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番外編5,命日


シャーロット様は決まってその日にちになると私の淹れた紅茶を飲んで、虚ろな眼をして窓の外をみている。


―――――四月三十日は、シャーロット様のお母様が亡くなった命日だ。

この日になるといつものように思う。

何もして上げられない私が憎い、と。

前世、私は両親が居なかった。と、言うのも、両親がトラックの暴走事故により亡くなった。死因は全身打撲でほぼ即死だったらしい。原形は留められるず、本当に、酷い状態だったらしい。

亡くなったあとは私一人取り残され、両親が残してくれた保険金等で生活を食い繋いだ。その後はバイトを掛け持ち。今思えばその掛け持ちが原因だったのかもしれない。余命宣告されたのは。そして――――――。

もしかすると最初、母親を早くに亡くし、父親は中々家に帰ってこない同情でプレイしていたかもしれない。けど、確かに私はシャーロット様の傍に居たいし、愛おしい。そんな愛らしいヒロイン(シャーロット様)が傷付くのが何とも不幸だ。目指すはハッピーエンド。シャーロット様の幸せの為に。

―――――画面越しではただの同情だった。

けど、実際に目の当たりにすると苦しく思う。何も出来ない私がとても憎い。この日ばかりはルーカスや他の使用人にはシャーロット様へ気を遣うように指示しているが、それでもシャーロット様の痛みが消えるわけではない。それが私にとって何よりも辛い。

「シャーロット様」

私が声をかけて、

「なに?」

素っ気ない返事が返って来る。

「紅茶のおかわりを御持ちしました。―――どうぞ」

空っぽになった紅茶のおかわりを用意したのだ。せめてもの気休めの為に。シャーロット様は少しだけ眼を開いて、

「ありがとう」

とだけ言い残した。辛そうな笑みに私は余計な事をしたな、と後悔した。

「―――ごめんなさい、いつも、気を遣わせて貰っちゃって」

「いえ、そんなことはありません」

私は咄嗟(とっさ)に作った作り笑いを浮かべたが、シャーロット様は悲しげな瞳でこちらを見つめた。その眼にやや喉が詰まる。

「明日、お父様が帰って来るの。お母様はもう、いないけど、私は幸せよ。―――だから、心配しないで?」

健気に微笑む姿は年相応の少女のようにも見えるが、私にはそうには見えない。顔に嘘だと書いてある。シャーロット様のお父様が居ないのは仕事が忙しいからなのかもしれない。けど、流石にそれは無いのだろうか。せめて、シャーロット様の為に、一分でも良いから傍に居てあげるものなのではないか。その悲しげな表情を見るたび、本当に嫌悪する。シャーロット様ではない。そのお父様でも無い。他の誰でもない、自分に。

「………シャーロット様……」

少しジッと見ると、シャーロット様は観念したように、

「分かってる。嘘だよ。けど――」

辛そうな笑みを浮かべて微笑(わら)った。

「―――けど、私が幸せなのは本当。ルーカスや、ヘンリー様、リカルド様だっているし、イザベラ様も。それに、セレスだっているの。寂しくなんかない」

今度こそ嘘偽りの無い表情で言われると、ほんの少し心の荷が落ちる。

「身分違いかもしれないけど、イザベラ様ね、私のこと、友達だと言ってくれたの。セレスのことを話すイザベラ様は本当に可愛らしくて、つい確かにな、って思うの。だからね?セレス」

シャーロット様は私の両手を握って愛らしく微笑った。

「―――幸せなの」

シャーロット様が言葉を切り、

「だからもう、心配しないで?私はもう、大丈夫だから」

「…………私は!ずっと、シャーロット様の傍に居ます。別れが来ない限り、ずっと」誓うように言った言葉でシャーロット様は嬉しそうに微笑う。

「ありがとう」

そんな笑みに絆されて、私はもう一度笑う。

「私は、一生シャーロット様の味方です。この先も、これからも」

何があったとしても。

――――四月三十日の、とある命日だった。



暫く更新していなかったので、20話目を大幅修正しました。本編までもう少し御待ちください。

ついでに命日についてはふと思い浮かんだので、どうせなら今日にしようと思いました。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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