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第2話 死にかけの願い

前話同様シリアスチック


 カケルの耳に、奇妙な音が届く。不意にカケルは空を見上げた。

 青空の中で一点、黒い異物が見えた。そしてそれは急速に、落下している。

 違和感に背筋を冷たい汗が伝う。思わずココロの肩を掴み抱き寄せた。


「カ、カケルくん!?」


 驚いたココロが呼びかけるが、それもすぐに何かの落下音とその衝撃にかき消される。カケルはココロを抱きしめたまま、傍の壁に背中を打ち付ける。痛みに顔を歪めるが、すぐに前を向く。

 路地には大きなひび割れが広がっている。衝撃による土埃のため、何が落ちたのかはわからない。だがカケルの本能が逃げろと叫ぶ。


 何が起こっているのか理解できていないココロの手を掴み、来た道を戻ろうと足を踏み出す。しかしそれはすぐに阻まれた。カケルの足を何かが掴み地面に倒れる。その際に手の力が弱まった。同時にココロの姿が離れ、そして悲鳴があがる。

 カケルが急いで体を起こせば、ココロは黒い太い紐のようなもので体を縛りあげられていた。宙に浮かんでいるココロは顔を真っ青にして目は涙で潤んでいる。カケルがココロのもとへと駆け寄ろうとすると、すぐさま新しい黒い紐がカケルの首を締め、地面に叩きつける。カケルは黒い紐を両手で掴むが、ヌルヌルとしたそれは上手く掴めない。これは紐というよりも触手と説明したほうが正しいのかもしれない。




『・・・・・・ニンゲン、2ヒキ。ヒヒ、ウマソウ』



 低く、しゃがれた声が土埃の向こうから聞こえる。

 カケルは無理矢理顔を上げると、次第に土埃が消え何かが姿を現した。

 それは人間とはほど遠い生物だった。小説や漫画などに登場する魔物といったほうが近いかもしれない。全身を黒く染め上げ、ギョロリとした金色の目。そして顔を裂くかのように大きな赤い口からは涎のような紫の液体がボトボトと滴り落ちた。体つきは2mを優に超えているだろう。ガッシリとした体の周りには、地面から続々と生える触手が広がっている。


『ニンゲン、クウ。シネ』


 その黒き魔物と声に反応するように、触手の力が込められる。

 ココロは悲痛の叫びをあげる。カケルも首を絞められ、開いた口から声にならない声を発する。カケルの意識が少しずつ霞み始めた。


(待ってくれ。頼むから、ココロは。ココロだけは)


 カケルはうっすらとし始めた視界の中でそう思う。ココロだけは命に代えても守りたかった。自分が走れなくなり、自棄になって周囲に当たり散らし、暴力を振るっていてもココロは傍にいてくれた。その時のカケルはココロにすか罵倒し、何度か殴ったこともある。誰もがココロを心配し、カケルから距離をとるべきだと告げた。しかしココロはそれを拒否してカケルを励まし続けた。もしココロがいなかったら、未だにカケルは周りに八つ当たりをし続けていたかもしれない。


(お願いだ。何でもするから、ココロを、助けてくれ)


 カケルはそう神に祈るしかなかった。





『あにさん、あにさん。なんかもう死にそうじゃーん。ちょ、やばないやばない? あにさん、おいちゃんのことわかる? みえる? ってかきいてる? あっれ、ここ日本語圏内だったよな。英語のほうがいいんか? ええと、ワタシノハナシ、キコエマスカー?』



 めっちゃいい声をした何かがカケルの肩を叩き出した。





次から雰囲気変わります

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