第1話 日常の終わり
小説家になろう初投稿。
拙い文章ですが楽しんでいただければ幸いです。
5月中頃、早朝。高校へと向かうため1人の少年が歩を進める。
少年の名は大地駆。公立高校に通う1年生だ。
茶色の混じった短い黒髪。身長は175cm。体格はほどほどに引き締まり、顔つきも高校1年にしては少し大人びている。しかし買ってまもない学ランがどこか幼さを醸し出していた。
「カケルくーーん!!」
カケルの背後から声がかけられた。振り返ると1人の少女が大きく手を振りながらカケルのもとへと走り寄る。少女は高瀬心。カケルの家の向かいに住む幼なじみの高校1年生。濃茶の髪をふたつに緩く結い、走る度にふわふわと揺れる。ココロはカケルの隣に着くと、にこにことした顔でカケルを見上げる。黒目の大きいまん丸の瞳は、身長150cmと相まって小動物のような可愛らしさがある。
カケルはココロの笑顔に一瞬だけ息がつまり、すぐに目をそらす。ほんのり熱くなった顔を隠すように右手で頬をさする。ココロは少しだけ首を傾げたが、すぐににっこりと笑う。
「おはよう、カケルくん。カケルくんと会うの久々だから嬉しいなあ。別の高校になってから、なかなか会えなくなっちゃったもんね」
ココロはカケルとは違う高校に通っている。町から電車で2駅ほど離れた高校だ。ちなみにカケルは自宅から徒歩10分ほどにある高校である。
「そうだな。というよりココロは時間大丈夫か。お前もっと早くに家出てなかった?」
「うん。・・・・・・今日は部活の朝練がお休みだから」
「そうか。ココロの高校、新体操部強いからな。がんばれよ」
カケルの言葉にココロは沈んだ表情で小さく頷く。
ココロの元気が急になくなったのは、理由がある。それはココロにではなく、カケルが原因だ。
カケルは中学時代、全国レベルの短距離走者だった。しかし最後の大会前に右脚を痛め、それ以降全速力で走ることを止められてしまった。少し走るだけでも膝を中心に激痛が現れてしまう。走れなくなった当時、カケルは自暴自棄に近い状態となり、家族や友人やココロにも迷惑をかけた。しかししばらくして憑き物がとれたかのように、カケルはおとなしくなった。
しかしそれはカケルの心が燃え尽きたようなものだった。それまでは陸上を中心に何にでも熱心に取り組み、周囲の人間を支え共に高め合った。瞳はキラキラと輝き、未来に夢を見ていた。だが、脚の故障によってカケルは変わってしまった。
「カケルくん。ーー学校、楽しい?」
「別に。特に何をすることもないし」
カケルは前を向いたまま、感情をこめることなくそう言い切った。
何をするにも無気力になった。楽しめなくなった。昔の友人と自分から接することもなくなったし、自分から新たに挑戦することをしなくなった。ただただひっそりと日常を過ごすだけになった。
物心ついた頃からカケルの傍にいたココロには、それは胸が潰れそうなほどに辛いことだった。中学で新体操はやめようと思っていたほどだ。進路選択の時にカケルが「俺のことは気にするな。ココロが部活を楽しんでるの、俺好きなんだよ」と言ってくれなければ、ココロは既に新体操をやめていただろう。
「はーあー、せめてカケルくんの高校に新体操部があればよかったのに。そしたら毎日一緒に登校できたのになあ」
「中学までほぼ毎日一緒に通ってただろ。それにココロの高校は特に新体操部に力を入れてるところだし、必死に受験勉強して入学できたんだから文句言うなって」
カケルはココロの頭をポンポンと軽く叩く。それはココロがとても気に入っているスキンシップだ。それだけで落ち込んでいたココロの表情が明るくなる。
カケルはこの幼なじみが自分を気にかけているのがとても嬉しく、そして自分にとっての救いでもあった。つまらない日常だが、カケルにとって走ることを失った今、1番大切なのはこの幼なじみだった。
こんななんでもない朝の一時が、今のカケルにとって何よりも大事だった。
しかし、そんな日常もあっさりと変わってしまう。
カケルの脚が壊れたのと同じように。
数時間後に続き送ります。
文章よりもスマホ操作に悪戦苦闘中。




