1-④
気が付くと、私は狭い部屋の中にいた。
なんだか小説の冒頭文のようだが、今の状況を正確に表す言葉だろう。
(どうなってるの…)
私は確かに公園のベンチにいたはず。
それがどうして急にこんなところに。
(夢…?)
そう思いたい気持ちでいっぱいだったが、あいにくとつまんだ頬は痛かった。
たとえば私が夢遊病だったとしよう。
あのベンチでいつの間にか寝てしまい、寝ている間に別の場所に移動してしまった。
うん。可能性としては低いがなくはない。
けれどそれすら否定せざるをえないのは、この場所だ。
周りはすべて石づくりで、天井までの高さは軽く10メートルはこえているだろう。
筒状の形をしていて、そう、たとえるのならばあれだ。
外国のお城のすぐ横にあるような塔のような建物の中にいる感じなのだ。
電気のようなものはなく、少し上のほうにある小窓(といっても、ただ石がぬけているだけだが。)から明かりがさしこんでいるだけだ。
しかもいつの間にか夜になってしまったらしく、月明かりなのだろう。
とにかくここは薄暗い。
しかも、ここに置いてあるにはベットと小さな机、いすのみ。
「何なの…これ?」
と、声にだした瞬間
「ん…」
「!!」
何かが聞こえた。
何…?
分からないことだらけで、鼓動だけが早くなり、嫌な汗がにじみ出る。
「…うぅ…」
「!」
また聞こえた。
どうやらそれは、ベッドの奥、私からは死角になるところから発せられているようだ。
「…」
パニックになりかけるが、なんとかこらえ、ゆっくりと足を動かす。
そろり、そろり…音をたてないように。
泣きたい気持ちを押さえつけるように
そうして、ベッドの淵をたどり、逆サイドを覗くと
「え…ちょっと」
そこには、人が倒れていた。
どうしようとか思っている場合ではなく、とにかく近づいた。
「大丈夫ですか?」
自分のほうに向かせようと揺さぶると、
「…っ」
その手を拒否するように叩かれた。
そしてこちらを向いたのは、私と同じくらいの青年だった。
服はなんだかチャイナ服を思わせるもので、赤地に何やら模様が入っていた。
「…はぁ」
「あの!」
意識はないらしく、苦しそうに唸っている。
手を払ったのもおそらく無意識だろう。
とにかく、誰かを呼ばなければ。
「そだ!携帯!」
ポケットに入れていたそれを取り出すと、右上に圏外の文字
「~!!」
こうなったら外に出て助けを呼ぶしか…
そう思ったとき初めて気づく。
「なんでドアがないの?」
そう、この部屋にはドアがなかったのだ。
では、私はいったいどうやってここに入ったのだ?
「…っ!」
青年が苦しそうに胸をつかんだ。
そうだ。こんなことをしている場合ではない。
どうすればいいのだ。
この苦しみ方は尋常ではない。
もしかしたら心臓発作?
私のほうがパニックに陥りそうになったとき
「…なに、これ」
青年の首元に青い光のようなものがにじんでいるのだ。
ぼんやりと、けれども錯覚ではないこの光
目を細めるが、消えることはなかった。




