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第2部16話『201号室、ついにテレビ出演!? 「突撃! 隣の晩ごはん(時空版)」!』

「――こんばんはー! 『突撃! 隣の晩ごはん』でーす! 幸せな食卓、見せてくださーい!」


アパート『マッスル・コート』の薄いドアを、巨大な“幸せのしゃもじ”を持ったディレクターが叩く。背後には巨大なカメラと照明スタッフ。


「あ、テレビの方ですか。どうぞ。今ちょうど、お裾分けのおじやを作ってるところなんです」


カズマはいつもの“スルー・ホスピタリティ”で、土足で上がろうとするスタッフを丁寧に制止し、大家さんの使い古しで少し重いスリッパへ誘導する。


「うわぁ、いい匂い! ……って、何ですかこの部屋!? 壁に大きな穴が開いてて、隣の部屋でマッチョな男性が……えっ、ベンチプレスしながらプロテインを飲んで……?」


ディレクターがカメラを“友情のゲート”越しに大家さんへ向ける。


「ヌンッ!! 映せ!! 私のこの、ゴールデンタイムに相応しい大胸筋の躍動を!! 今日の晩ごはんは……筋肉へのご褒美、『鶏のササミ(生)』だッ!!」


「大家さん、テレビだからって生で食べないでください。……あ、こっちは白雪さん。自称・発明家です」


カズマが紹介する横で、白雪はカメラのレンズに勝手に“次元解析フィルター”を取り付けていた。


「ちょっと! このカメラ、画素数が低すぎて私の美しさが再現されないわ! 今、このレンズを『超高精細・素粒子走査型』に魔改造してあげる。……これで視聴者の脳波を直接書き込めるようになるわよ!」

「白雪さん、それテロになっちゃうから!」


カズマのツッコミが響く中、収録は“史上最も危険なグルメ番組”としてスタートしてしまう。


テレビ収録の喧騒の裏で、猫――未来の俺は窓際で鼻をヒクつかせていた。


『……おいカズマ。テレビのライトに浮かれてる場合じゃねぇぞ。外のゴミ捨て場に“時空経済犯罪組織”のスカウタードローンが潜んでやがる。狙いは白雪の技術データか、それともお前の“おじやのレシピ”か……』


猫が外を睨むと、暗視ゴーグルを装着し、小さなレーザーナイフを構えたレオンの姿があった。


「……猫さん。……お姉ちゃん(白雪)の研究、僕が守る。……今から、あそこのドローンを“重力捕獲”してくるよ」


『……バカ、待てレオン! 一人で行くんじゃねぇ! 相手が“反重力シールド”持ってたらどうするんだ。……チッ、しょうがねぇな。俺が後ろについてってやるよ。……お前が心配なわけじゃねぇからな、勘違いするなよ!』


猫はツンデレな台詞を吐きながら、レオンの背後を音もなく追う。


ゴミ捨て場の影で、レオンが指を鳴らす。


「……重力律、第8節。……『加重制圧プレッシャー・ホールド』!!」


ドローンが地を這うように墜落した瞬間、中から神宮寺シオンの私設兵ロボが飛び出してきた。


『……ほら見ろ、伏兵だ! レオン、右へ飛べ! ……そこは俺が爪で回路を切る!!』


猫はレオンの頭を足場に跳躍し、ロボットの首筋に鋭い一撃。レオンが即座に重力を反転させ、敵を空の彼方へ放り出す。


「……猫さん、すごい。……阿吽の呼吸だね!」


『……ふん。お前がトロいから、俺が合わせるしかねぇんだよ。……ほら、次が来るぞ。テレビの連中に気づかせるなよ!』


その頃、201号室。 カズマがコトコトと煮込んでいた土鍋の蓋を開ける。立ち上がる湯気。そこにあるのは、何の変哲もない、けれど“正解すぎる”卵おじや。


「……あれ? ……何だろう。……急に、……涙が出てきた……」


カメラスタッフがレンズを曇らせながら呟く。


「カズマさん、……これ、ただのおじやですよね? ……なのに、どうしてこんなに“家族の声”が聞こえてくるような匂いがするんですか?」


「特別なことはしてないですよ。……ただ、お母さんが送ってくれた“ま、いいか”と念を込めた塩と、大家さんの出汁用のアゴ、それにセツナちゃんが剥いたネギが入ってるだけです」


カズマはスタッフ全員に小鉢を差し出す。


「お裾分けです。冷めないうちにどうぞ」


スタッフが一口食べた瞬間―― 白雪が改造したカメラが黄金色のオーラに包まれ、中継車を介して全国のお茶の間へ“多幸感の波動”が流れ出す。


「……う、美味い。……実家に帰りたくなってきた。……俺、なんでこんなにガツガツ仕事してたんだろう。……あぁ、……幸せって、……この土鍋の中にあったんだ……」


ディレクターは番組構成も視聴率もすべて“スルー”して、おじやを貪り始める。


その時、窓の外で「ドガーン!」という爆発音(レオンと猫が仕留めた最後の一体)が響くが、カズマは「……あ、テレビの照明が弾けたのかな? 派手な演出ですね」と、最高の耳栓でスルーする。


翌朝。 日本中のテレビ業界に激震が走る。


カズマのおじやが映った瞬間、全チャンネルの視聴率が“201号室”に吸い込まれ、瞬間最高視聴率は 1000%(※未来のテレビも受信したため) を記録。


「……佐藤君! 大変だ! 日本中から『あのおじやを食べさせてくれ』という電話が殺到してるぞ!!」

「困ったなぁ。……お裾分けは、そんなに大量には作れないのに」


カズマは困り顔をしながらも、いつものように自分の分のおにぎりを握っている。


一方、猫とレオンはこっそり窓から戻り、お互いの健闘を讃えるように(あるいは猫が毛づくろいをしてやるように)寄り添って眠っていた。


「……。……。……カズマ。……。……昨日の、……外の騒ぎ。……。……猫と、……レオン。……。……いい、……仕事してた。」


セツナだけがすべてを悟ったようにカズマの服を掴む。


「え? 二人が? ……あはは、きっとテレビに出られて嬉しかったんだね」


カズマは、二人の“影の任務”を優しく(?)スルーする。


『……ニャア。(カズマ。……お前、気づいてねぇだろ。……お前のあの“おじや”のシーンが、……今、銀河系の果てまで電波が届いて、……どっかの星の宇宙人たちが“地球には神の料理がある”って、艦隊を率いてこっちに向かってるぞ。……お前の“お裾分け”、いよいよ星間戦争の引き金だぜ)』


猫――未来の俺は、カズマの膝で、もう二度と“お別れ”の心配をしなくていい幸せを噛み締めていた。

宇宙の脅威も、カズマは今日も“ま、いいか”でスルーしながら、平和な湯気を立てるのだった。



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