298 那波到着
小寺官兵衛の協力を得た俺達は、陸海の二手に分かれて西へ侵攻する。
舟で室津を攻める梶原平三兵衛の梶原水軍と小寺家の吉田六之助が率いる飾万津の水軍、陸路で赤松政秀の家臣が守る梶山城を攻める俺率いる織田軍と官兵衛の姫山衆。
室津へ続く街道が通っている梶山城が残っていると、室津の防衛に不安が残るので、楽に落とせるなら落としてしまいたい。
梶山城の城主である丸山河内守とやらは、浦上家との戦に駆り出されていて、現在城にいないらしい。
本来なら小寺家に備えて兵を置いておかないといけないんだろうが、今の赤松政秀にはそんな余裕もない様だ。
龍野赤松家も、援軍が到着しなければ負け確定の結構危ない所まできているな。
まあ、援軍自体は直ぐに送られるはずだから、政秀が早まって降伏しなければ大丈夫なはず。
そんな事より梶山城の方だが、城主がいない事もあって既に楽勝ムードだ。
とはいえ、ウチの兵は城を囲んでいるだけで、表立って戦っているのは官兵衛の兵だけどな。
ウチの兵達は、浦上家の家紋である檜扇の旗を掲げて浦上家の振りをしながら、官兵衛の兵の後ろをくっついて行っているだけだ。
浦上久松丸が小寺官兵衛の甥なのは、敵味方問わずこの辺りでは広く知られている事で隠すだけ無駄だし、小寺家が久松丸を支援するのも頷ける話なので、目立つ役目は官兵衛に任せる。
俺達が織田家の者だとバレなきゃいいんだ。
この城の戦いだけは目立つなと於勝等三馬鹿に念押しして、俺の側に置いて見張っている。
次の戦いは普通に戦わせてやるから、今回は我慢する様に。
因みに島田弥右衛門殿は御着城に残り、他の勢力との折衝に当たってくれているので同行していない。
「傳兵衛殿、城より降伏を申し出ております。そのまま城を明け渡し、龍野へ去るならば認めようかと思いますが宜しいか?」
官兵衛から梶山城が降伏してきたと知らせがあった。
「早くにけりが付く事は良い事に御座る。後々官兵衛殿の都合の良い様になされば宜しかろう」
この辺りは赤松政秀の領地だから、戦後に小寺家が奪うのか、政秀に返すのか、どっちになるか分からんし、官兵衛の好きにしたらいい。
偽装浦上家の俺には関係ないね。
「では、その様に。で、次の長谷山城なのですが、素通り致そうかと思うております。長谷山城は郡境の要所故、多くの兵が残っております。落とせぬ訳ではありませぬが、落とす迄にかなりの時を要しましょう」
龍野城の南にある長谷山城は、龍野赤松家の年寄である江藤越中守清好という人物が守っているらしいのだが、流石に龍野城の直ぐ近くにある要所なので守りが固い…そうだ。
時間が惜しい俺達は、その長谷山城をスルーして龍野赤松家の勢力下を抜け、現在浦上家が押さえている那波の湊を奪いに行く。
長谷山城に差し掛かると、俺達は森家の旗を掲げて援軍ですよという顔をして、堂々と城の近くを通り過ぎる。
城を通り過ぎると、先行する官兵衛の兵と、ゆっくりとその後を追う森家の兵に分かれて、湾内の島に築かれた大島城を目指す。
先行する官兵衛と別れると、那波近辺にある大島城、下土井城、光明寺城の三城に浦上久松丸の名で降伏する様に書状を送りつける。
森家の兵が那波に到着する頃には、官兵衛率いる姫山衆と、室津の占拠を終え、続いて相生湾にある湊の制圧も終えた水軍が合流し、勝ち目なしと見たのだろう大島城の海老名太郎左衛門と下土井城の岡豊前守は降伏していた。
岡豊前守?
もしかして、宇喜多三老の岡家利か!
…えっ、違うの?吉政?誰だよソイツ…
光明寺城のみは降伏勧告を無視したが、まあいいだろう。
戦などで時間を取られたくないから無視だな。
この辺りの海岸線は全部押さえる事が出来たから、放っておいても大丈夫だろう。
大島城へ到着すると、官兵衛に出迎えられる。
「ここまでは順調に御座るな」
俺の言葉に官兵衛は頷く。
「左様に御座るな。では、これより浦上宗家は織田家に臣従致す」
よし、ここまでは予定通りだな。
赤松政秀と浦上宗景が戦っている隙をついて浦上久松丸が蜂起。室津や那波などを支配下に収めた後、やって来た織田家に臣従する…という茶番。
バレバレかも知れないが、一応体裁だけは整えておいた方が良いと思って茶番を仕掛けた。
後で赤松政秀に取られた領地を返してくれと言われても、浦上宗家から譲られたものだと拒否出来る様に。
出来れば上手く立ち回って、周りからのヘイトが小寺家に向かう様に仕向けられるといいなぁ。




