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コンビニで貰った特別クーポンを使ったら大変なことになった もーっと恋愛編  作者: 熊出


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9/40

WBC開幕前夜4

 上手く回らない時はとことん回らないもので、強化試合、マウンドに上がった辰巳は二回に満塁の危機に陥っていた。

 相手はNPBの覇者ソフトバンク。

 確かに強打者揃いだが、普段の辰巳なら序盤から追い込まれるような相手ではない。


 直接渡米が当たり前になった今の時代、NPBの力は落ちてきている。

 その中で、メジャーで第一線で戦っている辰巳が一巡目から捕まるというのは中々ないことだ。

 それが、起こっている。


(所詮十勝十敗の投手か)


 自嘲的にそう思う。

 それはもちろん、凄いことなのだ。

 岳志時代、渡米してメジャーに残り続けられない選手も何人もいた。

 そんな中でイニングイーターとしてフル稼働している辰巳の実力は十二分と言える。


 しかし、春武程ではない。


 今日の不振の原因は単純だ。

 腕が振り切れていない。

 思い切りがない。

 自分の指に力が伝わっていない。


 落ち着かない制球。

 甘い球を痛打される。または四球で歩かれる。

 流石は長年NPBで君臨してきたソフトバンク。基礎が徹底できている。


(ああ、いっそ降ろしてくれ――)


 天を仰ぐ。

 心の中は今もぐしゃぐしゃだ。

 ここまで自分が翔吾に心をかき乱されるとは思ってもいなかった。



 こんな調子じゃ、WBCの本番になっても……。

 最悪の状況をイメージして背筋が寒くなる。

 各国メジャーリーガーが増えている今の時代、どの国も油断できない。

 いっそ監督に言って降ろしてもらうか?


 そこまで悪いイメージが働く。

 勝負の世界に長年いる者にとっては信じがたいメンタルの崩れようだ。


「権藤辰巳!」


 女の声が響く。

 ベンチを向く。


 翔吾が、唇の端と端を指で持ち上げていた。

 そして、言う。


「百戦錬磨のメジャーリーガーだろ!」


 ああ。

 やはり思う。

 自分の力は翔吾と積み上げてきたものなのだと。


 微笑む。

 投球モーションに移る。

 指に力が伝わった。


 その後、辰巳は相手を三者連続三振に切って取った。

 跳ねて喜ぶ翔吾を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。



つづく

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