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偽りの魔女になれなかった君と、反逆の剣  作者: ダメお
第1章 偽りの魔女

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第六話 見ている者

夕方の訓練場は、昼とは違う静けさに包まれていた。


風の音だけが、かすかに耳に残る。


「……もう一回いくわよ」


リゼルが杖、《アルカナ・コーデックス》を構える。


「何回目だよ」

カイトが肩を回しながら言う。


「納得いくまで」

「はいはい」


軽く返しながらも、剣、《ネメシス・リベリオン》を構える。



踏み込み。


呼吸。


距離。



「今」


炎が発動する。


滑らかに。


無駄なく。


「……いいわね」


リゼルが小さく呟く。


「昨日より安定してる」

「そりゃそうだろ」


カイトは剣を下ろす。


「何回やってると思ってる」



「次」


リゼルが言う。


「今度は連続」


「無茶言うな」

「できるから言ってるのよ」



再び構える。


カイトが剣を振る。


一度。


二度。



「はぁっ!」


炎が連続で放たれる。


少しだけ間が空く。


だが崩れない。



「……できてる」


リゼルが息を吐く。


その声には、確かな自信が混じっていた。



「なあ」


カイトがふと聞く。


「ん?」


「どこまでいけると思う?」


リゼルは少し考える。



「分からないわ」


正直な答え。



「でも」


杖を見つめる。



「限界は決めない」



その言葉。


迷いはない。



「……だな」


カイトが小さく笑う。



その時。


「——へぇ」


声がした。



振り返る。



そこにいたのは、セレスト。


静かに立っている。



「また来てたのか」

カイトが言う。


「訓練場は共有よ」


当然のように返す。



セレストの視線が、二人を捉える。


じっと。


観察するように。



「……息が合ってるわね」


ぽつりと。



「そうか?」

カイトが軽く返す。


「ええ」


セレストは頷く。



「異常なほどに」



一瞬。


空気が止まる。



「……どういう意味よ」


リゼルが低く言う。



セレストは少しだけ考える。



「言葉通りよ」


それ以上は言わない。



だが。


その目は確実に“見ている”。



「……気にしすぎじゃないか?」


カイトが言う。


「かもしれないわね」


セレストはあっさり引く。



「ただ」


一拍。



「興味はある」



その言葉だけ残して。


セレストは背を向ける。



去っていく背中。



「……何なのよ、あれ」


リゼルが小さく言う。



「頭いいやつってああいう感じじゃね?」


カイトが適当に返す。



「適当ね」

「事実だろ」



だが。


二人とも分かっていた。



“見られている”



ただの興味ではない。



観察。



「……やりづらくなるわね」


リゼルが言う。



「気にすんな」


カイトは軽く言う。



「いつも通りやるだけだ」



一拍。



「……そうね」


リゼルは頷く。



杖を構える。



「続けるわよ」



剣が応える。



距離は変わらない。



だが。



確実に。



“何か”が近づいていた。



それは敵か。



それとも。



真実か。



まだ誰も知らない。

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