309 仕方ない、一人はやろう
さて、後任が送られてくるまで、どうしたもんかな。
先ずはやはり、この辺りの地理の把握かな?
どこかは知らないが、備前か播磨で領地を貰えるらしいので、重要な所は把握しておきたい。
本当にどこを貰えるのか知らないし、大半の家臣は各地の城に配しているので人手が足りないから広範囲を調べられないが、重要な湊や渡し、峠などの要所だけでも調べよう。
暇そうな家臣達に見回りを兼ねて、手分けして調べさせる。
特に、後で他家に渡ってしまう土地なんかを堂々と調べられるのは今の内だけだからな。
後はスカウトもしておきたいが、自分の土地を離れてまで、俺に仕えてくれる奴っているか?
今回は滅ぼした勢力なんてそれほど無いから、皆そのまま主君に仕えるだろうしな。
しかし、摂津衆等に攻められて領地を失った明石行雄のスカウトにはチャレンジしておきたい。
行雄の身柄は俺が押さえたままなので、今がチャンスだ。
早速、行雄を軟禁している保木城へと急いで戻り対面する。
「飛騨守殿、貴殿の領地は吉井川を境に、東を摂津守護の池田家に、西を宇喜多家に分け与えられる事となり申した」
「左様に御座るか…。して、我等の処遇 は如何なるので御座ろうか?」
処遇…あれ?話題に上がってない…よな?
皆、どうでも良いと思っているのか、俺が決めると思っているのか…行雄、後者だといいね。
「浦上家よりは何も」
浦上宗景は行雄に興味無いんだよと伝えてあげる。
本当かは知らんけど…
「左様か…」
行雄は、ガックリと肩を落とす。
この戦いでは浦上家の為に最後まで頑張ったのにな…この戦いでは…
「飛騨守殿、某に仕えぬか?某は此度の戦にて、備前播磨に幾ばくかの領地を頂ける事になっておる。是非とも地の者の手助けが欲しいのだ」
「某に傳兵衛殿に仕えよと?」
「左様。お主の戦い振りを見て是非にと思うたのだ。それにお主は十分以上に与次郎殿への忠心を示した。それが報われぬのでは、些か気分が悪い。無論、お主の知行については出来る限りの事はしよう。まだ何れ程の地を頂けるかは聞いておらぬ故、約束は出来ぬがな」
行雄は大分迷っている様子なので、今日はここで引いておこう。
知行をどれだけ与えられるかも分からんしな。
「某が京に戻る迄に決心してくれる事を楽しみにしておる」
義弟の青木次郎左衛門に保木城を任せて富田松山城に戻ると、乳母子の勝三郎と於勝たち三馬鹿に出迎えられる。
「傳兵衛様、当家に仕官したいと申す者共が参っております」
勝三郎がそう報告してくれるが、於勝等が居るのはなんでだ?
「兄上!是非とも、その者等を俺の家臣に!」
うん?於勝の知り合いか?
「何処の者だ?」
「元小寺家家臣の曽我太郎兵衛殿、母里雅楽助殿、その弟武兵衛殿の三人に御座います」
ああ、戦が終わったら話がしたいとか言ってたな。
ウチに仕官したいってか。
「よし、会おう。連れて来てくれ。して、於勝は何だ?その三人を見知っておるのか?」
「おう!片上での戦振りは見事なものだったぞ!」
ああ、戦で見かけて気に入ったのか。
「構わぬが一人だけだぞ。儂も地理に詳しい者が欲しいからな」
「ならば母里武兵衛を!」
おい、俺が唯一知ってる奴を指名しやがった。
後は、母里雅楽助と曽我太郎兵衛か。
雅楽助は武兵衛の兄らしいが、曽我太郎兵衛って誰?
曽我っていえば、黒田節でお馴染みの母里友信が、曽我から母里に養子に入ったんだっけ?
太郎兵衛って、その友信の兄弟とか親戚か?
友信の兄だとすると、弟達も一緒に召し抱えられるかもしれないな!
母里武兵衛等三人を通し話を聞くと、官兵衛のあまりのブラック企業振りに転職を希望しているらしい。
う~ん、コイツら召し抱えたら、官兵衛との関係が悪くならないだろうか?
官兵衛からのスパイという線もあるけど…
まあ、いいや。
この辺りの土地に詳しい奴は欲しいし。
「お主等程の者を召し抱えるのは吝かではないが、家は如何する。次男の武兵衛は兎も角、雅楽助と太郎兵衛は当主であろう?」
一族全員で来ていいんだぜ!
特に母里友信と野村祐勝、カモン!
「我等三人のみに御座る。某には弟が二人おりまして、上の弟に母里家を、下の弟に曽我家の家督を継がせる事を官兵衛殿にも了承を得ております」
ちゃうねん!ホンマに欲しいのは、その弟二人やねん!
曽我太郎兵衛の言葉に、思わず叫びそうになるのを必死で堪える。
「左様か。官兵衛殿も承知の事ならば問題あるまい。三人共、召し抱えよう。丁度、この辺りの地理に明るい者が欲しかった所だ」
まあ、母里友信は頑固者で面倒臭そうだから、家臣にしなくてもいいか…
「兄上!」
於勝、煩いぞ。
分かった分かった、召し抱えるのは許してやるから目当ての武兵衛は自分で口説けよ。




