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第1話 UMA?妖怪?いいえ、おいちゃんです

第2章入ります。

頭の悪い下ネタ注意。


 カケルは深いため息をついて席につく。


 異世界からやってきた精霊おいちゃんによって、乙女戦士(ヴァルゴファイター)となった昨日。カケルはエビルという化け物から地球の平和を守るという勤めを無理矢理与えられた。地球の平和を守るために戦うというのは百歩、いや千歩譲っていいとしよう。しかし乙女戦士として戦うためには、めたもるふぉーぜ☆をする必要があった。めたもるふぉーぜ☆をすると、女体化&女装のコンボがついてくる。それだけでも胃が痛くなるのに、おまけに乙女戦士の力を与えられると強制的にEDとなってしまう。ふざけんなの一言である。


 昨日はめたもるふぉーぜ☆による瞬足で幼なじみのココロを学校へと送り届け、カケルもギリギリ遅刻せずに登校できた。今日は朝からエビルが現れることはなく、普段通り登校することが叶った。


 イスに座り、なにをするでもなく教室を見回す。

 クラスの生徒たちがそれぞれグループを作り、楽しそうに会話している。カケルは1人で誰に相手をされるでもなく、それを目に入れる。寂しさも悲しさもない。中学時代に右脚を故障し陸上部をやめてから、カケルは他人と距離をとるようになった。感情が動かされなくなり、何の意力もなくなったからだ。陸上部の仲間すら遠ざけて、荒れて、今では両親を除いて、他校に通う幼なじみのココロしかカケルのそばにいなかった。

 カケルはそれでもかまわなかった。自分にはそれで十分だと思った。自嘲するように薄く笑う。





『なんやシケた顔しとんのお。いつかハゲんぞ。おいちゃんはフサフサやから別にかまへんけどなあ』




 突如聞こえためっちゃいい声に、カケルの思考が止まる。

 クラス中の大半も、それに動きを止めた。


『おうおう、男子も女子もみなゲンキそうでええこっちゃ。ワカモノっちゅうんはこうやってゲンキでおんのがええ。カケル、あにさんもああやってキャッキャウフフせんといつか枯れんで。あ、もう枯れとったか』


 教室内をぐるぐると回るおいちゃんの姿があった。

 カケルは開いた口が塞がらないまま、それを見つめていた。


「なんだあれは!?」

「ぬいぐるみ?」

「ドローン?」

「UMA?」


 生徒たちがおいちゃんを見て戸惑いの声をあげる。

 しかし数人は


「え、何のこと?」

「何言ってんだ?」

「は? どこに何がいんだよ」


 と周囲の友人たちを不審がっている。

 おいちゃんの姿は童貞処女にしか見えないというのは本当のようだ。


 カケルは机の中から電子辞書を取り出と、おいちゃんに向けて投げつけた。


『がっふうううううううう!!!』


 見事、電子辞書はおいちゃんの顔面に直撃した。おいちゃんの体が落下する。

 カケルは席から立ち上がり、おいちゃんに近づいて見下した。


「何しに来た。何をしに来た。いい加減にしろよ。くそっ、分厚い辞書とか買っとくべきだった。電子辞書とか殺傷能力弱すぎる」

『なにすんねん。こんなんギャクタイやぞ!』


 おいちゃんは顔をさすりながらキッとカケルを睨みあげる。

 クラスの男子生徒Aがおずおずと背後からカケルに話しかける。


「それって大地のペットか?」

「ペットのわけないだろ。こんな妖怪」

『だれがヨウカイや! こんなぷりちーなおいちゃんにヨウカイよばわりすんなや!』

「これ普通にしゃべってんだけど、何て妖怪?」

「童貞処女にしか存在が把握できない妖怪」


 苛立ちを含ませカケルが語る。怒りで周囲に気を配る余裕などなかった。

 それを聞いた男子生徒Aを始めとするクラスの面々は複雑な表情をした。だがどう反応すべきなのか戸惑い、おいちゃんが見える生徒も見えない生徒も気まずい気持ちで口をつぐむ。「王様の耳はロバの耳」とは違い、それぞれに心当たりがあるからこそ下手に口が出せなかった。



