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コンビニで貰った特別クーポンを使ったら大変なことになった もーっと恋愛編  作者: 熊出


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二度目の二十代4

 あずきは体重計を見て顰め面になった。

 体重が落ちている。三キロ。

 走る週間は変えていない。食べる量も変えていない。

 しかし、痩せる。


(恐るべし、二十代の代謝……)


 さて、今日は刹那とのコラボである。

 入念にエイミーに言い聞かせる。


「頼むからバチバチ喧嘩だけはやめてね。ギスギスも駄目」


「わかってるわよ。プロだもんね」


 はいはいとばかりに聞き流すエイミー。

 昔は親のように慕ってくれた彼女も今では同格と言った感じ。


 そしてついに、当日がやってきた。


「あずきとー」


「アリエルとー」


「エイミーとー」


「え、私?」


 刹那が焦ったように声を上げる。

 よし、音声は問題ない。


「そうだよ、だから繋げたのに」


 エイミーがからかい調子で言う。


「こういうのって普通ゲスト枠で紹介されると思う……」


 戸惑うように言う刹那だった。

 素直というか真面目というか。


「ごめんごめん。あずラジ、本日はゲストをお呼びしています。今やMLBの大スター、井上春武の育ての親、六階道刹那さん!」


「いえー!」


 エイミーが盛り上げる。


「刹那、あの時空気地獄だったけど復活したかにゃ?」


 アリエルの頭を叩きたくなる。

 いや、傍にいたら傍にあった週刊誌を丸めてぽかりとやっていただろう。

 本当、彼女だけは数十年経っても変わらない。


「ああ、あれね。あれはこちらで解決しました」


「そっか。私はまだへこんでるにゃ」


『なんだ?』


『アイタケのことか?』


 コメント欄が興味を持ち始める。

 まずい、と思いとっさに話を切り替える。


「じゃあ、まずは刹那さんに春武君との思い出から語ってもらいましょうかー」


「やんちゃな子でした」


 苦笑交じりの刹那の声。

 インタビュー慣れはしているらしい。


「本当、岳志の子がなんでこんなに乱暴なんだろうって。愛ちゃんのことを玩具で叩いて泣かせたりね」


「あれは愛も悪かったのよ。春武君のことをそんな小柄じゃプロは無理だ、なんて言うから」


 おや、前回とは打って変わって落ち着いているエイミー。

 良く言い聞かせたのが効いたのだろうか。


「あれ、誰が吹き込んだのかしらね。子供の発想じゃないわ。ネットでも見てたのかしら」


「デジタルネイティブって怖いわねえ。どこから情報を仕入れてくるかわからないし」


 そのまま子育てトークに華が咲く。

 このまま時間だけ経ちそうだった。

 それで良いのかも知れない、と思ったが、エイミー対刹那と題打った放送でこれは如何なものか。

 しかし、二人の仲を悪くさせるような結果を呼ぶのはどうしたものか。


「エイミーはランスロットって名前を却下されたことを怒ってないのかにゃ」


 アリエルが水を向けた。

 コメント欄が沸く。


『ランスロットwwwww』


『湖の騎士wwwww』


『お前もかエイミーwwww』


 人の名前なんてそんなものだ。

 欠点を見つけようと思えれば見つけれる。

 けど自分の子供の時は慎重に検討しようと思ったあずきだった。


「いや、確かにランスロット君は目立ちすぎて嫌かなあって私も反省したわ」


 大人しいエイミー。


「あの時はごめんね。孫が産まれてハイテンションになってたんだわ、多分」


「そうかしら……? ローに見えたけど。けどその時はこっちこそ春武が愛ちゃんを労らないことを言ってごめんねえ」


「仕方ないわ。男なんてそんなもんよ。岳志もアレだったから」


「その元カノヅラは良くないと思うなあ」


 刹那の率直な一言。

 エイミーが黙り込んだ。


「遥香さんもいるんだしさ。いつまでも昔の話してたらしつこいって思われると思う」


「そう言った大人の意見も言えるのも刹那さんのアダルティーな魅力と言うわけですよ」


 あずきがとっさに助け舟を出す。


「待って、それじゃ私が子供みたいじゃない」


 エイミーが反論する。


「中学校時代の恋愛引きずってるのは私に言わせりゃ子供よ」


 刹那は呆れたように言う。


「それなら刹那だって岳志が好きだから春武引き取ったんじゃない!」


 今度は刹那が黙り込む。

 コメント欄がざわつき始めた。

 迂闊だった。

 制御不能になるような要素は前もって潰しておくべきだった。


「そういうんじゃないわよ。ただ、春武に一目惚れしたのは事実だけどね」


 持ち直す刹那。


「なに? ショタコン? 女子高生に貢ぐ男はみっともないって言われるのに女でジャニーズ好きってなんでか叩かれないわよね」


『エイミーこれはイメージ落ちたわー』


 そんなコメントが視界に移る。

 慌てた。

 慌てた。

 そして自分の限界を思い知った。


「突然ですが」


 静香な一言。


「本日あずきは引退を表明します。二十数年ありがとうございました」


『は?』


『は?』


『え?』


『急転直下過ぎるんだけど』


 一瞬静寂が場に訪れた。

 コメントの動きも鈍る。

 その本流が自分に流れ出てくる前に十七歳のテンションに戻る。


「では、今回はこの辺りで! では、次回の引退配信でってことでまったねー!」


「まったにゃー」


『いやあ伝説回だったわ』


『yahooニュース載るなこれは。立ち会えて良かった』


 そんな感想もある中で行かないでや生きがいがなどの赤スパチャも飛び交う大混乱。

 あずきはそっと配信を閉じた。


(若いなあ、エイミーも、刹那も)


 背もたれに体重を預ける。


(そして私も)


 今回の件でつくづく自信を失った。

 共演者のコントロールも出来ないようじゃコラボ主体の自分にとっては致命的。

 愛には身近な人間同士を出演させてもボロを出させないというマネジメント力があるが、どうやら自分にはないようだ。

 限界値を教えられたような気分だった。



つづく

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