1-⑬
フワリと涼しげな風が吹き、髪が舞い上がる。
ショートボブにそろえた髪を耳にかけ、青年を見ると、青年の髪も同じように舞っていた。
サイドだけ長く、後ろに行くにつれ短くカットされた黒い髪。
けれど、宙に舞ったその髪は青色の色を放っていた。
髪が青いわけではない。
さっきと同じだ。
首筋から出ていたあの光。
それが、首だけでなく今は、全身から感じられた。
「あ…」
風がやむと、自然と目が合った。
「…」
「えぇぇぇと…何やってるの?」
何を話すかなんて考えていなかった。
ここで彼と会うなんて想像もしてなかったから、当たり前と言っちゃ当たり前だ。
でも。
(やっぱり怖くない。)
私を見る、というか睨む彼は確かにさっき私の首を絞めようとした人のはずなのに。
なぜだろう。
じっと、目を見つめることができた。
「…」
私が何も言わなかったためか。
彼は、気まずそうにふっと目をそらし、背を向けようとした。
「ちょっと待って!」
思わず服の裾をつかんでしまった。
「…なんだよ。」
「あ、ちょっと聞きたいことだあって。」
思いっきり不信の目で見られる。
「…お前、さっきのこと覚えてないのか?」
首をつかまれた時のことだろうか?
「ふつう、あんなことされたやつに近づきたくもないだろう」
「そのはずなんだけど…なんか大丈夫みたいなんだよね…」
もしかしたら、あまりにおかしいこの状況で私の感覚も壊れてしまったのかもしれない。
「それに、私、もう2回も君に触ってるわけだし。」
「…」
「さっき、えぇと、神官様?が言ってた契約鬼とか吸血鬼のこととも関係あるのかな…ってあれ?」
ふと気が付いて、彼を頭から足までよく見る。
(あれ?)
さっきまでの青い光が消えている。
今、青い光が輝いているのは彼の左目だけだ。
「…離れろ」
「あ、ごめん」
どうやら、もう一歩彼に近づいてしまっていたらしい。
一歩下がったのは彼だった。
ヒュウ…
もう一度優しい風が吹いた。
「ねぇ、君は私がどうやったらこの世界から、元の世界に帰れるか知ってる?」
この時の言葉は、私が一番知りたいことだった。
「吸血鬼と吸魔鬼ってなんなのかな?鬼門?縫い師?神官?チョキュウ?…さっぱりわからない。」




