1-⑩
「それが、未知の力だ。」
「は?」
他人の首筋にキスをすることが、私の力とでも言うのか?
(それって、ただの変態なんじゃ…)
「そうではない。」
おそらく私の考えが分かっていたのだろう。
少年が呆れたように言った。
「吸魔鬼の力は、強すぎる魔力を吸いとり己の力とする力だ。」
「魔力を…吸う?」
「そうだ。覚えがあるだろう?」
「…」
『あの』行為がそれを示すのだろうか。
「あいつの周りに何かが見えたか?」
「…青い光のようなものが…今は見えないけど…」
「その光が、あいつの漏れ出た魔力だ。それを無意識のうちに感じ、吸い取り契約を結んでしまったのだな。」
「契約?」
そうだ、何度となくその言葉が出たが、やっと何のことかだ聞けそうだ。
「強すぎる魔力を持ち、その力をコントロールできないものを魔鬼と呼ぶのだが、吸魔鬼が力を吸い取ることができるものは一生のうちにたった一人。そのものの力を口にすることで、その契約は結ばれ、その魔鬼のことを契約鬼と呼ぶようになる。」
(…え?)
と、いうことは…
「もしかして、さっきのって」
「そうだ。未知の意思とは関係なく、未知とあいつは契約を結んだのだ。」
(そんな…)
ダンッ
突然響いたその音は、今まで黙って聞いていた青年が思いっきり壁を叩いた音だった。
しかも、おどろくべきことに壁には大きなヒビ
(なんて力)
ゾクリと体が震えたが、同時にざわついた。
「んなもん…俺は…認め…っ!」
突然青年が胸を押さえて膝をつく。
「あっ…くそっ」
「興奮するなと、言っているだろう?」
少年が静かに言った。
(苦しそう…)
そう思うと同時に、足が青年の方へと向かう。
怖いはずなのに、近づいて、彼のそばへ同じように膝をついた。
「来ん…なっ」
さっきと同じように手を振り払われたが構わず、手を伸ばす。
青年の首の周りには、再び青い光が生まれていた。
こうしなければいけない。
怖いとか、なんでだろうとかそういうことよりも、先に体が動いた。
再び、首元に唇を寄せた。
(吸血鬼みたいだ。)
信じられないことをしているはずなのに、どこかで冷静な自分が言った。
体が熱くなり、そしてそれがゆっくりと体になじんでいくのが分かる。
「はっ…はっ…はぁぁぁ…」
青年は背を壁につけ、ゆっくりと息を整えている。
どうやら、楽になったようだ。
「どうだ?認めることはできたか?」
「…」
少年の声に、返事をすることはできなかった。
それは、否定ではなく肯定。
いくら考えても否定材料が見つからない。
今の行動を、冷静に考える自分を認めることができた時点で、
私は、私のこの力を認めることしかできなかったのだ。




