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コンビニで貰った特別クーポンを使ったら大変なことになった もーっと人生編  作者: 熊出


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英雄の死4

「頑丈な結界だ」


 親父がぼやくように言う。

 そのとぼけた様子も若者のようだ。

 違和感を覚えつつも頷く。


「ああ。難解な術式だ」


「今までバレなかったわけだ。こいつはここで、傷を癒して力を蓄えていた。多分……神格」


 息を呑む。

 神格との戦いは一度だけ経験がある。

 その時は、模造創世石の力を使って対抗した。


 しかし今、模造創世石は京子の蘇生に消費された後だ。

 手元にはない。


「私に任せて。てかいい加減降ろして」


 春歌がぼやくように言って、木の根元に駆け寄る。

 そして、両手を当てた。


「確かに、難解。けど、天才の私には簡単なパズル」


「流石だね」


「何者だ? この姉ちゃん」


 親父はぼやくように言う。


「親父」


「俺にまだ息子はいない」


 胸にその一言が突き刺さる。

 認知症。

 わかっているのだがまだ馴染みきれない。


「遥香を探しているんだ。遥香が何処かに行ってしまった」


「お袋なら、家に……」


 ああ、言葉が通じない。

 この人は、若い頃の記憶を生きている。


 そこに、春武も、老いた遥香も存在しないのだ。


「結界、解くよ。臨戦態勢に移って」


 言われて、意識がそっちに持っていかれる。

 親父は六階道流古武術の構えを取って言った。


「ああ、頼む。結界の解放と同時に決闘のクーポンを展開する。相手は神格であることを想定しろ」


 てきぱきとした指示。

 燃え尽きかけた灯火の最期の輝き。


 春歌は結界を解いた。

 同時に、白い世界が周囲に広がる。


 決闘のクーポンが展開されたのだ。

 相手のオーラに気圧される。


「……これは」


 春歌が腹をくくったように低い声で言う。


「神格」


 その時だった。

 親父が縮地を使った。


 その次の瞬間、親父の腕は相手の腹を貫いていた。

 相手は目を見開き、呟く。


「馬鹿な……」


 春武と春歌は唖然としながら、着地する親父を眺めた。

 親父は振り返り、微笑む。


「さあ、帰ろう」


「馬鹿なああああああ」


 敵はそう叫びながら光になって消えた。

 決闘のクーポンが消える。


「失礼します」


 春歌が申し訳なさげに言って、親父の首から神秘のネックレスを外す。


「欲しいのか? 良いけど。女の子がつけたほうが似合うもんな」


 これがどれだけ大事なものも忘れたのかよ、親父。

 怒鳴りそうになりつつも、堪える。

 そして、木を殴った。

 木は折れて、倒れた。


「おいおい、酷いことすんなあ。そいつだって長い時間を生きたんだぞ」


 ここからが地獄だ。

 親父のとぼけた調子は、その象徴だった。

 春歌は、気遣わしげにこちらを見ている。



つづく

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