1-⑨
「では、さきほどの続きだが」
そう言って、少年は話を再開させた。
「この世界には、科学と魔力の違いから生まれた存在がいくつもあるのだが、その中でも特に異質になっているのが鬼門の存在だ。」
「鬼門…?」
「そうだ。空間の歪として生まれるその存在は、厄介なことにいつどこで生まれるかわからず、それを止めることはできない。」
「それがあることで困ることでもあるんですか?」
「大問題だ。その中に落ちたものはまず戻ってくることはできない。永遠に閉じ込められることになる。」
確かにそれは大問題だ。
(…あれ?でもさっき)
私の中に先ほどの2人の会話が思い出される。
「たしか、コンジキさん、修復が完了したって。」
「そうだ。生まれることを食い射止めることができない分、我々はそれを修復していくしかないのだ。」
「その役目を仰せつかっているのが、僕ら縫い師というわけです。」
コンジキが言った。
「縫い師?」
「そうです。持っている魔力を糸状にして開いてしまった空間を縫い合わせるのが僕ら一族の力です。」
「へぇ…」
「そして、いくつかの鬼門は別世界とつながっている。という伝わりがあったのだが、どうやら本当だったようだな。」
再び、少年が話をつないだ。
なるほど。
どうやら、私はその鬼門とやらに落ちてここへきてしまったようだ。
「それじゃあ、私はたまたま出来た鬼門にたまたま落ちったってこと…?」
「たまたまではない。必然だ。」
あまりにもきっぱりと言われる。
「どうして?」
「未知、お前が吸魔鬼と呼ばれた一族の子孫だからだ。」
「は?」
「もっと正確に言うならば、お前はその一族の力を完全に宿している先祖返りと呼ばれる存在なのだよ。」
頭がクラリとし、考えることを拒否しそうになることを必死に食い止める。
「えっと…私の家は普通のサラリーマンのお父さんと専業主婦のお母さん、おじいちゃんもおばあちゃんも近所に住んでて、特に何か変わったところがあるなんてことは全然なくて。」
「当たり前だ。吸魔鬼の存在はに500年も昔に滅びている。ただ、滅びる寸前に1人、鬼門の中に落ちたものがいることが確認されている。その者がおそらく未知の先祖にあたっているのだろう。」
「何…それ…」
「鬼門は、力に引かれて存在を表す。おそらく未知の力に鬼門が引き寄せられたのだろう。」
「私の力って、私は特別何かができるわけじゃ」
「先ほどのあいつと会ったときに妙なことがなかったか?」
「え?」
あいつ
それは、不機嫌そうに座っているあの少年のことだろう。
(あ…)
一瞬目が合うが、すぐにそらされてしまう。
「そういえば…あの子お首元から青い光が見えて…」
そうだ、気が付くとその光に唇を寄せて…
(うわぁぁぁあ…っ!)
今考えると、なんてこっぱずかしいことを…!
「何か、思い出したようだな。」
「…」
恥ずかしくて、口には出せなかった。




