同級生3
「あの……」
「はい」
互いに正座をして向かい合う。
信玄が正座をしていたら瑠奈もそれに習った感じだ。
瑠奈は既に衣服に身を包んでいるが、信玄はパンイチだ。
「俺、政治家になるべきか?」
「なんで?」
瑠奈が不思議そうに言う。
「だって、俺、知名度あるだろ? 市を効率的に牛耳るには将来的に市長になっとくべきなのかなあと」
そして瑠奈の会社に便宜を図ると。
汚職政治家の出来上がり。
春武の叔母の六華が頭を抱えそうな構図の完成だ。
「え、そんな大げさな」
「大げさ!?」
ひっくり返った声で言う。
「だって、たかが一夜の過ちでしょ?」
瑠奈は不思議そうに言う。
こいつ。
俺より全然大人だ。
「え、もしかして信玄君、そういうの、しないの?」
「瑠奈は、するのか?」
「いや、私もしない、っていうか、初めてだったけど」
俯く瑠奈。沈黙が場を包む。
処女を奪った。
思ったより責任は重い。
「信玄君、遊び慣れてるから流されちゃったなーあははってそう思ってた」
苦笑交じりに言う瑠奈。
「じゃ、本気なの?」
「いや、俺、市を裏から牛耳るとか、そういう不穏なのは、ちょっと……」
「だよねえ、イメージもあるしねえ。オウム以来新興宗教団体のイメージってかなり悪いもんね」
瑠奈は再び俯く。
「ちょっと引いちゃうよね」
「いや、けどその、責任は取ろうと思う。いや、取らせてください。市長になります」
信玄も男だ。やってしまったことには責任を持たねばならない。
「古臭いよ信玄君」
瑠奈は微笑んだ。
「今日勝ってくれたらそれでチャラにしてあげる」
その日、信玄は三安打うち二本塁打の大活躍。チームは盛り返し二対二の均衡に持ち込んだのだった。
翌日、瑠奈はホテルから消えていた。
信玄に何も言わずに去ったのだ。
一先ず、肩の荷が降りた気分になった信玄だった。
(そうだよな。処女で責任がどうとか古臭いよなー)
これが今時って奴か。
そんなことを思う。
祖父母世代の頃なら娘を傷物にと親が切り込んできてもおかしくないシチュエーションだが随分と日本も海外の文化に毒されたものだと思う。
その渦中にいる自分が何を言うかと言った感じだが。
ま、これでなんにせよチャラだ。
信玄はそれをきっかけに打ちまくった。
シリーズの均衡は崩れ、ワールドチャンピオンリングは一気に信玄の手に滑り込んだ。
その年末のことだった。
「瑠奈、妊娠してるらしい」
目覚めにビンタを食らったような気分だった。
春武からの電話だった。
「春武、日本男児として忌憚ない意見を聞きたい」
「なんだ?」
「現代日本ではこの場合、責任を取らないと無責任と言われるよな。流石にそこまで乱れた国になっていないよな」
「そもそも普通結婚前提にしてないのにセックスするのは頭の浮かれた猿だけだぞ類人猿。そういう価値観があるから男女同士の友情も成り立つんだ」
呆れたように言う春武だった。
「まあ俺も前科はあるが」
「あるのか?」
今度はこっちが呆れたように言う番だった。
幼馴染の嫁がいるではないか。
「いや、昔の話だ。それに流石に妊娠させたら責任を取らんとならんだろう」
「そうだよなあ、流石にそうだよなあ」
確認するように繰り返した信玄だった。
自分の日本観はそこまで時代遅れではなかったらしい。
つづく




