300 弥八郎、頑張ってしまったんだな…【地図あり】
「では源左衛門殿には、狐塚城の日笠源太殿の調略を御願いしたい」
「承知致した」
日笠源左衛門を官兵衛に紹介すると、早速調略を頼まれている。
狐塚城は、これから攻略しようとしている富田松山城の西にある城で、城主は源左衛門の同族である日笠源太だという。
う~ん、詳しい地理が分からないので、官兵衛に丸投げになってしまうなぁ。
「現在、宇喜多三郎右衛門は、瀬戸付近にて備前明石家と戦になっております」
三雲三郎左衛門が今の宇喜多直家の状況を報告しているが、さっぱり地理が分からない。
ここはやはり官兵衛に全て任せてしまおう。
それと、弥八郎が鷹取家の調略に向かっている事も、官兵衛に話しておこう。
「後は、某の家臣が鷹取備中守の調略に向かっておるが、果たしてどうであろうか…」
「鷹取備中守の妹は、宇喜多家の重臣である富川平右衛門の室となっていたはずで御座る。よって此方ではなく、宇喜多家に付く事は十分に考えられましょうな。しかし、もしも鷹取備中守が御味方となれば、周りの土豪達も挙って我等に従いましょう」
へ~、そんなに力のある国人なのか…
浦上家を裏切ってもらえるなら有難いけど、宇喜多直家の家臣になってもらっては困るなぁ。
そこはちゃんと独立勢力になってもらわないと。
弥八郎の事だから理解しているとは思うし、備中守もなる必要もないのに直家の家臣になりたい訳ではないだろうから大丈夫だとは思うけど。
富田松山城付近にまで兵を進めるが、敵は城に篭もって出てこないので、挑発する為にも片上湊に火を放つ。
湊から城へ救援要請は出ているだろうが、城に動く気配は見えない。
もしかすると、他の城からの援軍が来るのを待っているのかもな。
しかし、多少の援軍はあったが、狐塚城の日笠源太や鷹取備中守が織田家に付いた事を知ると、これ以上篭城しても無駄だと判断したのか、決戦を挑んできた。
いつ西側にいる宇喜多軍がやって来て、挟み撃ちに遭うか分からないしな。
そうなる前に、一か八か俺達を撃破したいのだろう。
よくやるよね。
俺が同じ状況になったら、即行で城を捨てて逃げてるかもね。
それは兎も角、俺達も宇喜多直家がやって来る前に城を奪っておきたいので、野戦は大歓迎だ。
敵の兵数も、こちらの半数にも満たない程度だしな。
だから策など立てずとも、数で押しきっても勝てるだろう。
結果、楽勝だった。
富田松山城や田井山城の兵を散々に蹴散らし、援軍に来ていた土豪達を討ち取ると、浦上勢は俺達に城を明け渡して天神山城へ退去していった。
なら初めから城を明け渡せばいいのに、と思うのは俺だけなのだろうか?
兎も角、富田松山城を落とし、片上湊を手に入れたのだから、もう十分じゃないかな?
もう少し宇喜多直家の足を引っ張っておきたいが、無理をする必要もない。
そんな事を考えていると、島田弥右衛門殿がやって来た。
あれ?何でこんな所に?
「傳兵衛殿、浦上与次郎は天神山城まで兵を退いた。それを追って我等は無事三石まで攻め上がる事が出来申した。後は浦上家と和睦致すだけに御座る」
ああ、三石まで兵を進めたからやって来たのか。
じゃあ、浦上宗景との和睦は時間の問題だな。
備前明石家が宇喜多直家を抑えている間に、話が纏まって欲しいものだ。
「殿!」
今度は三雲三郎左衛門が駆け込んでくる。
「如何した、三郎左衛門」
「はっ!宇喜多三郎右衛門が撤退致しました!」
うん?何で?
「何があった?」
「どうやら謀反があった様に御座います!謀反の知らせを聞き、急ぎ兵を退いたとの事!」
謀反って…
でも今、宇喜多家に兵を退かれたら浦上家への圧力が減っちゃうんじゃない?
「傳兵衛殿!」
今度は小寺官兵衛と日笠源左衛門が、慌てた様子でやって来た。
「如何なされた、官兵衛殿」
「宇喜多家より離反した宇喜多大和守家の五郎左衛門殿が、庇護を求めて来ておる」
ああ、直家が撤退した理由はそれか…
「庇護と言われても、宇喜多三郎右衛門殿は我等の御味方故、そこを離反した者を庇う事は難しいのでは?」
一応、宇喜多直家はこちら側の陣営なのだから、そこを離反した奴を救うのは駄目なんじゃないの?
官兵衛もそれは分かっているだろう。
だが、もう一人の日笠源左衛門が駄々を捏ねる。
「しかし、大和守家は元々浦上宗家に従っていた家。五郎左衛門殿は久松丸が兵を挙げた故、それに従うべく離反したという。それを救わぬのは…」
いや、知らんがな!
それに、五郎左衛門とやらに荷担して、俺が宇喜多直家に恨まれたらどうするんだ!
見殺しだよ、そんな奴!
「殿、只今戻りました」
そんなタイミングで帰ってきた本多弥八郎。
これ幸いにと官兵衛等に断りを入れ、少し離れた所で弥八郎の話を聞く。
「弥八郎、鷹取備中守の調略、御苦労であった。助かったぞ」
「備中守殿は話の分かる御仁ゆえ、宜しゅう御座いました。宇喜多大和守家の離反も上手く行き、三郎右衛門の兵を退かせる事も出来ました。これで宇喜多家の勢力が増す事は阻止出来たのではないかと。五郎左衛門殿も殿にくれぐれも宜しくとの事に御座います」
弥八郎はドヤ顔で報告してくれる。
そうか、宇喜多大和守家の離反はお前のせいか…
しかも、これって俺の名前出してるよね?
ここでもし五郎左衛門を見捨てたりしたら、俺の名前を出して非難してくるんじゃね?
五郎左衛門を助けても見捨てても、直家に恨まれるよなぁ…
ここはどうにかして最小限の傷で切り抜けたい。
ここは…
「弥右衛門殿!大和守家の事は御任せ致します!某は三郎右衛門殿が退いた為に出来た穴を埋めるべく、宇喜多家に代わって備前明石家と対峙して参ります!早くに和睦を為す為にも浦上家に圧を掛け続けねば!」
よし、逃げよう!
大和守家の処遇を決める話し合いの中に俺がいなければ、何とかなるかも…




