結婚して終わりというわけでもなく宛もなく二人旅は続く2
「え、日本に帰ってる!? 実家に!?」
日系人のハウスキーパーに説明を受けて思わず叫んだ晋太郎だった。
そう言えば彼は監督勇退以降の父が老けたと気にしていたっけ。
新年は日本か。
高校時代から寮生活だった晋太郎に実家への愛着は薄い。
春武は父親から放置されて育ったようなものだと語っていたから尚更だと思っていたが、逆にそれが今の二人の結びつきを強くしているのかも知れない。
「困ったな……」
呟く。
こういうことは直接訊きたかったのだが。
なにせ、情報化社会だ。
何処で誰が監視しているかもわからない。
情報はできるだけ遺したくない。
しかし今は頼るしかないだろう。
文明の利器、パネルフォンに。
しばしのコールの後、相手は電話に出た。
ラインはまだパネルフォン未対応。画面はない。
「もしもし、春武さん。シンタロっす」
「おー晋太郎。今年はご苦労さま」
「今春武さんの家の前っす。シカゴの」
「ウッソだろお前、実家帰るって言ったろ」
「あれは会話の脈絡的に嫁さんが愛想をつかして出ていくって話かと」
「ウッソだろお前。ウッソだろー……」
早速5W1Hの重要さの再確認。
「来てるってことはなんか用事があったんだよな?」
「うっす」
「データ取られちゃ不味いことか?」
「っす」
「ちなみに、何について聴きたいかは話せるか?」
「黄昏京子の正体について」
沈黙が漂った。
それが空恐ろしいもののように思えて、晋太郎は背筋が寒くなった。
「あいつが神様だったって言ったら、お前、信じられるか?」
「俄には」
即答だった。
流石に春武の言葉と言えどもそこまでスケールが大きい話は飲み込みづらい。
「わかった。実例を見せる。帰ってから話そう」
「帰国スケジュールは?」
「……しゃーない、嫁さんだけ残して前倒しする」
「すいません、手間かけさせて」
「ちなみに嫁さんが出ていくわけじゃないからな」
「自分そこまで馬鹿じゃないっす」
「実家帰るわを嫁が出てくわって読み取ったお前は相当のエラー持ちだよ。どうしても信じられなかったら信玄を訪ねろ。あいつには俺の力を一部見せている」
ぼやくように言って電話を切る春武だった。
ありがたい。問題が近い内に解決する。
雪空の下、家族連れが歩いていく。
そう言えば今はクリスマスシーズンだ。
どうしても、子供を可愛がる自分を連想した。
(俺、京子との子供、欲しいよ……)
誰にでもない。
京子との子供が欲しいのだ。
立ち上がっていた。
そのまま、ニューヨーク行きの便に乗っていた。
つづく




