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第5話 チカラガ、ホシイカ?


『ぎぃあああぁあ』


 エビルはそう鳴きながら結界に突っ込む。未だ破壊されていないが、少しずつヒビが入り始めていた。エビルは結界をクチバシで突き刺していく。しかしまだ壊れない。後退し、結界から距離をとる。そして勢いをつけて結界へと突進した。エビルが頭突きを与えた瞬間、壁は破壊され光となって消えていく。

 エビルはそのまま前へと飛んでいった。




 その顔にカケルが跳び蹴りを食らわせた。




 エビルは突っ込んだ勢いも含めて、遠くへと飛ばされる。


 着地したカケルはすぐさまエビルに突っ込んだ。しかしエビルも翼をはためかせ、強風を作り出す。カケルは風に煽られ後ろへと飛ばされる。風が止んだ瞬間に体勢を低くとったが、再度風が吹けば飛ばされないながらも前に進むことはできない。風が吹く合間に駆け寄ろうとするも、すぐに風圧で動けなくなる。少しずつ前には進んでいるが、動きにくい分あまり近寄るもの危険だ。


『やっぱカケルのバトルはあぶなっかしいのう』


 おいちゃんが現れるとそう口にした。いつも通りカケルのポニーテールにしがみついている。強風が吹く度に「あああああ~」と頬肉をブルブルさせていた。


『ココロのじょうちゃんにコエかけてきてセーカイやわあ』

「呼んだのか!?」

『やってカケルだけやとフアンやもん』


 一向に信頼されておらず、カケルは苦々しい顔をする。しかし言い返さない。おいちゃんの証言は間違っていないとわかっているからだ。


 エビルは体の角度を変えて羽ばたいた。強風は建物に当たり窓ガラスが飛び散った。カケルは後退しガラスを避けていく。一向に決着がつきそうにない。


「くそっ、せめて相手の背後をとれれば」

『せやなあ。カケルのスピードがふうじられてるからなあ』


 カケルとおいちゃんが悔しげに話し、そして




「『あっ』」




 と同時に声を出した。

 エビルがもう一度羽ばたいた。強風がカケルを襲う。





 しかし強風が当たる前にカケルの姿が消えた。





「こっちだ」


 カケルの声がエビルに聞こえる。そして同時にエビルの後頭部をカケルが蹴り飛ばした。前方へとエビルが吹っ飛ぶ。不意をつかれたエビルはすぐに立ち上がれず、すぐさまカケルが側へと駆けた。エビルがなんとか後ろを向き、不格好に翼を動かした。それは強い風を作れなかったため、エビルは突っ込んでくるであろうカケルに向かってクチバシを構える。

 カケルは避けながら端に移動し、商店街の壁を駆け出した。そしてエビルをすり抜け背後へと飛ぶ。そして後頭部を殴りつけた。またエビルが飛ばされるが、今度は翼を使い空を飛んで体勢を整える。

 そして振り返りざまに翼を羽ばたかせる。その先にカケルがいた。


 しかしまたもやカケルの姿が消えた。



『ぎぃあああ』



 エビルが不思議そうに声をあげる。すると背後から声が聞こえた。


《《乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン) 発動します》》



 背後から結界をまとったカケルがエビルに突っ込んだ。直撃したエビルは吹っ飛び、ダメージを負ったため起きあがれなかった。


処女充電(メイデンチャージ)Lv2でも倒しきれないか」

『せやけどきいてるで。おいちゃんのサポートさまさまや』

「俺がスピード特化だったから忘れてたよ。おいちゃんのテレポート」




 カケルが姿を消した理由。それはおいちゃんのテレポートによるものである。

 今までの戦闘ではカケルの戦闘スタイルが走りに長けていたためテレポートを使う必要性がなかったし、バトル中はカケルが細かく動くためおいちゃんがテレポートの狙いを定められなかった。またおいちゃんのテレポートは、乙女戦士(ヴァルゴファイター)単体のテレポートは可能だが、エビルや他の人間と触れているときには使用できないというデメリットもあった。

