第6話 合体だ!
お盆がとても忙しく、更新遅れました。
誠に申し訳ありません。
ココロは口を閉ざす。
トーカはココロをにらみつける。
安倍川はその2人に挟まれている。
「何で俺この位置!?」
安倍川は両側にいる2人の顔を交互に見ながら叫ぶ。
「俺がここにいる必要ないよな。むしろ俺の存在が今現在必要ないよな」
「そんなことないよ。神々しいトーカちゃんを直視しないよう壁の役割果たしてるよ」
「俺、壁扱いなの!?」
「ってか、アンタさっきまで普通にアタシの側にいたでしょうか!」
トーカの叫びにココロはとっさに安倍川の肩を掴み、安倍川の背後に身を隠す。すぐにトーカがココロをにらみつけるため位置を移動するが、ココロが安倍川の肩を押し向きを変え再度安倍川がトーカに向き直る。トーカが移動すればまたココロが安倍川の向きを変えて再度安倍川がトーカに向き直る。それを何度か続けた。
トーカが安倍川の胸ぐらを掴んだ。
「アンタ、さっきから邪魔なのよ!!!」
「これ俺が悪いのか!?」
安倍川が嘆くがトーカもココロも存ぜぬ所存だ。
「ちょっと、高瀬。いいからアンタの知ってること吐きなさいよ!」
「ぴゃああああああああ。ココロちゃんが私の名前呼んでくれたああああ」
「痛い痛い痛い、俺の肩砕ける。高瀬離して、手ぇ離して!!」
自身の肩を掴むココロの手を、安倍川がバンバン叩く。
その痛みにココロは思わず手を離してしまう。その隙に安倍川はココロの側から逃げ出した。あっ、とココロが声をあげる暇もなく、トーカの鋭い視線に貫かれる。
「さあ、教えてもらおうかしら」
トーカはココロの顎に指を当てて顔を上げさせる。トーカの整った顔を見てココロの背筋がゾクゾクと震えた。腰が砕けそうになるのを必死に耐える。
「ぴゃああああああ。おえうおおおおおおおおお。ぶぱあああああああああ」
しかし奇声は耐えられなかった。
トーカは手を離し、数歩後ずさる。ドン引きで顔を青くしている。
「どっから声出してんのよ、さっきから」
「はっ、ごめん。トーカちゃん相手だと私の心がズッコンバッコンうるさくて」
「おいちゃああああああああああああん」
校庭からトールの声が響く。慌ててココロがそっちを向く。
そして目に映った光景に、思わず合掌した。
おいちゃんのケツにエビルの空飛ぶモザイクドリルがぶっ刺さっていた。
白目になったおいちゃんはポトリとその場に落ちた。ケツにドリルが刺さったまま。
「アッーーーーーー!」
思わず安倍川が声をあげた。そして自身のケツを守るように片手で押さえた。
ココロはぐすんと鼻をすする。
「安心しておいちゃん。おしりは元々2つに割れてるから。痔になったらボラ○ノール買ってあげるから」
安倍川とココロがそれぞれの反応をする中、トーカは戸惑いながら首を傾げる。
「アンタたち、何言ってんの?」
「何ってお前、妖怪とはいえケツにアレが。いくら妖怪だって・・・・・・おえっ」
「えっとね。今落ちたのはおいちゃんって言って、乙女戦士のマスコット(?)的な存在というか」
しかしトーカはさらに怪訝そうに顔を歪める。
「アンタたちさっきから何が言いたいのかわかんないんだけど」
そしてトーカの言葉にココロはふと冷静になる。トーカは今何が起きたのかわかっていないようだ。
「ト、トーカちゃん。さっきまで空を飛んでたドリル。今トーカちゃんにはどう見えてるの?」
ココロの問いにトーカは訝しげに校庭を見る。
「どうって。なんか急に落下して今地面スレスレのところで浮いてるように見えるけど。で、あれがどうしたのよ」
トーカは2人の方に向き直り尋ねる。
つまりトーカにはおいちゃんの姿は見えないらしい。
その事実に安倍川とココロがその場に膝を着いた。
「そうだよな・・・・・・。打出妹が処女なわけないよな。いや、普通にそうなんだろうけど。でも知り合いがそうだとわかると敗北感が半端ない。くそう、何で、何で俺は童貞なんだ」
「私今からトーカちゃんのハジメテ奪った野郎ぶっ殺しマンになる。誰だ、私の女神汚した不届き者は!!」
おいちゃんの姿は童貞処女にしか見えない。つまりそういうことである。
安倍川もココロも悔しさに膝をつきながら拳をダンダンと地面に叩きつける。ああああああああ、という叫びを数秒あげてから2人はおとなしくなった。
「なんかわかりたくない雰囲気だから、細かいこと聞くのはやめておくわ」
「ああ、そうしてくれ。俺も知り合いのそういう話知りたくない」
悲壮感に満ちた顔で安倍川はトーカに言った。
ふと安倍川がココロの様子に気づく。ココロは叩きつけた拳を地面につけたまま、口を開けて固まっていた。安倍川が不思議に思いココロに話しかけようとするが、それより先にココロが拳を開いて手のひらをその場に叩きつける。
「合体だよ。そう、乙女戦士の合体だよ」
そしてココロは明るく笑った。
