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偽りの魔女になれなかった君と、反逆の剣  作者: ダメお
第1章 偽りの魔女

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第九話 見えない敵

学院外縁、討伐区域。


「最近、魔獣の出現が増えてるらしい」


レオンが低く言った。


簡易編成の討伐班。

リゼルとカイトに加え、レオン、ミリア、セレストの五人。


「周期じゃないの?」

ミリアが首を傾げる。


「その割には偏ってる」


セレストが答える。


「発生位置が不自然よ」


その言葉に、全員が周囲を見渡す。


確かに、静かすぎる。


「……来るぞ」


カイトが言った瞬間だった。


草が揺れる。


低い唸り。


魔獣が現れる。


一体、二体——三体。


「多いわね」

リゼルが呟く。


「散るな!」

レオンが指示を出す。


カイトが前に出る。

リゼルがすぐ後ろに付く。


距離、問題なし。


「右!」


「見えてる!」


剣が振られる。


「今!」


「はぁっ!!」


炎が走る。


一体撃破。


「もう一体来る!」


ミリアが叫ぶ。


「任せろ!」


レオンが迎撃する。


剣がぶつかる音。


「今、左空く!」


セレストが言う。


「分かってる!」


カイトが動く。


リゼルが合わせる。


炎と剣。


連携。


問題ない。


——だが。


「……まだいる」


セレストが低く言った。


その声に、空気が変わる。


「どこだ」


レオンが構えを崩さない。


「……奥」


セレストの視線が森の奥へ向く。


その瞬間。


——いた。


黒い影。


木の陰に立っている。


動かない。


ただ、こちらを見ている。


「……人?」


ミリアが小さく言う。


「違う」


セレストが即答する。


「あれは——」


言葉が続かない。


説明がつかない。


「……あいつ」


カイトが呟く。


昨日、見た影。


同じ存在。


「何なのよ、あれ」


リゼルが睨む。


その瞬間。


影の視線が、二人に向いた。


——ゾワッ


背筋に冷たいものが走る。


「……へぇ」


声がした。


低く、はっきりと。


「面白いな」


影が、一歩前に出る。


月明かりがその姿を照らす。


黒い外套。


顔は見えない。


だが——


明らかに人の形。


「……誰よ」


リゼルが問う。


影は答えない。


ただ。


「観察中だ」


それだけ言う。


意味が分からない。


だが。


理解できることが一つある。


——敵だ。


次の瞬間。


「下がれ!!」


カイトが叫ぶ。


衝撃。


地面が裂ける。


何も見えない。


だが、確かに“何か”が通った。


「なっ——!?」


レオンが後退する。


「今の、何!?」


ミリアが叫ぶ。


「……見えない」


セレストが低く言う。


「でも、ある」


影は動いていない。


ただ立っているだけ。


それなのに。


攻撃だけが正確に飛んでくる。


「……気持ち悪いわね」


リゼルが呟く。


「同感だ」


カイトが剣を構える。


「距離、詰めるぞ」


「ええ」


リゼルが即座に応じる。


それしかない。


見えないなら、近づく。


「行くぞ!」


踏み込む。


その瞬間。


再び衝撃。


「っ!!」


カイトが受ける。


腕が軋む。


「今!!」


「はぁっ!!」


炎が走る。


影の足元に直撃する。


だが——


「浅いな」


動じない。


「硬いわね」

「分かってる」


さらに踏み込む。


距離を詰める。


「もう一発!」


「任せなさい!」


炎と風。


混ざる。


威力が上がる。


影の外套がわずかに揺れる。


初めての変化。


「……なるほど」


影が呟く。


「そういうことか」


何かを理解した声。


「やめろ!」


レオンが叫ぶ。


「深追いするな!」


だが。


その瞬間。


空気が変わる。


「まずい!」


セレストが叫ぶ。


「来る!」


今までとは違う圧。


「——っ!!」


衝撃。


カイトが吹き飛ぶ。


「カイト!!」


距離が開く。


魔法が出ない。


「……っ!」


迷いはなかった。


リゼルが走る。


一直線に。


「来るな!!」


カイトが叫ぶ。


「うるさい!!」


そのまま飛び込む。


距離が戻る。


「はぁぁぁっ!!」


炎が爆発する。


影を包み込む。


煙が立ち上る。


——静寂。


「……やった?」


ミリアが言う。


だが。


煙が晴れる。


そこに——


影は立っていた。


微動だにせず。


ただ。


少しだけ後ろに下がっている。


「……いい連携だ」


初めての評価。


だが。


感情はない。


「だが、まだ足りない」


一歩、下がる。


「今日はここまでにしておこう」


「逃がすか!」


カイトが踏み出す。


だが。


「やめなさい!」


セレストが止める。


「追えない」


影は小さく笑う。


「また会おう」


そのまま。


消えた。


——完全に。


「……何よ、あれ」


リゼルが呟く。


誰も答えられない。


「……人じゃない」


レオンが言う。


「でも魔獣でもない」


沈黙。


「……帰るわよ」


リゼルが言う。


「これ以上は危険だわ」


誰も反対しない。


——帰り道。


誰も軽口を叩かない。


「……ねえ」


リゼルが言う。


「ん?」

「さっきの、何だと思う」


カイトは少し考える。


「分からん」


正直に答える。


「でも」


一拍。


「ろくでもないのは確かだ」


リゼルも頷く。


「……ええ」


それだけで十分だった。


——見えない敵。


だが確実に。


こちらを知っている存在。


物語は、もう戻れない場所まで来ていた。


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