいるらしいので、殿の宿である本能寺へ向かう事にする。



 本能寺の殿の許へ人をやって、今から伺っても良いかと尋ねると、さっさと来いと言われたので、若干ビビりながら本能寺へ向かう。


「只今、備前より戻りました」


 殿へ帰還の挨拶をしつつ室内をチラ見すると、殿の側には島田弥右衛門殿、村井民部少輔殿だけでなく、親父や他数人いる。

 なんかこれから詰問される様な気分だな。


「よう戻った。備前播磨での話は弥右衛門より聞いておるが、其方からも話を聞こう」


「はっ!」


 殿の求めに応じて、尼崎の話から順番に俺目線の話をしていく。

 尼崎では到着前に篠原長房に逃げられたり、高砂城から篠原自遁を誘き出して討ち取ったり、官兵衛とグルになって赤松政秀と浦上宗景の領地を削ったり、宇喜多直家にしてやられたり…


「領地割りの草案だが、多少の変更をせねばならぬ。伊賀守は謹慎、領地を没収となった」


 ああ、伊賀守殿の領地をどうするかという話ね。


「はっ、謹慎の話は聞き及んでおりますが、一体何故に御座いましょう?伊賀守殿とは先頃まで共に播磨にて戦っておりましたが、まさか京に戻ると謹慎となっておられるとは…」


 訳が分からんといった様子で、殿に聞いてみる。


「伊賀守は私腹を肥やし、その銭を天主教に融通しておると、朝山日乗や万里小路亜相よりの訴えがあった。事実、伊賀守を始め幾人かは、天主教へ大金を布施として納めておる」


 そりゃ、大金を納めているでしょうよ。

 でも、同じ様に仏教に貢いでいる奴とか大勢いるんじゃない?

 自分等の事を棚にあげた僧から敵視されて、難癖付けられたんだろうね。


「それ故、伊賀守は所司代の職を解き、本領である甲賀を取り上げ、新たに与える筈であった備前の地の話も立ち消えとなった」


 何と可哀想な伊賀守殿!

 朝山日乗のせいで、職も領地も奪われる事になるとは…

 でも、頭を丸めて赦しを請えば、きっと殿は赦してくれるさ!

 史実では赦してくれたし…たぶん大丈夫!


「其れはさて置き傳兵衛よ。お主には備前播磨で得た領地を任せる。彼の地にて新たに家を興せ。美濃尾張の領地は召し上げ、伊豆守に与える。伊勢の所領は残すが、森家より与えられた所領も伊豆守に返すように」


 はっ?家を興せって何?

 俺が織田家より与えられている知行地は、尾張の戸田と柳津、伊勢の水沢。

 森家より与えられた所領は、伊勢の川尻、尾張の蓮台、美濃の久々利。

 殿から与えられた伊勢の所領は残るそうなので、残るは茶畑のある水沢だけか…

 他の領地はどうでも良いが、俺の久々利焼き物ランドが!!


「うん?まさか否とは申すまいな?」


「否は御座いませぬ…」


 今さっき、謹慎させられた人の話をしてたのに、断るとか出来(でけ)へんやん…

 だがマズイ、このままじゃ遠方に追いやられてしまう。

 せめて志賀の陣に間に合う距離にある領地を貰わないと、何の為に出世したのか分からん!


「何やら不満そうだな、傳兵衛」


 マズイ!不満が声に出てしまった!

 誤魔化せ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり家名は”羽柴”?w
[気になる点] ちょっと書き方が悪かったみたいなので書き加え 「本来森家の全てを受け継ぐ嫡男の傳兵衛にとって、これ褒美になるのだろうか?」 これ傳兵衛自身が褒美と思うかでなく、第三者にとって褒美を与…
[一言] 大領を任せて二国の旗頭にするといえば聞こえはいいが、 いきなり瑕疵なく廃嫡されて遠隔地に左遷って酷い人事だよな。 森家は得であっても主人公本人が廃嫡で損だから、 不満がなかったら頭の中身に問…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