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偽りの魔女になれなかった君と、反逆の剣  作者: ダメお
第1章 偽りの魔女

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第七話 違和感の正体に触れない者

昼休みの中庭は、穏やかな喧騒に包まれていた。


笑い声、足音、風の音。


どこにでもある学院の一コマ。


——その中で。


「……妙ね」


セレストは一人、木陰に立っていた。


視線の先。


リゼルとカイト。



「だからそこ、遅いって言ってるでしょ」

「いや今のはお前が——」

「うるさい!」


いつもの言い合い。


だが。


その距離。



近すぎる。



必要な距離ではある。


魔女と契約者は、離れれば魔法が使えない。


だから近くにいるのは当然。



だが。



(……それにしても)



揃いすぎている。



歩幅。


位置。


タイミング。



まるで測っているかのように。



「セレスト?」


後ろから声。


ミリアが顔を覗かせる。



「何見てるの?」


「……観察よ」


短く答える。



「リゼル先輩たち?」

「ええ」



ミリアは少し笑う。


「仲いいですよね」

「そう見える?」


「はい!」


即答。



セレストは少しだけ目を細める。



(仲がいい、か)



それだけで説明できるなら、簡単だ。



「……そうね」


それ以上は言わない。



まだ、確証がない。




「なあ」


カイトが言う。


「今日も行くのか?」


「当然でしょ」


リゼルが即答する。



「昨日より詰めるわよ」

「はいはい」



自然と並ぶ。


距離を測ることなく。



それが当たり前のように。



(……無意識)


セレストは思う。



意識していない。


それでも、合う。



それは訓練では説明がつかない。




訓練場。



「いくわよ」


リゼルが構える。


カイトが踏み込む。



「今」


炎が走る。



「もう一発」


「任せなさい」



連続。


途切れない。



「……速い」


セレストが小さく呟く。



昨日より明らかに。



成長が早すぎる。



(普通じゃない)



だが。



それが何なのかは、まだ分からない。




その時。



ほんの一瞬。



リゼルの魔法が“揺れた”。



「……っ?」


セレストの目が細くなる。



見間違いか。



いや。



確かに。



“ズレた”。



「……今の」


思わず呟く。



だが。



すぐに元に戻る。



何事もなかったかのように。



「どうかした?」


ミリアが聞く。



「……いいえ」


首を振る。



(今のは——)



分からない。



だが。



確実に。



“何か”が違う。




訓練が終わる。



「……悪くないわね」


リゼルが言う。



「だろ?」


カイトが笑う。



その距離は、変わらない。



(……やっぱり妙ね)



セレストは確信に近づく。



だが。



まだ足りない。




「……もう少し観察が必要ね」



その目は、完全に二人を捉えていた。




そして。



誰も気づいていない場所で。



「……順調だな」


低い声が響く。



屋根の上。


黒い外套の影。



リゼルとカイトを見下ろしている。



「少しずつ、歪んでいく」



その声に感情はない。



ただ、事実を確認するように。



「……いい」



風が吹く。



影は消える。



誰にも気づかれずに。




違和感。



それはまだ、名前を持たない。



だが確実に。



物語の深層へと繋がっていた。

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