 おいちゃんはヘンッとふんぞり変えると、尖った声を出す。



『はー、そーかい。ヨーカイなあ。カケルにはノロイかけたったからなあ。「一生、童貞になる」っちゅうノロイをなあ』



 完全にクラス中が固まった。おいちゃんがわからない数名を除いて。

 カケルも完全に石化した。


 男子生徒Aがカケルの肩に右手を置く。カケルが振り返れば清々しい笑顔で左手の親指を上げていた。


「大地、いつかいいことあるって」

「はっ倒すぞ、その笑顔」

「大地って近寄りがたい雰囲気で話しかけにくかったけど、童貞ってわかったらめちゃくちゃ親近感増すのな。残念だよな、それなりにかっこいい顔してんのに一生童貞」

「よーし、わかった。はっ倒す」


 カケルが拳を握る。それを見た男子生徒Aはダッシュで離れていった。





 するとガラリと教室の扉が開き、現れた担任の先生に生徒たちの顔が強ばる。


「HRを始める。いつまで遊んでる。さっさと席に着け」


 真っ黒な髪と、黒縁のメガネの奥は切れ長の三白眼で生徒たちを睨みつける。その表情は冷たさを感じさせた。余計なことを言わせないとばかりに、声も冷え切っている。

 生徒たちは慌ててそれぞれの席に着く。カケルはおいちゃんをどうすべき迷い、動けずにいた。ギロリと先生がカケルを見る。


「何をしている。さっさと席につけ」

「す、すいません。水原先生」


 カケルの謝罪に担任の水原は興味なさげに顔をそらす。

 そのときおいちゃんがソローッと宙に浮き、水原の顔を覗きこんだ。するとおいちゃんの首根っこを水原が摘み上げた。おいちゃんやカケルだけでなく、おいちゃんが見える生徒たちがギョッと瞠目した。


「誰だ、校内に余計なものを持ち込んだのは。さっさと名乗り出ろ」


 そして摘み上げられているおいちゃんを生徒に見せる。誰もが「ええー・・・・・・」と戸惑った。カケルを含めておいちゃんが見える者は、水原にもおいちゃんが見えることに。おいちゃんが見えない者は水原が何かを摘んでいるのに、何も見えないことに。


「いいからさっさと名乗り出ろ」


 水原は黒板を強く叩きつける。席に座るタイミングをなくしたカケルがちらりと左右を見る。全員がカケルを見ていた。男子学生Aにいたっては「早く言えよ」とジェスチャーまで出している。

 何でこんなことに、と摘まれているおいちゃんに不満を抱きつつカケルは手をあげる。すると再度ギロリとした視線が向けられる。



「大地。学校に余計なものを持ち込むとはどういうことだ」

『なあ、おいちゃんネコちゃうからこの持ち方やめてえや。カワのびるカワのびる』


 摘まれたおいちゃんがジタバタする姿に数人の生徒が吹き出した。おいちゃんの緊張感のなさにカケルの怒りがこみ上げてくる。このボケライオンとっとと帰れよと。

 カケルは水原を見返す。


「はい。勉学には一切必要ありません。なのでそれは先生が処分していただけないでしょうか」

『おいこらああああああ。おいちゃんをいらんもん扱いすんなああああああ』


 おいちゃんが摘まれながら両手両足をジタバタさせる。数人の女生徒が可愛いとつぶやいていた。カケルはそれを聞いて「騙されるなやつはただの害獣だ」と心中で叫ぶ。



 1人の男子生徒が手をあげる。


「水原先生。その先生が摘んでるのって、童貞処女しか見えない妖怪らしいんす。先生って童貞なんすか」


 そしてとてつもなく勇気のいる発言をかました。ギョッとしたのは生徒だけでなく水原も表情を変えた。しかし水原はすぐに冷たい表情へと戻る。


『いたたたたたたたたたた! ユビ、ユビつようなってる! 皮膚ちぎれてまうちぎれてまうううううううう!』


 しかし動揺しているのだろう。摘む指の力が強まったことに、おいちゃんが涙目になった。


「何馬鹿なことを言っている。私語は慎め。あと大地、これは私が預かっておく。いいな」

「はいどうぞ喜んで」


 水原の言葉に、カケルは即答した。おいちゃんが何か言っているが、カケルは気にせず席に座る。するとどっと疲れを感じた。


(もういっそのこと、ずっと預かっててくれないかな)


 カケルは心底そう思った。

おいちゃんをしゃべらせると話が脱線するわー。

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