312 どっちが良いかって?一択でしょ!【地図あり】
「何やら不満そうだな、傳兵衛」
適当にそれっぽい事を言って誤魔化すんだ、俺!
「いえ、新たに所領を頂ける事は聞いておりましたので、京へ戻る間に色々と内政について考えておったのですが、彼の地は山ばかりで平地が少ないうえ、雨も中々降らず、溜池を造り水を確保したり、遠浅の海を干拓して田畑を増やさねばならぬと。それに掛かる金銭を戸田や久々利の上がりで補おうと思うておりましたが、召し上げられるとなれば如何したものかと…」
殿が島田弥右衛門殿の方を見ると、弥右衛門殿も頷いてくれる。
「確かに山ばかりに御座いましたな」
そうでしょう、そうでしょう。
俺、一つも嘘を言ってないからね。
「森家の澄み酒には戸田の米を使うております故、戸田の地を父上に譲るのは当然に御座いますが、戸田の米や酒を当てにしておった為、代わりの銭を何処から捻出したものかと…」
殿も、成る程と頷いてくれた。
これも本当の事だからな。
水沢で育てている茶なんて、まだまだ出来てもいないし…
久々利の茶器を数点売った所で、赤穂の開発費用には程遠い。
元服前に手掛けた椎茸は寺に売っていて、そこそこ利益はあるけど、酒に比べるべくもない。
石鹸も作ったはいいけど、それ程売れてはいない。
なんなら石鹸とセット売りした洗濯板の方が重宝されているが、すぐに真似されたので利益はあまりない。
油も作ってはみたけれど、座と揉めるのが面倒臭かったのと、米…酒を優先しろと命じられたので、生産量は自家栽培の域を出ない。
伊勢の塩浜村での塩造りは儲かっているが、領地を得て以降忙しくて手を入れられてないし、村は親父に返すからなぁ…
やっぱり酒…米だよな。
それだけじゃ足りないんだけど、試験費用くらいにはなるかな。
何処かの商人か寺から借金したらマズイかなぁ。
「殿、傳兵衛殿が預かっている栗太郡の領地を、そのまま与えられては?」
村井民部少輔殿が、関津周辺の領地を俺にくれるように提案してくれる。
「ふむ、あの辺りは青地家が治める地であったな」
「はっ。しかし先の戦にて連枝の伊豆守(青地高直)が当主不在の隙を突き、家を乗っ取り六角中務大輔に加担した為に、今は傳兵衛殿が押さえております」
そうそう、アレどうしたらいいの?
あの辺りを貰えるなら、坂本にも近いので志賀の陣対策として是非とも欲しいです!
でも、青地家との関係が悪化する可能性もあるか…
なるべく青地家とは仲良くしておきたいんだが。
「大樹にも話を通しておかねばならぬか…」
現在、南近江は守護不在だしな。
実質織田家が治めていると言っても過言ではないが…織田家が治めているのは大津と草津だけだし、やっぱり過言かな?…兎も角、勝手は出来ないので、義昭の許可を一応取っておかないと。
「伊賀守殿から取り上げた赤穂の地と交換しては如何でしょう?龍野の赤松下野守も浦上宗家の事で不満に思っておりましょう。近くに幕臣の何方かが入れば、よもや見捨てられたとは思いますまい」
民部少輔殿の意見に成る程と頷く。
あの辺、山ばっかりだし義昭にあげちゃえば?
義昭の事だから、代官なりを送り込むだけで、現地に誰も来ないんじゃない?
上がりだけ搾り取って放置するんじゃないかな?
「民部少輔、後で十兵衛を呼び、詳細を詰めておけ」
「はっ!」
ふう、何とか近江に領地を貰えそうだな。
無事に話が纏まって良かった、良かった。
「それから、傳兵衛よ。お主の室が決まった故、出来れば年末、遅くとも年始には式を行う」
はい?
つ、遂に結婚すか!
でも年末って、急過ぎません?
「い、何処の娘に御座いましょう?」
不意討ちに思わず動揺してしまったではないか。
「赤松左京大夫の娘だ。赤穂を治めるのに役に立とう」
「はあ」
予想外で、気の抜けた返事を返してしまった。
赤松左京大夫の娘?義祐に娘なんていたかな?
でもまあ、家系図に乗ってない庶子くらい、大勢いるわな。
「ふむ、不服か?家柄で赤松家が良いかと思うたが、不服であるならば他にも宇喜多家からも話があった故、そちらでも良いが…」
「是非とも赤松家でお願い致します!」
焦って食い気味に答える。
冗談ではない!
宇喜多家の娘との結婚なんて、後々血痕を残す事になるのは間違いないよ!
児島湾付近の海岸線は適当です。(干拓分の消し間違いとかあるかも)




