WBC開幕前夜3
翔吾と辰巳はいとこ同士で幼馴染だ。
幼い頃はそれこそ一緒に風呂に入ったし祖父の家で夜通し会話をした。
小学校時代から同じチームで野球をしていたし、日常的に一緒だった。
春武が、現れるまでは。
「けど、私、春武と寝たよ?」
翔吾の言葉が脳裏に蘇る。
(どのタイミングでだ……?)
そんなことがぐるぐる頭を回る。
中学校時代から春武には愛という恋人がいた。
その頃はまだ辰巳と翔吾の歩調は一緒だった。
辰巳が春武をライバル視するようになってから袂を分かった感じだ。
そして、春武と翔吾は同じ高校へと進学した。
三年、負け続けた。
その後のメジャーでも自分は十勝十敗を繰り返すような成績を出している横で春武はサイ・ヤング賞を取ったりしている。
よりによってなんで春武なんだ。
そんなことを思う。
「あー……」
その日の酒は不思議なことに染みた。
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どうしてあんなこと言っちゃったかなあ。
翔吾はそんなことを考えていた。
春武と寝たのは、もう十年近く前の話だ。
魔が差した、というやつで何度か関係を持った。
男社会に一人だけいる翔吾だ。
それはもう引く手は数多だ。
チームでも粉をかけられているのかな? と思うことは多々ある。
それでも、キスすらしたことがない。十年近くも。
辰巳となら。
良い夫婦に慣れるだろうと翔吾は思う。
けど、自分は言ってしまった。決定的な一言を。
どうしてあんなこと言っちゃったかなあ。
そんなことをやはり思ってしまう。
テラスに立ち、グラスを揺らす。
その日の酒は、やけに染みた。
そして、強化試合の日が近づいてきた。
先発は辰巳。
翔吾は守備固め代走要員としてベンチだ。
つづく




