第3話 緊急会議いいいいい
シュンヤの姿を見つけた途端、カケルは頭を抱えた。
(くっそ、まさかこんなすぐシュンヤの顔見ると思わなかった。ああああああ、鳥肌が。シュンヤに告白されたことを思い出すと鳥肌が凄い。ってか会ってすぐに告白するとか馬鹿なのか、あいつはよ!!)
決して声に出さず、しかし心中では先ほど会ったときの衝撃を思いだし怒りがこみ上げる。
シュンヤは辛そうな顔をしてカケルを見て、そして拳を握り真剣な顔で2人が座る席へと移動する。シュンヤが席の側に行っても、カケルは頭を抱えてうつむいたままだ。ココロと視線が合う。ココロも気まずそうに笑った。
シュンヤは勢いよく頭を下げた。
「カケル、悪かった!!」
「何が!?」
急な謝罪にカケルが頭を上げる。顔色は真っ青だ。
(バレたか!? バレたのか!? 頭何発殴れば記憶飛ぶ!?)
カケルの心中では物騒な考えが過ぎり、無意識に右の拳を握っていた。ちょうど頭を
下げている今ならば、頭を殴ることも容易ではないかと。
カケルが軽い混乱により暴力が実行される前にシュンヤが再度口を開く。
「お前がケガしてから今まで、俺お前をずっと避けてた。ずっと謝りたかったんだ」
「あ、なんだ。そのことか」
その言葉の意味に、カケルは安堵する。さっきの乙女戦士がカケルとバレたわけではなかったのだとわかると、思わずソファにもたれかかる。
驚いたのはシュンヤだった。カケルの様子にギョッとして姿勢を戻す。
「カケルは許して、くれるのか。俺のこと」
「え、あ、ああ。許すも何も悪いのは俺だったろ」
あまりにも安心したため、気まずさといったものがカケルから抜けていた。
先ほどの衝撃の再会がなければ、カケルもシュンヤと同様どうすればいいかわからなかったはずだ。カケル自身の八つ当たりでココロやシュンヤたちを傷つけていたのだから。
カケルはひたすら、自分と乙女戦士化した自分がイコールにならなかったことに安心していた。
「シュンヤ悪かった。俺あのときどうかしてたんだ。1人で周りに当たり散らして、馬鹿みたいだったよな。ココロもあのときはごめん」
「い、いいいいや、カケルも大変だったしな。俺なんかすぐカケルから距離とっちまったし」
「そ、そうだよ。カケルくん、走るの好きだったもん。自暴自棄になるのもしょうがないよ」
あまりにも不自然なほど自然にカケルの口から出てくる謝罪。大慌てでシュンヤとココロが手を振った。カケルは笑いながら、自身の隣のスペースを手で叩く。
「いいからここ座れよ。久しぶりに会うんだしさ」
「お、おお、おう。カケル、お前めちゃくちゃ機嫌よくねぇか。何があった」
「いいや、別に。気にすんなって」
あまりのカケルの上機嫌っぷりにシュンヤは戸惑う。カケルの向かいにいるココロは凄く感動した顔でカケルを見ていた。シュンヤは躊躇いながら、カケルの隣に腰掛ける。
シュンヤが腰掛けたのを見て、ココロが話しかける。
「シュンヤくん久しぶり。中学の卒業式以来だよね」
「おう。2人は確か違う高校だったよな。今もこうやって会ってるんだから仲いいよな。それよりココロちゃん、どうしたんだよその左腕」
「ちょっとケガしちゃって。シュンヤくんはどこの高校行ったんだっけ?」
ココロの問いにシュンヤは口ごもり、カケルをチラリと見た。
「県外のS高校だけど・・・・・・」
「ああ、あの陸上の強豪校か。妥当なところだよなシュンヤなら。でもあそこ寮生活じゃなかったか?」
カケルが普通に会話に加わったことに、シュンヤはほっとする。カケルの脚が故障したことを気に病んでいるからだ。
「昨日突然お袋が救急車で運ばれたって聞いて、部活休んで飛んできたんだよ」
「だ、大丈夫なのか。シュンヤのお母さん」
「ただのぎっくり腰だってさ。親父がパニックでこっち電話してきたから何事かと思ったよ。で、先生に電話で相談したら今日の部活休みにしてもらった。明日からまた部活だけどな」
肩をすくめたシュンヤに、カケルは頬杖をついて笑った。
「頑張れよ。まあ、昨年の全国大会上位者に言うことじゃないけどな」
「・・・・・・カケルの方が速かったけどな」
表情を曇らせるシュンヤ。カケルはそのこめかみを強すぎない程度で殴った。
「いって、いった!?」
「お前、それ嫌みかよ」
「ち、ちちちちち違ぇよ。そんなんじゃねぇ」
「それなら変なこと気にせず、速く走ることだけ考えろ。シュンヤが遅くなったら、お前と競い合ってた俺まで遅かったって思われるだろ」
こめかみを押さえていたシュンヤは、カケルの言葉にキョトンとして、意味を理解すると深くうなずいた。小さく「サンキュ」という言葉がカケルの耳に入る。
