限界社畜は寿退社の夢を見るか2
「あー、それ完全に地雷踏んだわ」
知人である岳志に電話で相談すると、そんな返事がきた。
千紗の育て親の友人だ。
ガイエルは訝しむ。
「専業主婦に憧れる人間は多いと聞いているが。千紗は今まで苦労してきた。ちょっとぐらい楽になっても良いじゃないか」
「そのなー……」
岳志はそこで一時迷った。
しかしそのうち決断して、口を開いた。
「千紗の家、家庭崩壊してたんだよな」
「母には愛されていたと聞いているが」
「それは義理の母。実家は酷いもんだった。父親も母親も喧々囂々と叫んで。だから結婚ってワードや恋愛ってワードそのものが千紗の嫌悪感を掻き立てるものなんだわ」
ガイエルは黙り込む。
そして情けない気分になった。
「じゃあなんだ。これまで俺が家に置いておいてもらえたのは悪魔で恋愛対象外だったからか」
「そうなるな」
岳志が淡々と放った言葉は重々しくガイエルの胸に刺さった。
「大丈夫だと思ってたから置いてたんだろう。もしもお前が恋愛対象として千紗を見ていると知れた今、追放される可能性は極めて高い」
「俺、貯金はあるけど収入ないんだが……保証人もいないし」
「家欲しいなら俺がやるよ。小さいのならな」
流石MLBで一時代築いた人は言うことが違う。
しかし、甘酸っぱい恋愛物語をイメージしていたら一変して追放物へ早変わりだ。
千紗が帰ってきた。
ガイエルはそれを説明し、慌てて電話を切る。
「……ただいま」
千紗は小さな声で言う。
邪魔なものが家にいるなあとでも言いたげだ。
ガイエルは千紗を愛している。
愛する千紗の為になにをすれば良い?
「なあ、昨日みたいなこと、二度と言わない。だから、君の傍にいさせてくれないか」
愛しているから、傍で見届ける。
例え千紗が、他の誰かと結ばれようとも。
千紗は座ると、しばらく頬杖をついて気だるげに考え込んでいたが、そのうち苦笑した。
「良いわよ。ガイエルいないと私今更家事できないもん」
恋愛じゃなければ良いのか。
そう思い、肩透かしを食らったような気分になったガイエルだった。
これは思ったより根深い問題なのかも知れない。
つづく
通信大学の単位認定試験の日が近づいているのでここ数日復習に根積めてました。
今日はお休み。
こんな感じで本家とは違って不定期な更新になると思います。
単位認定試験終わったらだーっと書くのを楽しみにしています。




