1-⑯
その言葉は独り言のようなささやきだった。
「君の出番ですね。」
そして次の言葉は、彼に向けたものだった。
「嫌だね。」
彼の言葉に迷いはなかった。
(嫌だねって…)
断ったってこと?
「ちょっと!これ、どうにかしてくれないの?」
なんだかわからないが、この鬼門とやらをどうにかするためには彼の力が必要なようだ。
それを断った!?
彼にすがるも
「俺には関係ない。」
そういってクルリと方向転換してしまった。
『グ…ギギギギ…』
(!)
声が先ほどより大きい。
まるでこちらにち近づいてきているようだ。
「彼女が死ねば、あなたも死ぬ。そう知ってもあなたはここを離れられますか?」
「「え?」」
その言葉に答えたのは、彼と、私
(なに?…どういうこと?)
彼女、とはおそらく私のこと
そして、あなた、は彼。
つまり、私が死ねば彼も死ぬ
そういうことを言っているのだろうか?
「どういうことだ?」
その言葉に彼も足を止め、振り返る
「吸魔鬼と契約鬼の契約です。今ここであなたが去れが、鬼が出現するでしょう。僕は戦闘には向きません。自分を守るので精いっぱい。彼女は襲われ命を落とすかもしれません…」
「…」
何やら恐ろしすぎる話に声が出ない。
「…ちっ」
少しの間の後の舌打ち。
不本意そうだが、彼は再び鬼門と向き合った。
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彼が鬼門と向き合い、黙ってそれを見つめる。
そして、ゆっくりと右手の平を鬼門に向けた時。
その手にあの、アオの光が集まるのが分かった。
それが大きな光の玉になり、ゆっくりと小さくなった。
いや、小さく収縮した、といったほうがいいだろう。
光の密度が濃くなったような気がしたからだ。
そうしてそれを
「はっ!!」
鬼門の中に投げ込んだ
すると…
バァァァァァァァンッ!!
(!!!)
青い閃光と爆発音
そのあとくる煙と風
あまりのことに、叫ぶこともできなかった。
「ど…うなったの…」
煙が晴れ、そこには同じように鬼門があったが、中は暗闇のみであの赤い目は消えていた。
「さすがですね。」
コンジキはさも当たり前といったように鬼門を見つめ
「では、ここからは僕の仕事ですね。」
そういって手を上にかざすと、何もない空間からコンジキの身の丈ほどの銀色の棒が現れた。
片方に穴が空いていて、そう、まるで長く大きい縫い針のようだった。
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コンジキの動きは優雅で、きれいだった。
夜空をフワリとジャンプしたと思うと、その手から金に光る糸が現れる。
そしてその糸と針をつかい踊るように鬼門を修復したのだ。
まるで、破れた布を針と糸で縫いあわせるように。
今までの恐怖などあっという間に消し飛んでしまったかのように。
1つの舞台を見ているように、私はコンジキから目が離せなかった。




