299 備前侵攻
赤穂郡の南半分にある城に対して、浦上久松丸、小寺官兵衛、俺の連名で織田家に降る様にとの書簡を送る。
赤穂郡全ての城に対して戦を仕掛けても時間が掛かるだけなので、湊のある南側の土地だけを攻略していく。
浦上家の正統後継者である久松丸と、守護である赤松家の有力家臣である小寺家の官兵衛、それに幕府からの援軍である俺。
降伏する理由が3つもあれば、どれかヒットするんじゃないかな。
あっ、後は赤松政秀も浦上宗景も頼りにならないって事もあるな。
現に我が軍は、坂越湊や加里屋城など然したる抵抗もないまま制圧し、そのままの勢いで一気に備前国片上付近まで攻め込め込もうとしているのだから。
坂越で水軍と合流すると、これまでに制圧した湊から搔き集めた舟に兵を詰め込んで、海から備前国に攻め込む。
梶原平左兵衛の話では、ここ坂越から備前片上までの海は、鹿久居島を始めとする島々の陰になっているお陰で波も穏やかだという事なので、俺達は幾つも峠越えをしなければならない大変な陸路ではなく、快適な船旅を選んだ。
まさか森家の兵ともあろうものが、舟に乗れないって事はないよな?
昔から俺の家臣には水練を課しているが、俺が京に居て領地に帰ってないのをいい事にサボったりしてないよな?
まあ、どうしても海が無理って言うんなら峠越えで日生を通って片上を目指してもらったけどな。
「三郎左衛門、只今戻りました」
無事何事もなく片上に上陸すると、情報収集の為に播磨へ向かわせていた三雲三郎左衛門が、男を一人伴って現れた。
同じく摂津にいた頃に播磨へ情報収集に出した伝内、彦市、弥八郎の三人には既に会っているが、三郎左衛門は今まで何をしていたんだろうか?
「よう戻った。して、その者は?」
「はっ、浦上家重臣の日笠次郎兵衛尉殿の息、源左衛門殿に御座います」
浦上家の日笠…日笠頼房の事かなぁ?
「日笠次郎兵衛尉の次子、源左衛門に御座る」
何で日笠頼房の子供が、ここにいるんだろう?
「何故、源左衛門殿が居られるのだ?日笠家は我等に合力して頂けるのであろうか?」
「いえ、父は与次郎様を裏切る気など毛頭御座らぬ。ただ父は久松丸様が立たれると聞き、旧主の恩から某に久松丸様に御仕えせよと」
源左衛門の方に目を向けて尋ねるが否定される。
「であろうな。浦上家が兄弟で争っておった頃、次郎兵衛尉殿は美作守(浦上政宗)殿に御味方し、最後まで与次郎(浦上宗景)殿に抗し続けられた忠臣と聞く。されど今は与次郎殿に仕える事になった次郎兵衛尉殿が、旧主の孫の為とはいえ、主である与次郎殿を裏切るとは考え辛い」
一応、好感度稼ぎに親父さんを誉めておくとしよう。
親子の仲が悪かったり、実は裏切りを企んでいたりすると逆効果にもなりかねないが、源左衛門の誇らしげな顔を見れば、どうやら大丈夫だったみたいだな。
「某が父に命じられた事は、あくまで久松丸様に仕える事に御座る。織田家の為でも、況してや小寺家の為でも御座らぬ」
あくまで自分は浦上家の為に戦うというスタンスは崩さないという事ね。オーケーオーケー。
「久松丸殿には必ずや御家を再興していただく。これを違える事は御座らぬ。何れだけの領地を得られるかは、某の領分に御座らぬ故に御約束致しかねるが、御家再興に関しては天地神明に懸けて御誓い致す」
俺にそんな権限は無いので、神様に誓ったとしても出来ない事は出来ないが、そう言っておけば御家再興がなった時に俺への信用度や好感度が上がるからな。
出来なかったら知らんぷりすればいいや。
どうせ、そんなに播磨に来る事もないだろうし。
そのうち浦上家や宇喜多家のせいで、それどころじゃなくなるでしょ。
「くれぐれも宜しく御願い致す」
源左衛門も可哀想に。
誰の目にも傀儡なのが丸分かりの久松丸に仕えなきゃならないなんてなぁ…。ファイト!
「三郎左衛門、宇喜多家の動きは如何なっておる。それに弥八郎は、今何処に居るのか?」
源左衛門の話は一先ず置いておいて、宇喜多家が何処までやって来ているのかだな。
それに弥八郎は何処へ行ったのか。
「只今宇喜多家は、備前明石家との戦になっております。しかし、備前明石家の方が押されておりますので、時間の問題かと」
頑張れ!明石家!応援だけはしているぞ!
「弥八郎殿は、伊部浦の鷹取家を味方につけると」
「鷹取家か…」
鷹取家?知ってる様な、知らない様な…聞いた事があるような気はするんだが、思い出せないな。
でも、弥八郎が調略に向かうんだから、重要な家なんだろう。




