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第2部 第18話:『筋肉の祭典! 陽だまり町オリンピック開幕!』

銀河皇帝ゼノビアが「おじや」の虜となって帰還してから数日。凪原市陽だまり町は、再び異様な熱気に包まれていた。


商店街「マッスル・ロード」の入り口には、白雪が製作した『ホログラム万国旗(全5次元対応)』がたなびき、大家さんが自らコンクリートを練って一晩で作り上げた『聖火台(プロテインの粉末を燃やす仕様)』が、怪しくピンク色の炎を上げている。


「……店長。何ですか、あの看板。『第一回・陽だまり町・次元超越筋肉オリンピック』……?」


カズマは、マッスルマートの軒先に吊るされた巨大な横断幕を、いつもの「スルー・アイ」で見つめていた。


「佐藤君、見ての通りだよ!! 宇宙人にスクワットを教えた大家さんの名声が広まりすぎて、全次元から『我こそは最強の筋肉とお裾分けの持ち主だ』という猛者たちが集まってきちゃったんだ!!」


店長は、すでに審判用のタイトなポロシャツ(大胸筋でボタンが3つ弾け飛んでいる)を着て、ホイッスルを噛み締めていた。


「……。……。……カズマ。……。……参加賞の、……巨大おにぎり。……。……あれは、……私の標的。」


セツナが、おにぎりの模型を見つめてナイフを研いでいる。


「いいですね、お祭り。……あ、白雪さん。あのハードル、地面から10メートルくらい浮いてますけど、あれ人間が跳ぶものですか?」


「ふふ、佐藤さん。あれは『反重力ハードル』よ! 身体能力じゃなくて、『どれだけ重力を無視できるか(スルー能力)』を競う新種目なの!」


白雪は、ガントレットで競技場の物理法則を勝手に書き換えながら、楽しそうに笑っていた。


やがて、開会式のファンファーレが鳴り響く。奏でるのは、未来から来た「音波振動筋肉楽器」を操る、大家さんの師匠・大剛鉄子である。


「さあ、有象無象の筋肉ども!! この『陽だまり町』の土を踏んだからには、私のカウントに合わせなさい!! ……準備体操、デッドリフト1トンを100回!! ヌンッ!!」


鉄子さんの号令一閃、参加者であるサイボーグや四本腕の異星人、そして現代のボディビルダーたちが一斉に地面を穿ち始めた。地面が揺れ、商店街のガラスが震える。


「師匠!! 聖火ランナーは、やはりあの方しかいないでしょう!!」


大家さんが指差す先、メインストリートを時速300キロで疾走してくる影があった。

「……あ、ハスハラ君。……いつの間にか、聖火ランナーにされてる」


カズマのバイトの後輩・ハスハラが、巨大なプロテイン火炎放射器(聖火)を背負い、涙目で「ひ、ひぃぃぃ! 止まりたい! 止まらせてくれぇぇ!」と叫びながら駆け抜けていく。


彼の背後には、速度を維持させるために白雪が放った「追跡型・お尻ペンペンドローン」が群がっていた。


「ハスハラ君、頑張って。……終わったら、よし江お母さんから届いた『疲労回復・マンドラゴラサラダ』をあげるからね」


カズマの優しい(?)声も、音速の壁に遮られて届かない。


聖火が聖火台に点火され、ピンク色の炎がさらに高く燃え上がった。


第一種目:スルー・障害物競争。 種目名は『お裾分けを運べ! 限界突破スルー・レース』。


ルールは簡単。

トレイに乗せた「熱々のおじや」をこぼさず、周囲で起こる爆発や時空の歪みを完全に無視スルーしてゴールに届けるというものだ。


「……。……。……暗殺者アサシンの足、……見せる。……。……おじやは、……一滴も、……零さない。」


セツナが風のように走り出す。彼女の行く手には、白雪が設置した「強制笑わせトラップ」や、大家さんの「ポージング・プレッシャー」が立ちはだかる。


「ヌンッ!! セツナよ、私の広背筋の広さに惑わされるがいいッ!!」


大家さんがコース上でマッスルポーズを決め、空気圧で衝撃波を放つ。しかし、セツナは空中歩法でそれを受け流し、無表情のままおじやを運び続ける。


そこに未来の「ドーピング・サイボーグ」が乱入。


『……効率ダ。……おじやをナノマシンで固定し、最短経路をワープする……』


「あ、ワープは反則ですよ。……それに、おじやにナノマシンを入れたら、味が変わっちゃうじゃないですか」


観客席で見ていたカズマが、ふと手元の「スルー・パッシブ(耳栓)」のダイヤルを回した。


すると、カズマを中心に「静寂のフィールド」が展開。 ワープしようとしたサイボーグは、カズマの放つ「ま、いいか」という脱力波動に飲み込まれ、ワープ回路が「やる気」を失って停止した。


セツナのおじやはカズマの波動に包まれ、重力をスルーしてふわふわとゴールへと運ばれていく。


競技が終わる頃には、陽だまり町中が心地よい「筋肉の疲労」と「おじやの匂い」に包まれていた。


表彰台に立ったのは、無表情のままおじやを完遂したセツナ。そして、なぜか「一番スルー能力が高かった」として特別賞を受賞したカズマだった。


金メダルとして授与されたのは、白雪が時空圧縮技術で作った『一生食べても減らない、究極の特大おにぎり』。


「……。……。……おにぎり。……。……カズマ、……半分、……お裾分け。」


セツナが、自分の身長ほどもあるおにぎりをカズマと分け合おうとする。


「ありがとう、セツナちゃん。……でも、これどうやって保存すればいいのかな。白雪さん、冷蔵庫に入りそう?」


「無理ね! でも大丈夫、私の『四次元ポケット型・保冷バック』があるわ。……あ、でもこれ、たまに中の食品が江戸時代にタイムスリップしちゃうから気をつけて」


『筋肉オリンピック』という名のカオスな祭典は、こうして陽だまり町の夜に溶けていった。

全次元の猛者たちは、大家さんに「次はスクワット2万回だ!」と追いかけ回されながら、満足げに(?)それぞれの次元へ帰っていく。


『……ニャア。(カズマ。……お前、気づいてねぇだろ。……お前がスルーしたあの「サイボーグのワープ」、……実は未来の「歴史改変テロ」の予行練習だったんだぜ。……それを「やる気」ごと消し去るとは……。お前の脱力、いよいよ核兵器より怖くなってきたな)』


猫――未来の俺は、カズマの肩で、金メダルのおにぎりを少しだけお裾分けしてもらいながら、陽だまり町の夜空を見上げた。


どんなに凄いアスリートが来ても、この町の一番はカズマの「ま、いいか」なのだと、確信しながら。




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