第2部 27話:『嵐の前の静けさ? 陽だまり町、大掃除大会!』
「ヌンッ!! 佐藤よ、心が晴れたのなら、次はこのアパートの『淀み』を物理的に排除するぞッ!!」
早朝、201号室のドアを(鍵がかかっているのに)大胸筋の圧力で押し開け、大家・轟さんが乱入してきた。
「大家さん……。心は晴れましたけど、眠気はまだスルーできてないんです。大掃除って、まだ年末じゃないですよ」
カズマが布団の中から抵抗しますが、大家さんは止まらない。
「何を言うかッ! 悪しきデストロイヤーとの戦いで、陽だまり町には微
細な負の塵が溜まっている! これを筋肉の熱気で蒸発させ、ホウキで宇宙の果てまで掃き出すのだッ!!」
大家さんは、巨大なモップを片手で軽々と振り回し、プロテインの粉末を「お裾分け(研磨剤)」として床にバラ撒き始めた。
「……店長。今日のマッスルマートのシフト、大掃除につき『ま、いいか』で欠勤させてください……」
カズマは悟りを開いた瞳で、枕元の耳栓を付け直そうとしましたが、その耳栓すら大家さんの「バキューム・ブレス(超肺活量による吸塵)」によって吸い込まれていった。
「ちょっと待って! 掃除なら私の最新発明『次元ゴミ収集機・シュレディンガー君』に任せて!」
白雪が持ってきたのは、掃除機というよりは、巨大な重力子加速器にノズルを付けたような不穏な物体だった。
「白雪さん。それ、吸い込んだゴミはどこに行くんですか?」
「え? 理論上は『誰も見ていない異次元』のどこかよ。だからゴミ問題は一挙に解決!」
白雪がスイッチを入れた瞬間、マッスル・コートに凄まじい吸引力が発生しはじめた。
ホコリやチリだけでなく、空間の「色」や「音」までがシュルシュルと吸い込まれていく。
「……。……。……白雪。……。……押し入れの中、……吸われた。……。……暗殺者の、……予備武器。……。……異次元、……武装化。」
セツナが、空になった押し入れを覗いて愕然としている。
「まずいですよ白雪さん! 掃除機の中でゴミとセツナちゃんの武器が混ざって、変なモンスターが生まれてる気がします!」
案の定、掃除機の排気口からは、ホコリとクナイが融合した「ホコリ・ゴーレム」が次々と吐き出され、アパートの廊下で「ヌオー!」と叫びながら増殖を始めた。
「――あーもう、騒がしいなぁ。……ホコリの化け物くらい、放っておけばいいのに」
カズマは、廊下を埋め尽くすホコリ・ゴーレムたちの間を、ゴミ出しに行くような足取りで通り抜けた。
ゴーレムたちが鋭いクナイの爪で襲いかかり、カズマの『覚醒スルー・パッシブ』は、その存在自体を「ただの浮遊物」として認識。
爪が体に触れる直前に、カズマの体がわずかに次元をスライドさせ、物理法則をスルーしていく。
「……あ、そこ。掃除の邪魔なので、ちょっとどいてもらえます?」
カズマがそう言って、ゴーレムの核となっている『負の感情のチリ』を指先でチョンと突きました。
すると、デストロイヤーを打ち破ったカズマの「浄化されたスルー波動」が伝染し、モンスターたちは「……ま、いいか」と呟きながら、ただの清潔な綿菓子へと変わっていく
。
「佐藤……! お前のスルーは、もはや掃除機すら超えるというのか! 忘れてくれ、ただの『歩く空気清浄機』だ!」
長官が、番台(の残骸)の上で感銘を受けていた。
夕方。
大家さんの猛烈な雑巾がけ(時速80km)と、白雪の重力調整、そしてカズマの「存在スルー」によって、アパートは新築以上に輝いていた。
「……ふぅ。お疲れ様でした。結局、一日中掃除してましたね」
カズマは、ピカピカになった床に寝転び、よし江お母さんから届いた『お掃除お疲れ様・冷やしおじや』を啜っていた。
「でも見て佐藤さん! アパートの資産価値が未来のデータ上で300%アップしたわよ!」
白雪がホログラムを見せながら喜び、セツナは新しくお裾分けされた「ピカピカのクナイ」を満足げに磨いている。
『……ニャア。(カズマ。……お前、気づいてねぇだろ。……お前が今日スルーしたホコリの化け物たちが、宇宙に飛んでいって新しい星の材料になったぞ。……お前、ついに掃除ついでに創生神になっちゃったな)』
「星なんて。……僕はただ、今夜ぐっすり眠れるくらい部屋が綺麗になれば良かっただけですよ」
カズマは、猫――未来の俺を撫でながら、新しく白雪に作ってもらった
『超次元遮音耳栓』を耳に装着した。
凪原市陽だまり町。
汚れ一つない部屋に差し込む夕日は、昨日よりも少しだけ明るく見えた。
過去を乗り越え、大掃除を終えたカズマたちの日常は、ここからまた新しい「お裾分け」を積み重ねていくのっだった。




