脇役の花道5
シカゴの今は何日の何時何分だろうと思う。
こちらはまだ朝だ。
しかし日曜日である。
日曜日の朝から仕事とはどんな内容だろうと思う。
(なんかブラックの臭いがする……)
胡散臭く思うのも当然だろう。
しかし、興味本位でそこに向かうことにした。
辿り着いてみると、そこは小学校だった。
看板が建っている。
この小学校は令和十年に市内の中学校と合併したので廃校となりました、と。
なるほど、子供が少なくなってきたから同じ校舎を共有しているということか。
狐に化かされたような思いでしばしグラウンドを歩く。
不審者として捕まらないだろうな、なんて想像する。
オジサンとは存在しているだけで罪なのだとは誰の台詞だったろう。
誰だって中年になるのに酷い話である。
(まあまだお兄さん、だよな)
苦笑交じりにそう思う。
バスが近づいてきた。
降りてくるユニフォーム姿の小学生達。
その視線がこちらを捉えて硬直する。
「誰だろう」
「なんか見たことあるような……」
「かなり筋肉質だなあ」
ざわつきから会話が漏れ聞こえる。
「雄一選手ー!」
バスを運転していた男性が最期に降りてきて駆け寄ってくる。
「元選手、ですよ」
薄々事情が見えてきた。
苦笑交じりに返事する。
「今日はご指導いただけると言うことで、ありがとうございます」
「いえ、基礎的なことなら。後栄養学の知見も多少はあります」
「心強い。座学の時間も必要ですな」
「晋太郎の用意してくれた仕事はコーチ、ですね」
男性は、満面の笑顔で頷いた。
「是非、うちのコ達に指導を」
「お安い御用で」
そのうちこの中の九割以上は壁にぶつかるだろうに。
時間の無駄だ。
そう思いつつも、子供には優しくしようと決めている。
指導には熱が入った。
そして、自分の指導をする子供達の真っ直ぐな目。
射抜かれる思いだった。
楽しそうだった。
野球が、あれほど苦しい野球が、呪いのように思えた野球が、楽しそうだった。
そうだ、自分も昔は、希望に溢れていた。
(なんだよ、俺……)
ボールを握りしめて見つめる。
(野球、好きなんじゃん)
そうだ、だからプロの一軍になれるまでに至ったのだ。
いつからか停滞してしまっていただけで。
そう実感しただけでも、価値のある一日だった。
つづく




