304 流石は三悪人、格が違う【地図あり】
沼城を攻めていた備前明石家の軍勢は北の保木城付近にまで退き、そこでウチの軍勢と激突する。
「遠慮は要らぬ。殿は、我等の力を備前の田舎者共に見せつけよと仰せだ。備前明石家の者共を完膚なきまでに叩き潰せ!」
斎藤内蔵助の号令で、ウチの脳筋共が備前明石家の兵に目掛けて一斉に襲いかかる。
今回は皆の暴走を止めないよ。
宇喜多直家に対し、織田家の恐ろしさを存分に見せつけてやり給え。
今頃は三石に陣取っている摂津衆等が、浦上宗景の本拠である天神山城を脅かしているだろうから、浦上家からの援軍も期待できまい。
というより、川向こうにある領地も絶賛攻め込まれている最中なので、早く降伏しないと領地が無くなっちゃうよ?
(たぶん)降伏するタイミングを探っている様な奴に、策謀なんか必要ない!
脳筋共の力を見せつけよ!
今回出番のあまり無かった与力達にも活躍の機会は与えてやらないとね。
あと、俺は備前の国人衆の事を田舎者なんて思ってないからね。
あくまで内蔵助個人の感想です。
俺は小寺官兵衛と共に本陣にてサボリ…もとい皆の戦いぶりを監察中だ。
「ほう!あの者の槍働きは見事では御座らぬか」
官兵衛が戦を眺めがら、俺の機嫌を取ろうとしてか家臣の活躍を誉めてくる。
「あの者は、本国寺の戦でも活躍した坂井与右衛門に御座いますな」
でも、惜しい!
残念ながら、そいつは俺の家臣じゃない…
備前明石家を追い詰めながら官兵衛と歓談していると、宇喜多家からの使者が慌ててやってくる。
「宇喜多家家臣、富川平右衛門に御座います!」
「如何された平右衛門殿。何か一大事が?」
「はっ、備中三村家に不穏な動きがあるとの知らせが入りまして、直ちに我等はその備えに参ります故、後の事は御二方に御任せすると」
おおう、可哀想になぁ。
折角独立したのに周りは敵だらけじゃないか…
これも日頃の行いが悪いせいかな?
「承知致した。此方の事は心配めさるな。それよりも、我等もそちらの後詰めに向かわずとも構わぬのか?」
「三村家など、我等だけで十分に御座る。くれぐれも備前明石家の事、御頼み申します」
「御任せあれ」
富川平右衛門の言葉に頷くと、平右衛門は少し心配気に去っていく。
まあ、俺達を完全に信用出来ないから仕方ないね。
信用出来ていたら、始めから備前明石家は俺達に任せて、宇喜多大和守家の討伐に向かっただろうし。
ともあれ、宇喜多家の領土拡大は防げたはずなので、後は終戦まで適当に過ごせばいいや。
「殿!備前明石家は保木城を捨て逃走!此より追撃致します!」
「うむ。だが、あまり深追いする必要はないぞ。間も無く浦上家も降伏しよう」
内蔵助からの追撃要請に許可を出すと、皆は最後の活躍の場だとばかりに勇んで備前明石家の兵を追い回しにかかる。
よし、これで俺の仕事は終了だ!
漸く京に戻れるぞ! しかし、暫くして駆け込んで来た伝令が、笑顔で俺の仕事が増えそうな報告をした。
「殿!勝三郎殿が備前明石家を吉井川の畔まで追い詰め、当主の飛騨守を捕らえました!」
要らん!その情報は面倒臭いから聞きたくなかった!
深追いせんでええって言ったやん!
俺の仕事増やすなや!
あ~あ、弥右衛門殿に備前明石家当主を捕らえたと報告しに行かないと…
備前明石家が降伏した事で、浦上家の降伏も許す事になった。
浦上宗景と弥右衛門殿の間で降伏交渉は進んでいたみたいだが、備前明石家が降伏したお陰で、交渉が一気に進み大分有利な条件を飲ませる事に成功したらしい。
交渉は弥右衛門殿に任せているので詳しくは知らんけど。
俺の案で存続させる事に決まった浦上家だが、史実より大きく領地を削られる事になったので、放っておいても滅亡するかもね。
対する宇喜多家だが、残念ながら三村家を追い返す事が出来た様だ。
しかも、石山城の城主である金光宗高に、三村家を備前に呼び込んだと因縁をつけて殺害。居城の石山城を乗っ取ってしまった。
やられたわ~。
備前明石家との戦いを俺達に任せて三村家との戦に赴いたのは、これが目的だったか。
このまま浦上家と戦っていても、領地の拡大は出来ないと踏んだんだろうな。
当にしてやられたって感じだな。
流石は三悪人に数えられる武将だぜ。
俺とは性格の悪さ…武将としての格が違う。
まあこれで、播備の奴等と、おさらばだ。
出来れば、もう二度と関わらない事を祈るぜ。




