第10話:私の魔法無効化は、あなたを守るための盾
謁見の間で無様に這いつくばったアルフレート様でしたが、その瞳にはまだ、醜い執着の火が消えていませんでした。
「……ふざけるな。私を誰だと思っている。たかが無能の女一人に、この私が……!」
広間を去ろうとする私たちの背後に向かって、彼は震える手で杖を掲げました。
狂気に駆られた彼の魔力が、どす黒く膨れ上がります。
「行かせない……!私の所有物にならないのなら、いっそここで壊してやる!食らえ、我が王家の秘術を!」
放たれたのは、アステリア王家に伝わる禁忌の攻撃魔法。巨大な漆黒の雷光が、凄まじい轟音とともに私たちの背中へと迫りました。
「エルナ、危ない――!」
ギルバート様が瞬時に私を庇い、自らの魔力で防御しようと動きました。
けれど、昨夜から無理を重ねていた彼の魔力は、一瞬だけ揺らぎ、制御が遅れます。
(……ギルバート様が、傷ついてしまう!)
愛を知らなかった私に、光をくれた人。
この人を傷つけるさせることだけは、絶対に嫌。
私は反射的に、ギルバート様の前に踏み出しました。
そして、迫りくる死の雷光に向かって、祈るように両手を広げたのです。
「――っ、いけません!」
その瞬間でした。
広間全体を揺るがすような衝撃が走る……はずでした。
しかし、訪れたのは奇妙なほどの『静寂』。
ドゴォォォ、空気を震わせていた黒い雷光は、私の手のひらに触れた刹那、パリンと硝子が割れるような音を立てて霧散しました。
凶悪な魔法は、ただの柔らかな光の粒へと姿を変え、私の周囲にキラキラと降り注ぎます。
「な……っ!?私の最高位魔法を……手も触れずに消しただと……!?」
アルフレート様が絶叫しました。
いいえ、手が触れていません。ただの私の『無効化』の領域が、彼を守りたいという一心で、今まで以上に強く、広く展開されただけのこと。
「……私の、勝ちですわ。アルフレート様」
私は、光の粒の中で静かに告げました。
魔法を消す力。それは人を傷つけるための呪いではなく、大切な人を守るための、私だけの盾だったのだと、初めて確信できたのです。
隣で目を見開いていたギルバート様が、震える手で私を抱き寄せました。
「エルナ……君は、本当に……」
彼の瞳から、一筋の涙が零れ落ちます。
それは、長年彼を苦しめてきた魔力の恐怖から、完全に解き放たれた瞬間の涙でした。
一方で、魔力を使い果たし、切り札さえも無効化されたアルフレート様は、幽霊でも見たかのような顔でその場にへたり込みました。
彼を守る魔法の光はもうどこにもなく、冷たい床の上に、ただの無力な男が転がっているだけでした。
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