ココロはそんな2人を見て嬉しさに笑顔が止められなかった。
「あ、そういえばさ」
何か思い出したかのようなシュンヤ。
「2人は知ってるか? 赤い長髪をポニーテールにした赤いドレス着た女の子なんだけど」
シュンヤの言葉にカケルがフリーズする。ココロですら笑顔から戸惑いの表情に変わっている。
「え、と。シュンヤくん、その女の子がどうしたの?」
カケルが何も言わないので、ココロが問いかける。
するとシュンヤは顔を赤くして、頭をかきながら辺りをチラチラと視線を泳がせた。その表情はニヤニヤ、ではなくどこか嬉しそうである。
やめろ、とカケルは念じた。余計なことを言うな、と呪詛をかけるように思った。
しかし現実は無情である。
「実は、その子に一目惚れしちゃって・・・・・・」
「えっ」
シュンヤの一言にココロが絶句する。カケルは
「ココロオオオオオオオオ、緊急会議だああ!!!」
机を叩いて絶叫した。シュンヤやココロだけでなく、店にいた客も、店長や店員の青年や少年が目を丸くする。
カケルとココロが店長たちや客に頭を下げながら、いったん店の外へと出る。外へ出るなりココロは驚いた顔でカケルを見上げていた。
「カ、カケルくん。どういうことなの?」
「できれば話したくなかったんだが」
カケルは遠い目をしながら、ココロにことの次第を話し出す。真剣な表情でそれを聞いていたが、徐々に「あちゃー」と言いたげな顔に変わっていく。
「そっかぁ・・・・・・。お疲れさま、だね」
「ココロ、ちょっと聞きたいんだが。乙女戦士になったときって、顔つきも変わるのか? 俺、乙女戦士になった自分を鏡で見たことないんだ」
「うーん、どっちとも言えないかな。カケルくんの顔を違和感なく女の子にしたら、こんな感じになるのかな。っていうぐらい。ぱっと見ならわかんないと思うんだけど」
「ココロはすぐ俺って気づいたよな・・・・・・」
カケルが疲れ切った顔でココロを見る。きょとんとしたココロは首をかしげた。
「だって私に呼びかける声の感じとか、心配そうな表情とか、まんまカケルくんだったよ」
「シュンヤにバレる可能性は?」
「0ではないかな」
カケルは頭を抱える。今は一目惚れという嫌なフィルターもかけられているため気づかれていないが、カケルが乙女戦士だとバレることもある。
「カケルくん、いつまでもここにいるわけにもいかないし戻ろうよ」
「俺だけ帰っちゃダメか?」
「かえってカケルくんが何か知ってるって思われちゃうよ」
ココロの言い分にカケルは何も返せず、2人して店の中へと戻った。
シュンヤのいる席には、シュンヤが頼んだのだろうサンドイッチがあり、シュンヤがもぐもぐそれを食べていた。
「あ、帰ってきた」
サンドイッチを食べるシュンヤの隣に、カケルはおそるおそる座る。ココロもカケルとシュンヤの向かいに座った。
「そうそうシュンヤくん。さっきの女の子のことなんだけど」
「何か知ってるのか!?」
話し出すココロにシュンヤが食いつく。カケルはギョッとしてココロを見る。
ココロは可愛らしくにっこりと笑う。
「乙女戦士っていう正義の味方なんだって。私も詳しくは知らないけど」
「俺は今年厄年か何かなのか」
カケルは頭を抱えて部屋に座り込んでいた。ココロは苦笑しながら、用意してもらったジュースを口にする。
あの後、質問責めをしたシュンヤに対しココロがすべて受け答えをしていた。カケルは何も言うことができず、冷や汗をかきながらそれを聞いていた。そしてつい先ほど2人はシュンヤと別れたのだ。
「カケルくんもそこまで気にしなくていいのに。むしろ変に思われるよ」
「余計なこと口にしそうだったんだよ」
そのときポンッと2人の間においちゃんが姿を見せる。
『カケル! エビルのけはいや!』
瞬時にカケルは表情を戻し立ち上がった。
「どこでだ?」
『ここからちょいとさきの運動場や。めたもるふぉーぜ☆はここでしとくか?』
「ここで変身する。それと変身後にテレポートも頼む。チャージのこともあるが、被害が出た方が嫌だ」
それにおいちゃんが力強く返事をし、カケルを乙女戦士へと変身させる。
「じゃあ、ココロ行ってくる!」
「うん。私も後から追いかけるね」
「ココロも来るのか!?」
驚くカケルにココロは力強くうなずいた。今まで何度も助けられているカケルとしては無理に止めることはできなかった。無茶をしないよう強く言いつける。
そしておいちゃんのテレポートの言葉とともに、カケルは部屋から姿を消した。
1日1作品継続中。
今更だがこれはボーイズラブに入るのか。