 しかし今回は、おいちゃんのテレポートが完全に補助へと活躍した。


『このワールドきてからバトルで一度もつかわんかったから忘れとったわ』

「この感じでもう一度乙女による防壁(バリアー・バイ・ザ・メイデン)を叩き込む」


 カケルとおいちゃんが勝機を見出した。

 しかし物事はそう上手く行かない。




「おおおおりゃあああああああ」


 エビルと対峙するその向こう側。カケルの向きと逆側からトールが叫びながらエビルに突っ込んでいく。その手には売り物を勝手に拝借した傘が握られている。

 おいちゃんはぎょっとし、カケルは「はあっ!?」と声をあげる。

 トールは傘を振り上げるが、エビルも翼でトールを叩きつけようとする。巨大な風を作り出すその翼で叩かれて、一般人が無事に済むはずがない。


「おいちゃん!」

『おうよ!』


 カケルの言葉においちゃんが返事をして、テレポートを唱える。

 翼がトールを潰す前に、カケルがトールの前に飛んだ。そしてトールの腹を抱えて翼から逃げ切った。その際に翼から与えられる風で飛ばされる。


「ぐおうっ」


 衝撃にトールが声をあげた。なんとか地面に着地するとカケルは目を鋭くし、乱暴にトールを放った。背中と尻を強く打ち、トールは痛みに顔を歪ませた。


「何しにきた!?」


 カケルはトールを見下ろしながら怒鳴りつける。トールもカケルをにらみつけた。


「うるっせぇ! テメェに指図される覚えはねぇよ!」

「状況を見ろ。お前みたいのが出てきてなんとかなると思ってるのか」

「お前だって女のくせに出しゃばってんじゃねぇか!」

「はっきり言わないとわからないのか? 邪魔だから下がってろ」

「んだと!?」


 トールは怒気を強める。手にしていた傘は飛んでいってしまったので、右手の拳を握りしめる。そんなトールにカケルは苛立ちを通り越して、情けなさを感じていた。

 そんなカケルの肩をテッシーンとおいちゃんが叩く。


『カケル、あれみてみい!!』


 おいちゃんの声に焦りが混じっている。カケルがエビルの方を向くと目を見開いた。

 エビルが空を飛び、アーケードに向かってクチバシを突き始めた。アーケードに穴が開いていく。


『空とばれたらヤッカイやぞ』


 おいちゃんがカケルをエビルの後ろへとテレポートさせた。しかしカケルの姿が消えた瞬間、エビルが動いていた。トールに向かってクチバシを突くように急降下していく。カケルの動きを読んでいたようだ。

 テレポートの使用により宙に飛んでいたカケルは、エビルが飛行することで生じる風に巻き込まれ飛ばされる。

 トールに向かうエビル。カケルはトールを指した。


「おいちゃん!!」


 おいちゃんもカケルの言わんとすることを理解し、すぐにテレポートを使用する。

 トールとエビルの間にカケルが現れる。トールを抱えて右に飛ぶ。するとすれすれのところでクチバシが突き刺さった。しかしエビルはクチバシを抜くなり、左の翼を振り上げた。風が生じる。その風はトールを抱えたカケルに直撃する。吹き飛ばされたカケルは建物の壁に頭を強く打つ。


「あ、ぐっう」


 乙女戦士(ヴァルゴファイター)となって頑丈になっているが、人間と同じように頭は急所だ。強打されればダメージをくらう。カケルはうめき倒れ込んだ。頭を強く打ったことで、焦点が定まっていない。起きあがろうとするも体に力が入らない。








「おい、おい!」


 トールがカケルの腕から離れ、その肩を掴んで揺する。しかし少しばかり声が漏れるだけでまともな反応になっていない。



『ぎぃゃああ、ぎぃゃあああああ』



 トールが鳴き声の主を見る。エビルの鋭い目がカケルたちをにらんでいた。そしてゆっくりゆっくりとそちらに歩み寄る。威圧感を与えるように、その歩みは遅い。

 エビルににらまれ、トールはぞっとした。それこそ今すぐ逃げ出してしまいたいほどに怖かった。


 トールはカケルを見る。乙女戦士となっているため、トールはこの女がカケルだと知らない。だからこそトールは逃げることができなかった。




(「邪魔だから下がってろ」)




 そう言われた通り、トールはこの場において邪魔だった。

 庇われて、戦っていた者が怪我を負う。


「うるせぇ・・・・・・、うるせぇ、うるせぇ、うるせぇ!!!」


 トールが恐怖を払拭させるため大声を出す。立ち上がり、エビルをにらみつける。


「ここで逃げたらめちゃくちゃかっこわるいだろうが! 来いよ鳥頭! ぶっ殺してやる!!」


 そう言い放つ。するとそれに呼応するかのように、エビルもトールに向けて大声をあげる。その威力に思わず決意が揺らいでしまう。一歩下がってしまった。

 少しずつ恐怖が復活し始め、やっぱり逃げようかと思ったとき。




『チカラガ、ホシイカ?』


 めちゃくちゃ良い声がした。トールの肩においちゃんがテシッと手を置いた。




 トールはおいちゃんを叩き落とす。


『なにすんやあああああ、イチドはいってみたいセリフやったんやぞ』

「うっせぇ! テメェみたいなショボイ化け物気にしてられっかよ!!」


 トールの言葉においちゃんはムキーッと湯気を出して怒り出す。


『このボウズ、はらたつわあ。もうええ。キョカなしでめたもるふぉーぜ☆させたらああああ』


 おいちゃんはトールを指した。

 そして「めたもるふぉーぜ☆」と叫ぶ。



 トールの体が白く輝きだした。

一度言ってみたい台詞


「力が欲しいか?」

「俺の右腕が火を吹くぜ!」

「ふふん、まだまだ修行が足りないでござるよ」

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