1-⑪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『とにかく今日はもう遅い。続きは明日にしてゆっくり休め。』
私が放心状態から脱出できなかったせいだろう。
少年がそう言うと
『では、部屋に案内しましょう。』
そう言ったのはコンジキだった。
そして、今、私はコンジキに案内され、エレベーターでのようなもので下降しているようだ。
さきほどの部屋にあったの扉はひとつ。
それが廊下へとつながるものではなく、3畳ほどの四角いスペースであった。
『エレベーターのようなもの』と表現したのは、本来あるべきボタン類は一切なく、扉も閉じるとその形が消え、ただ感覚として下降しているのだろうと感じていたからだ。
「あの…」
私は、疑問を口にした。
「なんでしょう?」
コンジキは笑みを崩さず、しっかりと目を見て答えた。
(このキラキラオーラなんとかならないかな…)
「あ、さっきのってどういうことなんですか?」
「さっきの、というと」
「ほら、『名前は捨てた』って。」
思い出されるのは、少年との最後の会話
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『あ、あの、まだ名前聞いてなかったですね。なんて言うんですか?』
『……あぁ、この役目を受け継いだ時に名前は捨てた。今は皆私のことは『神官』と呼んでいる。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの時、ほんの一瞬瞳に動揺が走ったのは、気のせいだっただろうか。
「あの方は、この世界で最も強い魔力を持たれるお方なんです。この世界で唯一無二の存在、その方を私たちは皆『神官様』と呼び、絶対的な信頼を寄せているんです。」
「え?だって、あの子まだ子どもじゃ…」
話し方はだいぶ大人びていたが、おそらく私よりも幼い年齢だろう。
「関係ないんですよ。その力を持つものが神官となる。それがたとえ、まだ少年と呼ばれるものであっても。」
「…」
(てことは、この世界で一番偉いのがあの子ってこと…?)
なんて世界なのだ。
「この世界にとって魔力の力は絶大なんですよ…まぁ、あの子は無理に大人になろうとしすぎるとことがあるんですけどね。」
(…あ)
そう言ったコンジキの笑みは、今までのものとは違い、少し困ったようなだけど大切なものを思い浮かべるような、どこか複雑な表情だった。
(それに、『あの子』って)
普通、唯一無二の存在とまで言った人のことを『あの子』なんて言うだろうか?
「あぁ、すみません。疲れているところをさらに混乱させてしまって。とにかく今日はゆっくり休んでください。」
そうコンジキが言った瞬間、再び扉が現れ開いた。




