1-⑦
「まず、パラレルワールド、という言葉を聞いたことはあるか?」
少年が中央の椅子に座り、ゆっくりと話し始めたのは、私がその椅子の前にできた卵型の椅子(座るところがふわふわで気持ちがいい)に座ってすぐだった。
ちなみに先ほどまでなかったはずのこの椅子は、少年がそこへ手を伸ばした瞬間にあらわれたもので、すでに驚く元気も残っていなかった為、促されるまま座ってしまった。
「たしか、いくつもの未来につながる世界が自分の知らない場所に存在して、その世界のことをそれぞれパラレルワールドって言ったような…」
たしか何かの漫画か何かで、そんなような話が出ていた気がする。
「まぁ、そんなところだ。つまり、同じ時間を過ごすいくつもの世界が存在しているということで、ここはその世界の1つというわけだ。ここまでは、分かるか?」
「…」
『分かるか?』と、聞かれても…
パラレルワールドなんて漫画や小説の話のはず…信じられるはずがない…
(けど)
「今ここで起きていることを思い返せば、信じずにはいられない…だろう?」
「!」
少年はまるで思っていることを分かるような言い方だ。
「…はい。」
どうしてか知りたいところだが、とにかく話を全て聞いたほうがよさそうだ。
ここは、うなずくしかないのだろう。
「この世界と、未知が暮らす世界は時を同じくして誕生し、そして同じ時間軸に存在する世界となった。そして、大きく異なる世界となっている理由は、未知の世界に科学を糧に生きているように、こちらの世界では魔力を糧に生きている、ということだ。」
「魔力?」
「そうだ。魔法と、いわれることもあるようだ。」
(魔力に魔法…)
ますます物語の世界だ。
「この世界に生まれた人間は、多かれ少なかれ魔力を持ち、それを使いこなしながら生活をしている…様々な能力を、な。」
(…?)
『様々な』そこだで、強調していたような…?
「つまり、未知の質問『ここはどこなのか』の答えは、未知の世界とは違う、けれど平行して存在する異なる世界、まぁ、チキュウとカタカナで表現するのがわかりやすいか」
「…チキュウ」
「そうだ。」
「でも、どうしてそんなところに私が来てしまったんですか?」
漫画や小説のようだ、なんて思うことはやめにした。
すでにここに私がいるのだ。
それを認めない限り、話が進まないと判断した。
「現実から目をそらさない、いい心がけだ…まぁ、流れる血の記憶のためでもあるか。」
「え?」
「いや、次の質問だな。『どうしてここへ未知がきたのか』だったな。それは」
「鬼門の裂け目に落ちたから、ですよ。」
それは、まったく違うところから聞こえてきた。