逆に今度は安倍川が固まる。
「乙女戦士の合体?」
「うん!」
「・・・・・・巨大ロボはいつ出てきたんだ」
「安倍川くん、何言ってるの? ロボットなんていないよ。ヴァルゴレッドとヴァルゴブルーを結合させるんだよ」
「お前が何言ってんの!? 何、堂々と百合発言かましちゃってんの!?」
安倍川の発言にココロはジト目で返す。
「安倍川くん、なんでもかんでもそういう下ネタで考えるのよくないと思うよ」
「ちょっと待て。さっきまでの打出妹に対する反応とかリアクションとかが変態じみてた高瀬に、そういう蔑まれた視線を向けられるのは納得がいかない」
不満を込めた安倍川の言葉だったが、ココロは聞こえない振りをして立ち上がる。そして校庭を見つめた。
そこにはエビルのドリルから逃げながら好機を狙うカケルとトールの姿。
「問題は2人にどうやって伝えるか、なんだよね」
ココロは悔しげに校庭を見ていた。
少し時を戻す。
宙で飛んでくる、あるいは地面を潜って空に飛び出すドリルから必死に逃げるカケルとトール。その合間にエビルへの攻撃に意識を向けるが、しかしエビルの反射神経は速くその隙がない。カケルは常に走り続けてなんとかなるが、トールは飛んでくるドリルにおいちゃんのテレポートを使いギリギリ避けている状態だ。幸いなのがエビルのスピードが比較的遅いため、エビル自身2人に向けて攻撃を行わないということだ。
カケルは計測器に視線を移し、処女充電が刻々と貯まっていくのを確認する。しかしエビルの両手のドリルに耐えられるほど貯まっているかはわからない。
『チッ。ちょこまかとしつこい者たちだ。ならば!!』
痺れを切らしたエビルが強い声で叫ぶ。その瞬間、飛んでいたドリルが地面に潜る。カケルは狙いを定められぬよう走るスピードを上げる。トールは逆にいつでも反応できるようにその場に足を止めた。
しかしエビルの狙いは乙女戦士ではなかった。
地面から飛び出したドリルは勢いよく空を飛ぶ。
そしておいちゃんのケツにぶっ刺さった。
『おうっふっ!!』
めっちゃいい声で短い悲鳴をあげておいちゃんの体が地面に落ちる。白目になりながらピクピクと体を震わせて、しばらくするとガクッと力をなくした。
「おいちゃああああああああああああん」
トールが嘆くように叫んだ。カケルも走りながら合掌する。
エビルは上機嫌だ。サポートをするおいちゃんはエビルにとって目障りだった。
『これで邪魔者もいなくなり、余計なサポートもなくなった。乙女戦士、貴様らの命運もこれまでだ』
高笑いをあげるエビル。おいちゃんのケツに刺さったドリルがクポォッと抜けていく。そしてそのドリルはトールに向かって襲いかかった。
トールは必死に背を向けて逃げる。
「ふっざけんなああああああ。おいちゃんと兄弟になってたまるかあああああああ。いや、この場合兄弟じゃないのか。姉妹なのか、竿による姉妹なのか。どっちにしてもふざけんなあああああああ」
おいちゃんは男であり、トールも今は乙女戦士で女の体だが一応男であるため、姉妹といえるのは甚だ疑問である。
とりあえずそれは置いといて。反射ではトップレベルのトールだが、スピードではドリルの方が上である。徐々にその間の距離は狭まる。
カケルは内心で舌打ちをしながら、右手を突き出す。
《《乙女による防壁 発動します》》
そして女性の声が聞こえたと同時に、トールに近づいていたドリルを囲むように結界が張られる。結界に包まれたドリルはそのままゴトリと地面に落ちた。トールはそれにしばらく気づかずその場から離れた。
『何!?』
エビルが驚きの声をあげて、ドリルを助け出そうと走り出す。
しかしそれよりも速くカケルがドリルを包んだ結界を抱えて走り出した。結界は思いの外強固に作ってしまったようだ。しばらくは破られそうにない。中でモザイク必須のドリルが外に出ようと蠢いていて、カケルは見なかったことにした。
『く、くそう。なんてやつらだ。大事なブツを人質に、いや、ドリル質にしおって』
「ブツって言うな気色悪い」
カケルは冷えた視線でエビルを見た。しかし内心は少し焦っていた。
思わず乙女による防壁を発動してしまった。それによって空飛ぶモザイクの動きは封じたが、処女充電は大幅に減ってしまった。このままではいつまで経ってもエビルは倒せない。
ふと校庭の外がカケルの視界に入る。
そこにはココロが必死にカケルに何かを伝えようとしている。
カケルは目を凝らしながら、それを観察し続ける。
「そうか」
カケルはココロの言いたいことを理解したようだ。急いでトールの方を見る。トールは先ほど全速力で逃げたため、息も絶え絶えであった。
「打出」
「んだよ!? こっちは疲れてんだよ!!」
「合体するぞ!」
「はああ!?」
カケルの言葉が理解できず、トールは思わず聞き返したのだった。




